2015
06.24
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【BLOG】テイラー・スウィフトがApple Musicを拒否 騒つくストリーミングサービスとアーティストの未来は何処へ!?

BLOG, NEWS

テイラー、アップルを拒否

近日開始されるアップル社の音楽ストリーミングサービス「Apple Music」について、テイラー・スウィフトが全曲の配信を拒否し、日本でも話題となった。

「ストリーミングサービス」とは、ストリーミング技術により膨大な曲数から好きな曲を楽しむことができるサービスである。Apple Musicでは月額9.99ドル(最初の3ヶ月は無料)で6月30日より世界100カ国以上で開始。日本でも間もなく開始されると発表されている。

 

《参照》アップル、音楽ストリーミングサービス「Apple Music」発表—日本でも「まもなく」

 

 

海外ではポピュラーなストリーミングサービス

日本では国内でのサービスがいくつか存在したものの、スポティファイなどの普及もなく、先にリリースされたiTunes Radioも日本は対象外。ネット環境が依然未熟な状態であったために先日までそれほど関心を寄せることはなかったであろう。

スポティファイやパンドラなどはUSAを始めとする諸外国では非常に良く知られており、サービス自体も50近く存在する。現在では音楽業界の売り上げの1/3はストリーミングサービスによるものだという。

 

Apple Musicはダウンロード型の音楽サービスに限界を感じていたアップル社の脱皮策であった。

CDの市場を脅かしたiTunesであったが2014年には約13%も売り上げを落ち込ませていた。ここまでとは想定外だったようで、2014年にストリーミングサービスのBeats Musicとオーディオソフトウェア関連会社のBeats Electronicsを計30億ドルで買収した。こうして誕生したのがApple Musicなのである。

 

2014年のpotify撤退事件

 

今回、世界規模の大型ストリーミングサービスが日本上陸寸前だったためにテイラー・スウィフトのこうした発言が日本中の話題をさらうことになったのだが、実は彼女はこの手の騒ぎに関して今回が初めてではない。

2014年にはスポティファイから派手に撤退し世界中がアーティストの権利について論議を交わす機会を作ったことは記憶に新しい。正直こうなることを予測できた者が大勢いたはずであり、筆者もその一人だった。

 

 

例えば、その時ジョン・メイヤーはUSAのMSNBCのインタビューでこうコメントした。

「クールだよ、本当にクールだ。アーティストたちは彼らのために大声ではっきりとものを言ってくれる、こういう人を必要としている。(中略)今、テイラー・スウィフトがスポティファイを批判したって話題になっている理由は、テイラー・スウィフトだからだ。それは素晴らしいことだ。」

一方で、「テイラーが撤退するのは彼女の売り上げを見れば当然のことだ。アルバムライヴも絶好調で、ストリーミングサービスで視聴などをしなくても十分に成功するビジネスモデルがすでに確立しているから言えることである。彼女が特殊なのだ。」と冷ややかな見方をする者もいた。

ひと昔前にはテイラー・スウィフトの騒動以前にもトム・ヨークがスポティファイを撤退している。アーティストの権利と利益はストリーミングサービスによってどのように侵されていくのだろうか。

 

テイラー・スウィフトの言及するように、確かにリスナーにとって価値のある音楽ならば、アルバムを購入しライナーノーツにロマンを抱き、思い出の中で音楽を育ててくれる。そしてライヴへ足を運び、感動を共有するものである。現に彼女は最新アルバムを僅か1週間で128万枚を売り上げて証明して見せた。

とりあえずとばかりにCDを買い荒らす時代はとうに過ぎていることは確かだ。だとすれば、ストリーミングサービスが悪いのではなく価値を高められていない音楽や音楽自体の価値を下げている業界そのものに問題があるのではなかろうか。

 

先駆けて日本での成功の兆しを見せたLINEミュージック

今日本では至る場所でストリーミングサービスについての論争が行われているが、日本でいち早くリリースされたLINEミュージックは2日で100万ダウンロードされ、実際にトークでシェアされた回数は39万回、プレイリスト累計作成数は60万回と好調である。つまり若者を中心にすんなりと受け入れられていることが証明されたのだ。

また音楽ジャーナリストの鹿野淳氏は「とりあえず楽しんでみようと思う。」とコメントしており、リスナーとアーティストの中立的な立ち位置にあるジャーナリストとして筆者もそれに賛成したい。

これまで幾度となく新参者が古いモノを脅かしてきた。テレビが登場した当初は「ラジオが消える」と囁かれ、CDが誕生すれば「アナログが消える」と言われた。しかし何一つ無くならない。それどころかちょっとしたアナログブームを迎え、USAのミュージシャン達の間ではカセットテープの味わい深い音が再び注目されているのだ。

今回に至っても、例えばApple Musicが登場したからと言って特に何かが消えるわけではないだろう。かつてビートルズが示した「アルバムはアーティストの芸術作品である」という意識はアーティストや音楽を愛する者達から消えるとは考え難い。

 

渦中のテイラー・スウィフトもまた、自らを「YouTube世代」と名乗りSNSや動画サイトで固いファンを獲得している。ただ良い音楽を作るだけでなく、自身のファンを獲得するセンスが音楽マーケットに求められるスキルではないかということに気付かされる。

 

Apple Musicのメリット

ネガティブな部分だけに特化せずApple Musicのメリットにも目を向けたい。アーティストは「Connect」で個人のページを持つことができ、そこで世界中の音楽フリークを相手にプロモーション活動ができる。有能ながら無名なアーティストのチャンスとして捉えることもできるのだ。

テイラーは3ヶ月間対価が支払われないというが、もともと下積みアーティストはCD をタダ同然でばらまき、ギャラなしでステージに立つことが圧倒的に多い。兎にも角にも売り込みの毎日なのだ。そこへきて音楽好きが集まる場所&低予算でプロモーション活動できる場があるのならありがたい話でもある。ただ、やはりここでも気がかりになってくるのはマーケットの中間層である。

 

「時」は満ちたのか

いつの時代にも芸術や技術の価値の侵害から守ることはアーティストにとって重要なことであり、それを世界のトップスターであるテイラー・スウィフトが起こしたことは、業界にとっても大変意味のあるアクションであることは確かだ。しかし需要が肥大化する中、サービスを追い出そうとするのではなく、ストリーミングで済むような音楽にしてしまっている作り手やそれらを売り出している我々のような者に襟を正す機会が与えられたのだとあえて身を引き締めたい。

最終的にはアーティストは企業に頼る生き方を卒業し、アーティスト自身が経営者を兼任するかブライアン・エプスタインのような有能なマネジャーを雇用していく覚悟が必要だろう。

最後に、音楽プロデューサーの蔦屋好位置がストリーミングサービスについてのこんな肯定的な発言で締めたいと思う。

「音楽はもともとだれのものでもありませんからね」

すごいことを言うなあ(笑)。