2015
08.15
リサイズ2015-07-20 13.55.36

【INTERVIEW】中井大介「演奏家としてのネット社会」

ARTIST, INTERVIEW

今日のネット社会で伸び伸びと羽を伸ばす音楽家もいればその水に浸かろうともしない音楽家も確かに存在する。ここでは、生のライヴを重んじるアーティストがいかにしてネット社会と上手に付き合い、生き残っていこうか…というテーマがオンザコーナーレコーズ主宰者である中井大介氏の目線で語られている。SNSや動画サイトなどに魅力を感じながらも、音楽を“生のまま食してこそ”だとする音楽家の未来は何処へ向かうのだろうか…。そのリアルなテーマに向き合った。

 

2015-07-20 profile

ちょっとこれからインターネットがどうなっていくのか…私たちはそういった意味ではちょっとプロモーション的なことが苦手な領域ではあるんですね。そういうところで動画をどんどん作って広めていくってことをしていないんですよ。

気質的にはいわゆるアーティストというよりは演奏家気質のところがありまして、音源を作ってばら撒いていくっていうよりは演奏をしに出かけていくってことの方が多いんですね。どんどんスタジオワークっていうよりは、エリザベスが帰ってきたらツアーを組んで演奏に行く…。ライヴの方が本質だと思っていますんで、そういう…いわゆるライヴミュージシャンですよね。演奏してギャラをもらったり人に見てもらったり…っていうミュージシャンがどうやって生き残っていこうかなってちょっと考えています。

そのために必要なプロモーションってインターネットとかそういうところも大事だと思うんですけど…若い人みたいにうまく使えていないような気がしますね…。そこが増えれば、もっと聞きたいなあって思ってくれる人が増えるかもしれませんし…まあ、「動画とネットで観られるからいいや」…ってなるかもしれませんし、それが汲み切れていないので…ちょっと若い人から教えてもらったり、これからみんなとやろうとしていることを勉強しなくちゃなあ、と思っています。

 

—例えばネット動画で生ライヴ発信…なんていうことは計画されているんですか?

 

予定はしていたんですけど、メンバー全員というかミュージシャンと意見一致はしているんですが、そういうストリーミング系ライヴとか、音質ですよね…楽器のバランスとか音色ですよね…でね、まだストリーミング系の映像や音質、楽しさに満足したことがないんですよね。やってる本人が。だから…それを見て本当に「演奏される音楽っていいなあ」って思ってもらえるツールにひょっとしたらならないんじゃないか…?っていう危惧があって…「あ、こんなもんか。CDのほうが音がいいや!」または「このバンドいイマイチだな。ライヴもいいや」って。

 

2015-07-20 pclive2

ストリーミング系の中継がライヴの良さに追いついていない気がするんですよ…技術的にはありますよ。プチプチ切れたりしないで配信することは可能だと思うんですけど、ソフト面ですよね…。内容をきちんと伝えられるような音質であったり…っていうのが確保されていない気がするんですよね。自分達で録って確認するんですけど…その辺はやっぱり小さい組織ですので、大きな会社みたいにきちんとした機材とかレコーディングスタッフとか、最終的にマスタリングするスタジオとかが確保できていないんで、簡単な機材でたぶん中継しちゃうと思うんですね…。そうなると「こんなもんか」になってちょっと怖いんで…まだ手を出せてないですね。やりたい気持ちはあるんですけどね。

 

—なるほど…貴重なお話が聞けました。…確かに!

 

できたらライヴ会場じゃないですけど…個人的な話なんでメンバーに言ってないんですけど…各自でネットを使ってiPadとかパソコンで観てもらうよりは、映画みたいにライヴ会場を中継して…例えば…別の町とか、別の場所…同じ町の別の場所…でもちょっと大きめのスクリーンで大きめの音量で観られるんだったら…おもしろいんじゃないかというアイディアとしてはあるんですよ。

 

2015-07-20 profile2

 

本当のライヴって目の前に楽器とスピーカーと演者が立っていますよね。そして客席のお客さんの隣には別のお客さんがいるんですよね。要はDVDで映画観るのと映画館で映画観るのとの違いは、スクリーンもありますけど「他に観ている人がそばにいる」ということなんじゃないかと思っています。客席感っていうか。

だからストリームっていっても、客席感だけでも確保できたらひょっとしたら面白いことができるかもしれないな…あんまりみんなやっていないから、内緒にしておきたいな…とも思ったんですけど…

 

—…カット…しますか?

 

でも、手段がないので、誰かが実験してくれたら良し悪しがわかるかなあ(笑)。

 

—(笑)そういった方向性もありますね。

 

僕が知らないだけでもうやっている人たちがいるかもしれませんね(笑)。そういうことを妄想はしてます(笑)。大瀧詠一さんがライヴをするのに、ヘッドホンコンサートをしたことがあったのかな?その話を聞いたときに…

 

—ヘッドホンコンサート!

 

はい。要はね、普通のライヴっていうのはライヴ会場にミュージシャンがいて、お客さんがフロアにいて“聞く”じゃないですか。その時の…目的がいくつかあったと思うんですね。そこで何をしたのかというと、自分達の目の前でお客さんがみんなヘッドホンをしているんですよ。で、お客さんがそれぞれラジオもってるんです。目の前で演奏した音をマイクで集音してFMのトランスミッターで飛ばすんですよ。

生音は客席で聞こえないんですけど、持ってきたラジオで「この周波数に合わせてください」って。だからお客さんみんな集まって来てるんですけど、部屋で一人でFMラジオをきいているような感覚にもなるし。あと一回、FM変調といって…FMラジオの音ですよね。CDの音とラジオの音とFMの音色ってちょっと違う気がしませんか?

 

—そうですね。

 

その頃FMラジオの全盛期だったので…それをちょっと思い出して「今の2010年代で大瀧さんみたいな発想をしたらどんな風なことになるかなあ…」って思っていたんですよ。そしたら今田中さんがおっしゃったストリーム配信のこと言うてはって「これだ!」と思って。生のライヴをストリーム配信して別の会場でもみんなで観る…みたいな。映画館みたいなところですよね。

ああいう風にライヴを観るのはちょっと面白いんじゃないかなって。そういう風な感じでやってみたいなあ…って思いますけど、今の所自分たちの力でするには技術的に機材的に追いついていないんで、すぐにする予定はないですね。

配信的には。でも、もうちょっと配信とか、YouTubeでのミュージックビデオとか、やりたいのはやりたいですね。「録ってあげるよ」っていう人がいたら大歓迎です(笑)!今まで最新のフルアルバム以外の録音は大抵を僕ともう一人の方でやっているんで。それがレーベルのもう一つの面白さだとも思うんですよね。ジャケットのデザインとかグッズのデザインとかもキャプテンの沙羅やエリザベスに全部やってもらって。HPも。

 

—はあー!とってもお洒落ですよね!?

 

はい。ありがとうございます。みんな仲間内で!レコーディングとか機材関係は私がやって、ドブロっていう、ギターを横にした楽器担当の岩城は楽器職人なので、全員の楽器のメンテナンスや修理などをしてくれます。たいていのことは自分たちでやっていますね。

 

 

中井さんは本当に優しい人だ。彼から発する一言一言にそう感じずにはいられなかった。

全てが自動的にパッケージ化されていく流れの目立つ音楽マーケットにおいて、世の中に広くアピールする前に“自分が愛したままの音”であることにこだわることは果たして当たり前にされていることだろうか。彼の愛したバンドを世の中に広く売り出すよりも“愛する音を奏でられる環境作り”にこだわることは当たり前に実現させられていることなのだろうか。中井氏にとって、“音楽を続けていくこと”とは、“愛したままの音を大切なリスナーに届け続けられること”であり、そういった視点において最も成功しているレーベル主宰者なのだと言えよう。“名曲作り”に力みすぎて「気がついたらもう夏も終盤だった…。」とハッとした人にはぜひ中井氏のインタビューをもう一度味わってほしいと思う。

nakaidaisuke

【中井大介プロフィール 】

シンガーソングライター。 京都の音楽レーベル「On The Corner Records(オンザコーナーレコーズ)」代表。 (2014年6月より大阪へ移転予定) 「A.Y.B.Force」でのブレイクビーツミュージック製作やゲーム音楽(Nintendo WiiWare)の制作を経て、 現在は同レーベル所属のバンド「Pirates Canoe(パイレーツ・カヌー)」とともに演奏・制作などの音楽活動を展開。 SSW(シンガーソングライター)としての中井大介は 京都を中心として、主に弾き語りのライブ活動を行っている。洗練された楽曲に乗せて、心に届く歌や息づかいは、どこか孤独で、近くて、あたたかい。

パイレーツ・カヌーのメンバーの 岩城一彦(ドブロギター)、谷口潤(ベース)、吉岡孝(ドラム) と「中井大介 & The Pirates」の名義でも活動しており、バンド編成の演奏を行っている。そのほか、河野沙羅(パイレーツ・カヌー)とのアコースティックポップデュオ「BUG & RHINO(バグアンドライノ)」として活動。  また、クレズマやロマや民謡などを演奏するデュオ「ニコらん」や、サウンドエンジニアとしても多方面で活動中。

 

「On The Corner Records(オンザコーナーレコーズ)」ホームページ

http://onthecornerrecords.com/

 

中井大介ホームページ

http://onthecornerrecords.com/dsknakai/top.html#top

 

中井大介ブログ「うたとギター」 (休止中)

http://songsandguitar.blog133.fc2.com/

 

パイレーツ・カヌーHP

http://www.piratescanoe.com/