2015
07.19
nakaidaisuke

中井大介Interview「何故 レーベルを運営するのか」

ARTIST, INTERVIEW, LIVE, 未分類

中井大介氏は関西を拠点としてレーベル“オンザコーナーレコーズ”を運営する音楽家である。彼や彼のレーベルに所属するバンド“パイレーツ・カヌー”に俄かに口を挟むことが決してできないぞ、とこちらが悟ってしまえる程、それだけ彼や彼の選ぶ人々の詞・音の一粒一粒に言葉に足りない想いが伝わってくる。

そんな中井大介氏とコンタクトをとったのはこれが初めてのこと。大変緊張しながら臨んだインタビューであったが、現在全国ツアー中の多忙を極める時期を感じさせないくらい柔らかに、快く、丁寧に“一人のミュージシャンとして”真摯な言葉をくださった。自らの力で愛おしい音楽を広めたいと試みる多くの若い音楽家の方々のエールになるであろう、この貴重なインタビューを是非お楽しみください。

nakaidaisuke

—中井さんが“オンザコーナーレコーズ”を大阪で設立されたキッカケからお伺いしてもよろしいですか?

 

設立したのは活動拠点である京都です。昨年大阪に移転をしました。設立したキッカケは「レーベルをやりたい」とか「こういう音楽を広めたい」ということではなくて…パイレーツ・カヌーというバンドに僕が惚れ込みまして。一番最初に彼らとライヴ会場で出会ったときに、僕も音楽をやっていたんですけど、サウンドマンとしてそこに居合わせまして…「凄い!」と。僕がそのバンドにつきまとう感じでついて言って、ライヴのお手伝いをしたりしていたんですね。

そうこうしているうちに仲良くなって「こんな素晴らしい音楽があるんだったら発信したい!」ということになるんですけど、いろいろ活動するにあたって…後ろ向きな話になるかもしれないんですけど…どんどんバンドの名前が少しずつ知られてくることによって、例えば「イベントを組みたい」ってなったときに、なかなかバンドのメンバーで話がまとまらなかったり、話が進まなかったりする状況が増えだしてきたんですね。その時に、パイレーツ・カヌーの『カヌー』じゃないですけど「みんなが乗れる乗り物みたいなのを作ろう!」ということでできました。

 

 

部屋みたいに一つの枠を作って、その中に「パイレーツ・カヌーがいるよ」…その時に、例えばツアーの機材の話とかお金の話とか、音楽以外の作業とか打ち合わせがどんどん増えてきますよね?そのときに動きがとりやすいんじゃないかっていう発想で“レーベル”というカタチをみんなでやりだした感じなんです。

だから、僕が作ったというわけではなくて“パイレーツ・カヌーのためのチーム”みたいなカタチで最初はありまして、僕だけが今もそうですけど、バンドのメンバーではなかったので、一緒に演奏なんかもするんですけど、基本的にはバンドのメンバーとして登録されていませんので、たまたま収まったのが“代表”ということだったんですよ。

僕が何もかも仕切って…とかそういうことではなくて…みんなそれぞれ役割を持って…まあ、そういう枠があるので、僕も音楽をもう一度始めたりしたときに「ああ、もうこれはレーベルみたいなカタチだなあ…」という団体でいるカタチですね。

 

—すごく『意外』な感じでした…。

 

そうですね。このレーベルが出来上がったきっかけはいわゆるミュージックビジネスのための組織ではないんです。

 

—オンザコーナーレコーズさん所属のアーティストっていうとお二方しかいらっしゃらなかったので「どうしてなのかなあっ」ていう疑問はありました。ではこの先「誰かを入れる」とか「レーベル事業を育てていく」とかそういったプランは特にあるわけではなくて…?

 

そうですね。何かチャンスがあったりすれば「やってみたいな」とは思うんですけど、レーベル事業を専門にする人間がおりませんので…変な話で言うと…手いっぱいなんですよね。作曲とかそっちの活動ですよね。それからツアー。ちょっと手抜きなところもあるんですけど…プロモーション。それ以外にレーベルのために発掘したり誰かを育てたりする余裕自体は今のところなくて…。でも「これしかしないんだ!」といった後ろ向きなことではなくて「自分達が今、こういう場でこの曲をやりたい」ってそういうのを実現できる組織として運営していこう、というっていうのはあります。

 

 

例えば大きなスポンサーがついたらそのバイアスがかかったり、例えば会場での衣装やステージ進行の方針を決められたりという事がおそらく増えてくると思うんですよね…。そうじゃなくて、今こういう時代に、今僕らが生きてきてこういう音楽活動をしていて「こんな曲をこんなふうにやりたい」っていう心があって。それを誰にも邪魔されずに…っていうのは無理だと思うんですけど、一番自分たちが納得できるカタチでお客様の前や大好きなお店で演奏できる。且つお金も大事なのできちんと運営していけるように、そんなふうになっていけばいいなあって思って。今のところは自分たちの“乗り物”になっていますね。

 

—当初の目的は叶えられているというか。

 

そうですね。そう考えていくと目的は叶えられていますね。

 

—今年で三年目ですね。中井さんにとって、三年目を迎えられてレーベルを運営する仕事の一番のキモはなんでしょうか。

 

そうですね…キモ…最近「そうじゃないかな…」って気づいたのは、さっき申し上げた“目的”ですよね。「何のためにレーベルがあるのか」、「誰のために何をするのか」っていうことを当たり前ですけど明確にすることだと思います。

どうしてもツアーに出るとかCDを出すとかいろんなことをすると、スケジュールとお金とっていうのがキモになってくるんですよね。で、実際そのバンドの中に入って一緒に音も制作することっていうのはほぼ少ないので、自分のことは自分でやって録音とか作曲とかやっちゃいますんで、いわゆる母体となっているパイレーツ・カヌーがこうやって動いて…ってしている時に、どうしても効率で考えてしまったりこういうルートの方がお金的に良かったり…と、よかれと思って僕がいろんなことを考えたりするんですけど、それを彼らがやりたいことじゃなかったりするんですよね。話をしていけば。それを見誤ったり見失ったりすると知らないうちに当初の目的から遠ざかっていくこともあると思うんで…あの…実際ちょっと僕が先走ったりいろんなことを…「これがいいんじゃないか」って考えたり、みんなに「こっちに行こう」って言ったりするんですけど…ズレができた時期もありましたね…。

よく話し合うこととかみんなと共通言語を持って「こういう意味でこういう話をしているんだな」って意思の疎通をしていくのが一番大事だな…って最近感じていますね。

 

—…本当にそうですね…!今自主レーベルを作ろうとしているアーティストさんが多くて。一昔前まではライヴハウスで見つけてもらって、メジャーでデビューして…っていう流れから「自分達でレーベルを作っても世の中に知ってもらうことができるんだ」ということが証明されだしてから「俺達もそうやっていこう!」という若いアーティストが増えてきていると思うんです。そういった方々に何かアドバイスをするとしたら、どんな言葉をいただけますか?

 

…そうですねえ…アドバイスなんかできるかなあ…(笑)。思いますけど、昔とは違いますからね。ライヴハウスも私が居た時代ですけど…ライヴハウスはもうライヴハウス自身が生きていくために運営しなければ生きていけない時代ですよね。苦しいところも多いですし。で、音楽レーベルも…新人を取っかえひっかえしている印象がありますし…5年・10年と息長くそのレーベルでやっていけるミュージシャンがどれだけいるか…っていったらもう数えるほどしかいませんし…特に若い人なんかは、僕なんかより持っているツールが多いと思うんですよね。

 

 

YouTubeだったりとか、SoundCloudとか。僕らカセットに録音して配っていましたからね。だけども、そうじゃなくっていろんなことをできるっていうのはあるんで、もし…自主レーベルですよね?そういうのをやっていくにはとてもやりやすい環境にあると思うんですよね。だからドンドンやったら面白いんじゃないかと思いますけど。僕達はたまたま“動機”があったので…「メジャー以外で売れる方法はないか」とかそういうことではなくて、素晴らしい音楽と出会って自分たちもやっていこう、これをちょっと広めたいっていうのもあるんですけど…その前に「どうやったら辞めずに続けていけるか」ということが現在の目標になっていますね。

5人も6人もメンバーがおりましてね。みんな子供が生まれたり結婚したりいろんなことがあるんですけど、どうやったらこう…辞めずに続けていけるだろうかっていうのを考えた結果が今のカタチなんですよね。「続けていくために自分達にできることは何か」ってなるんですよね。だから、もしアドバイスができるとすれば、そういう“明確で強い動機”じゃないんでしょうか。

レーベル作りたいっていうのが動機だったら、作っちゃった時点で終わりだと思うんですよね。例えば、売れたいために必要だったらレーベルをつくればいいし、広めたい・こんなことしたい・好きなバンドが3組くらいあって仲間と活動したい…「それだったら自分達でレーベル作って組織を作ろうか」とかいわゆるはっきりとした目的とか動機があって、それを達成するためにレーベルが役に立つんだったらどんどん作ったらいいと思います。僕達も最初「これをつくりたい!」ていうのが目的ではなかったので…「これをつくるとうまいことまわるかもしれない」ってやりたいことがはっきりしていたんで…そう考えたらレーベルなんていらなかったのかも知れないですね。僕達も思考錯誤して…どんどん生活もかわってきているんで、いろいろ考えていかなきゃいけないなあって思っているんですよね。

 

【中井大介プロフィール】

シンガーソングライター。 京都の音楽レーベル「On The Corner Records(オンザコーナーレコーズ)」代表。 (2014年6月より大阪へ移転予定)

「A.Y.B.Force」でのブレイクビーツミュージック製作やゲーム音楽(Nintendo WiiWare)の制作を経て、 現在は同レーベル所属のバンド「Pirates Canoe(パイレーツ・カヌー)」とともに演奏・制作などの音楽活動を展開。

SSW(シンガーソングライター)としての中井大介は 京都を中心として、主に弾き語りのライブ活動を行っている。洗練された楽曲に乗せて、心に届く歌や息づかいは、どこか孤独で、近くて、あたたかい。  パイレーツ・カヌーのメンバーの 岩城一彦(ドブロギター)、谷口潤(ベース)、吉岡孝(ドラム) と「中井大介 & The Pirates」の名義でも活動しており、バンド編成の演奏を行っている。そのほか、河野沙羅(パイレーツ・カヌー)とのアコースティックポップデュオ「BUG & RHINO(バグアンドライノ)」として活動。  また、クレズマやロマや民謡などを演奏するデュオ「ニコらん」や、サウンドエンジニアとしても多方面で活動中。

 

「On The Corner Records(オンザコーナーレコーズ)」ホームページ

http://onthecornerrecords.com/

 

中井大介ホームページ

http://onthecornerrecords.com/dsknakai/top.html#top

 

中井大介ブログ「うたとギター」 (休止中)

http://songsandguitar.blog133.fc2.com/

 

パイレーツ・カヌーHP

http://www.piratescanoe.com/