2015
12.05
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【BEST LIVE 2015】ASA-CHANG&巡礼ワンマンライヴ@代官山

ARTIST, BLOG

今年も各メディアでベストを発表する月に突入したようだ。様々な見解で選ばれているが ”music”と“life”がリンクするVEEMOBのベストライヴを検証した結果、僕は約6年ぶりの開催となったASA-CHANG&巡礼のワンマンをダントツ一位で選ばせていただいた。

アサちゃん

今回代官山“晴れたら空に豆まいて”のワンマンは今年9月に全国ロードショーされた、映画『合葬』のサントラ盤リリースを記念してのものだ。

本映画に対する映画ファンのレビューは様々ではあったが、小林監督の意図であろう“空気の流れ”や登場人物の“蒼さ”をメロディで誤魔化す以外の手法で表現するチャレンジとしては成功していたように思う。映画では静寂の中、何かが通り過ぎるような鈴の音が奇妙に鳴り響いていた。

 

ライヴでは、客入れの段階から演劇的な切り口でのエレクトロニックな空気作りが施されていた。既にそこからASA-CHANG&巡礼の“総合芸術”が始まっている。定刻を迎えるなりASA-CHANG&巡礼の三人は、静かに席に着き冒頭のナレーションを再現することからライヴをスタートさせた。

 

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“映画を観た”というギャラリーはちょうど半数ほどであったようだが、ASA-CHANG&巡礼の“静かなヴァイオレンス”とも形容できるパフォーマンスは終始ギャラリーを魅了していた。後関好宏氏(サックス・フルート)と須原杏氏(ヴァイオリン)が加わっての初ワンマンでもあったが、名曲「花」まで見事な世界観であった。お馴染みとも言える舞踏とのコラボレートはSia的MV手法の先駆けとも言いたい。

 

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もう一つの大きな見どころとしては、あの“通り過ぎる鈴の音の存在”が赤ちゃん用のプラスティック製のおもちゃであり、それを変則的に重ねる音圧は想像を超えたさじ加減によるアナログなテクニックであった事だ。

ASA-CHANGは言う。嘗ては楽曲を再現することに苦労していたが今はライヴ先行である、と。音響派とも呼ばれる音楽家にとってどれだけ革命的なスタンスであろうか。

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また、これらのミニマムにアプローチされたラグ×ラグなASA-CHANG&巡礼らしいとも言えるサウンドは、ただ必要以上の感情誘発を抑えるだけではない。

戦争の単純な“良し悪し”ではなく、その時代にそこで生まれ 避けて通ることができない“運命”と言う名の“人生の課題”とどう向き合うのかという“問いかけ”にも捉えられる。

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時代に翻弄される者が虚しければ、時代を翻弄させようとする者もまた虚しい。

それは世(例えば仏のテロ事件等)のすべてのエゴイズムに向けた音楽家としての、最もスマートな芸術表現であったように思う。

何より“戦争反対”をストレートに訴えていた60年代から、人類同士はさらに深い慈しみと信頼を音で交わすまでになったことをこのライヴで知ることになる。ライヴの最後には和やかなムードの中、ASA-CHANGの翻弄者に捧げる哀歌であり祈りにも似たこの“お経ソング”を合唱。もう言葉がない。

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世界はちょっとしたボタンの掛け違いで大惨事を招きかねない緊張下にある。 またそう言った環境において、支配欲のある者と無い者との摩擦が生じて止むことはない。そんな中で“普遍性を放つ音、あるいは言葉や何か”として表すことがASA-CHANG&巡礼の奏でる術であり、芸術家的宿命でもあると言えるのかもしれない。

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特に日常のあらゆる物事や価値観に振り回された2015年だからこそ、単なる実験音楽や舞踏とコラボレートした独自の“総合芸術”で終われないASA-CHANG&巡礼のライヴに、あるだけの敬意と割れんばかりの拍手を贈りたい。

映画を見終えた時にふと救われた“地獄に見えても話せばわかりあえる瞬間は存在する”ささやかな希望を小脇にそっと添えて。

 

live photo / 石崎 祥子

アサちゃん

【関連リンク】

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