2015
10.04
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新しいライヴ・新しい門出“ミムラス内藤彰子の披露宴”

ARTIST, LIVE

ミムラス内藤彰子のライヴ後、すっかり秋めいた夜道でもう一度ミムラスの作品を聴くと、よくわかる気がした。ミムラスがどうして耳元で歌うような生声感にこだわったのか、どうして一曲目に「54321」を持ってきて、ラストが「 It’s not anything special 」なのか。

まずハッキリしていることは“ミムラス内藤彰子”という女性は、いじらしいほど相手を大切にする女性だということだ。それは例えば歌詞に耳を向けてもわかるように、ミムラスは愛を伝えてもそれをもぎ取ろうとはしない。彼女は今回リリースしたアルバム『 Fragment & Waves 』を「自分のワガママを突き通したアルバム」だというが、彼女は“ミムラス内藤彰子の作品”だと信じて聴くリスナーに嘘がつけなかった気持ちを貫いただけのことだ。それは、彼女が9月24日に行われたリリースパーティでもよくわかった。

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シルバーウィークのフェスやライヴラッシュの余韻に浸るような下北沢のキャパ80人のカジュアルなライヴカフェ・下北沢440でミムラス内藤彰子のリリースパーティは行われた。ユニークな発想が得意なミムラスは、それを結婚式の披露宴に見立てて、MCを披露宴の司会者とし、ミムラスらしい引き出物のプレゼントも観客に手渡された。

 

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物販ではフードコーディネーターやイラストレーターとしての才能が活かされたセンシティブなグッズが並び、賑わいをみせている。和やかな空気感で始まった“披露宴”はミムラスを慕うSSWの先輩・エガワヒロシによるビートルズを彷彿とさせるようなイントロから始まり、ハートにストレートな2曲を堂々と披露した。音楽仲間であるDieによるおおらかな司会(MC)にエガワヒロシがライヴ後の熱も冷ます余裕なく飛び入りでMC参戦。会場を沸かせた。

 

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続いて登場するのはいきなりベテランSSWの谷口崇。ジャニスさながらの湧き出るグルーヴ感で一気にライヴ空間を格上げした谷口崇は、ミムラスにとっても憧れの存在でありながら彼女に目線を合わせたやわらかな笑顔で若き才能の門出を祝福した。

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山根万理奈が艶やかで力強いライヴパフォーマンスで新たな“レーベルメイト”を歓迎した後、大阪から駆けつけた森山公一(オセロケッツ/The Ma’am)がアーシー&メロウな日本語ロック&ブルースで会場を適温に仕上げる。…ここまででも十分伝わるはずだ。

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この夜は下北沢で当たり前にやり過ごされているライヴでは決してなかった。それはピンでデビューしたミムラス本人が自らの熱を持って直接掛け合った“本気”のラインナップとそれに応えた尊い先輩音楽家達のお祭りだった。これを単に「手作り感」だとか「人柄」といった言葉でまとめるには申し訳ないとは思わないか。ミムラス内藤彰子に備わる、足を運ぶ人々と出演してもらうバンドに対して責任を背負う“完璧なアーティストを目指す姿”の一面だと書きたい。

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最後には勿論ミムラス内藤彰子が、なんとレコーディング・フルメンバー“ミムラス オールスターズ”を揃えて登場した。ドラムスは丸尾和正と田中ヨシトモが参加しており、その細部に渡るまで完全に再現されたサウンド体制であった。

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「54321」でポップにスタートしたミムラス オールスターズのショー。「今日はみんなニコニコになって帰ってください!」とフランクに呼びかけての「レモン色の光の粒」。ミムラスの日常的なリリックを手渡しして廻るように歌うミムラスの楽曲にメッセージがあるとするならば、それは“人々や環境が光につつまれた愛であること”だろう。ピースフルなヴォーカルに花を添えるのはロック&ポップな“絶妙にちょうどいい”重量感のバンドサウンド。ささやかなキメで魅せたあとは「愛したい」「何の役にも立たない気持ち」で一発録りした緊張感をギャラリーと体感した。

 

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ミムラスの音楽的感性の最大の理解者の一人でもあるドラムス丸尾和正との「君と話す夜」「ピアノ」の音を介した見事なコミュニケーションを繰り広げながら「二人でやることに意味があったから…」とさりげなく語るミムラスの強い眼差しは深く印象的であった。それぞれの楽曲の思い入れを丁寧に語るショーはこびは特にギャラリーの胸を打ち続け、アンコール「それはまるで恋のよう」では 自然な手拍子とコール&レスポンスが空間を包んだ。

 

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いつまでも鳴り響く“1-2-3 ”のコールやリードしながら高鳴る心の友・丸尾和正のドラムワーク、思いのままに弾き舞う加藤ケンタのギターソロ…ミムラスが“SSW”と正式にマリアージュした瞬間だったのかもしれない。

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村上春樹氏が云う“世間を構成する大多数の人によって、それがほとんど意味や有効性をもたない”ものへの個人的な愛着を尊重するならば、音楽によって縁を手繰って下北沢の小さな空間に集った人々のための極上の時間が確実にそこにはあった。そしてその首謀者はミムラス内藤彰子というアーティストとしてのプライド、それらを静かに守るバーガーインレコード・オーナーである畑氏やその同志達だ。我々は少なからず伝える者として“世間を構成する大多数の人によって、それがほとんど意味や有効性をもたないもの”を丁寧に探り、嗅ぎ分け味わいを損なうことなく文字に起こし、様々な価値観を持つ人々に読まれ噛み砕かれることを目指している。…だからこそあえて大きめの声で伝えたい。リリパ大成功、本当におめでとう!

 

 

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ミムラス内藤彰子 Official Web

http://naitoakiko.com/

 

Photo / Mami Otsuki