2016
01.06
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【INTERVIEW】Sandfish Records 宮井章裕「その音楽を自分が売るのが正しいのかどうか」

INTERVIEW

湘南に“Sandfish Records”という洋楽専門レーベルがある。展開される音を例えるならば、日課のコーヒーとよく合う音楽。あるいはさざ波と太陽を連れてくる音楽とも言えるだろう。それらの上質な名盤達は、とびきりの宝物を見つけた気分にさせてくれる。

オーナーの宮井氏は、彼の綴る素朴なブログの読者でもありご近所さんでもある僕にとって理想の存在でもある。「サンドフィッシュレコードだから信頼して聴く」とは良く聞くが、これこそレーベルの存在意義ではなかろうか!2016年の初めに相応しい穏やかなインタビユーをお届けしたい。

 

 

(Photo / のうだ ちなみ)

 

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▷Sandfish Recordsを始められたのはいつですか?

 

宮井 8年前ですね。8年前の10月に最初のアルバムを出してるんで、準備はその前からになりますけど。

 

▷準備はどれくらい前から?

 

宮井 うーん、でもどれくらいだろ。4か月くらいですかね。特に何かを揃える必要もなかったし、もともと音楽の仕事をしていて買っても聴いていたんで。

 

▷鎌倉のインディーズレーベルで確か働かれていたとか。

 

宮井 そうです、そうです!話が早くて助かります(笑)。バッファローレコードっていうインディーのレーベルです。そこでちょっと働いてから自分で始めたんですよね。ちょうど、向こうも向こうでCD以外のことに手を出し始めていたんで、それじゃあ自分でやろうかっていうことで始めました。

 

▷最初に出されたアルバムっていうのは?

 

宮井 スコット・フィッシャー&1a.m.アプローチ『ステップ・イントゥ・ザ・フューチャー』っていうアルバムなんですけど、ピアノ系のロックで歌モノ。SSW。ちょっとビートが効いているけれども、新しいっていうよりはオールドな感じ…ですね。ある程度やりたいことは見えていたんで、音探しについては割とすんなりいった感じです。

 

▷なるほど。どの辺あたりから見つけてこられるんですか?

 

宮井 インターネットで探すだけなんですけどね。洋楽専門レーベルだからって向こうに行って探すようなお金もないし、インターネットを使って凄い地道に探すんです(笑)。向こうのインディーの人…まあ、日本のアーチストもいますけど、流通にのせないで音楽活動をしている人ってすごくいっぱいいて、特に向こう(海外)は地元のサーキットっていうのが割としっかりしているんですよね。パートタイム・ミュージシャンみたいな人達がすごくいっぱいいるんですよ。で、アルバムを作ると幾つか近隣の町をツアーする。彼らにとってみればその中でCDが売れて食べていければいいんで、自分の好きな音楽を自由にやっていく。そういう人達がすごくいっぱいいる。

stoptimecover_by REBECCA MEEK

 

▷それはわりと世界中で?

 

宮井 アメリカが主ですよね。ヨーロッパだと国が小さかったりとか…まあ陸続きなんで、同じように回っている人はいますけどね。でもアメリカが一番そう言ったサーキットを持っている地域が多いのかなっていう気はしますけどね。

 

▷メールでダイレクトにコンタクトをされるんですか?

 

宮井 そうですね。で、マネージャーさんや弁護士さんを通しているような人もいれば、本人とだけで話が決まることもありますし。その都度ですけど。英語が苦手ですからね。最初はそれが…。

 

▷ではどうやってメールを?

 

宮井 英語でやるんですけど(笑)。まあ、最初はわかんなかったですよね。英語の契約書とか…最初は困った。でも英語でやるっていうことはもう決まってるんで、逃げようがないじゃないですか。だからやる しかないんです。ちょっと元になるようなものをね。鎌倉のインディーズレーベルも洋楽だったんで外国の人がやっていたんですよ。その時に原本みたいなのは見たことがあったから、それを元に変えたりしながら。で、こっちからのメールがつたないと、向こうも簡単なメールで返してくれる。意外とうまくいくもんなんですよ(笑)。

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▷そうなんですか!それはカッコイイですね。そういったことをやる前から諦めてしまっている人も多いでしょうね。

 

宮井 うーん、そうですね。でもまあ、始めたのがいくつの時だろ…37とかだったから。それくらいになると、すぐにできることってある程度限られてくる。自分は音楽の世界にいたから、自分で新しくやるって言ったらレーベル始めるくらいしかできなかったし、自然と…まあいい機会だし始めようかってなった。

 

▷ロゴ、ご友人が作られたって。

 

宮井 そうそう、友達です。デザインの仕事をしたいんだけど結局なかなかデザインで食べていける人っていうのも少ないだろうし。せっかく学校でたんだけど諦めて違う仕事をしている、とか。それらしい事務所に入ったんだけど特にフリーで好きなことをできるわけではなくて…っていう人達っていっぱいいるじゃないですか。そういった友達がいたので、声をかけたら協力してくれた感じですよね。

 

▷藤沢のタワーレコードで大きなロゴが目立っていましたね。すごく大きく展開されていて。

 

宮井 うん、珍しいですよね。

 

▷ロゴも素敵!湘南に似合う、海の青と太陽のオレンジ。

 

宮井 ありがとうございます!あれは本当に自分でも気に入っています。

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▷確か、大物が手にとったんですよね。

 

宮井 ジャクソン・ブラウン。

 

▷そうだ!ジャクソン・ブラウン。

 

宮井 広島に「夢番地」というプロモーターをやっている知り合いがいて、その人がジャクソン・ブラウンに会いに行った時に、うちのロゴTシャツを持って行ってくれたんです。わざわざ Tシャツを買ってくれて。ジャクソン・ブラウンとか大好きだったからすごく嬉しくて!

 

▷それは嬉しいですよね!着て欲しいですね!

 

宮井 ね!寝巻きでもいいからね。ライヴとかで着てくれたら一番嬉しいけど。

 

▷確かSandfish Recordsはアメリカだけでなくて様々な国から。

 

宮井 そうですね。イギリス、カナダ…南アフリカの人もいるけど、まあそれもアメリカナイズされた音楽。

 

▷南アフリカっていう国が…

 

宮井 そう、国自体がね。

 

▷でも、国境がまるでないんですね。

 

宮井 そうですね。インターネットで良いものがあればっていう感じですね。

 

▷コンセプトはあるんですか?

 

宮井 歌モノ。メロディが綺麗なもの。古くならないものがイイんですよ。で、まずはその音楽がイイものであるかどうか。次にその音楽を自分が売るのが正しいのかどうかっていうことを考えますね。つまり長く音楽が好きで関わってきているんで、ロック・ソウル・ブルース・ジャズ・カントリー…いろんな音楽が好きなわけですよ。その中で自分が一番自信を持ってお客様に薦めることができるのって、限られてくる。ソウルミュージックとかだと、大好きだけど僕よりもずっと詳しい人とかもっと深い愛情を持ってソウルミュージックと接している人は友達にもいるし。そういった人達に対して自分が自信を持って「これサイコーだよ!」って言うには自分にはいろんな意味で足りない部分があると思うんですよね。でも僕だとSSWとかその辺の音楽に対して強い興味や愛情を持って音楽を聴いてきていて…まあ、それが性格的なものなんでしょうね、しっくりくる。だから、そういった音楽を紹介したり薦めたりするのは自分には向いていると思うんです。

David_ジャケ写

宮井 好きな音楽だからなんでもいいっていうわけじゃない。結果的にそういう風にやっていかないとその音楽のためにもならないし、自分じゃなくて他の人が紹介した方がずっと他の人に伝わっただろうしってことになる。自分が好きで尚且つ得意なもの。人に伝えやすいもの、紹介しやすいものを探していく。そうなると自然に一つの傾向が見えてきて、それが一つのレーベルカラーにつながっていっているんじゃないかなあ、と思います。

 

▷宮井さんご自身が音楽と密接に付き合いながら生活を送られていると感じるのですけれども。

 

宮井 はい。

 

▷宮井さんご自身は音楽とどんなスタンスでお付き合いされているんですか?

 

宮井 基本的には変わっていないと思います。最初に…それこそビートルズとか聴いて感動しちゃったりした頃と多分そんなに変わってない。“リスナー”ですよね。自分で楽器をやって「ビートルズみたいになるんだ!」っていうんじゃなくて、すごく個人的に音楽を楽しんでいるっている部分は変わっていないと思いますね。ただ…仕事にしたんで、趣味じゃない感じにはなったかな。ミュージシャンもそうだと思うんです。いろんな音楽が好きで、でも自分のスタイルがあってそのスタイルで音楽をやる形になると思うんですよね。それと同じでウチにはウチ(Sandfish Records)のスタイルがあって、それに沿った形で音楽に接していくことになるから、ただ好きなものだけを聴いているっていう毎日ではなくなった。

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宮井 やっぱり仕事だから“自分のやるべきことが音楽の中にある”と信じてやっている。それはやっぱり付き合い方が変わったといえば変わったんですけど、きっと根っこの部分では変わっていないのかな。今でも音楽好きだし、音楽にときめくからこの仕事をしているんだと思います。

 

▷非常に印象的だったのが、ジョージ(ハリスン)の命日に彼の音楽を聴きながら、ジョージから得たものをしみじみと確認されていた時のこと。

 

宮井 そうですね。音楽の聴き方も色々あると思うんです。例えばなんとなく音楽をふんわり聴く人もいれば一人のアーチストに深く思い入れて聴く人もいて。僕はどちらでもあると思うんですけど、例えば僕はジョージ・ハリスンみたいな人に強い影響を受けた。特定のアーチストを深く聴くっていうのは音楽を超えてその人の存在そのものを聴き込むっていうようなところがあると思うんですよ。だからマニアックになっちゃう人もわかるんですけど。

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宮井 そうすることで、つまりその音楽をやっている人の人柄とかどのような感情で音楽をやっているのかっていうのが、その人の音楽を深く聴くことで会ったこともないのに理解しあえる部分が音楽にはあると思っていて、それは自分勝手な感覚なんだけれども、その中からいろいろなものを得るわけですよね。そういった聴き方っていうのが自分の“音楽の聴き方”の根っこの部分になっている。今この仕事をする上でもすごく役に立っている部分だと思います。つまりポップミュージックから人生を学ぶとか、そういったことができるんだって、頭じゃなくて実感でわかるとブレずに済むんですよね。

 

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宮井 今「CDが売れない」とか色々言われて音楽業界にいた友達とかも結構続けられずに辞めていっちゃう。でもその時に“なんで自分が今レーベルをやっているか”というと、そういった部分があるのかな、と思う時があります。やっぱり音楽を信じている、音楽を通して人生を学んで来た、だから今度は音楽の役に立ちたい、みたいに思っているところがあります。…なんだか固い話になっちゃいましたね(笑)。

 

▷いや、こういうお話が欲しかったんです。それに“そんな方なんじゃないかって期待していました。ブログを読んでいる時から「自分よりもずっと深く音楽とつきあってこられたのだろうな」とか。そして血を通わせて音楽を聞かれる方だろう、とか。率直に嬉しいです。

 

宮井 よかった!

 

▷藤沢にタワレコがなくなると知って、実は慌ててご連絡したんです。当たり前にあるものがなくなる…。それは残念、というか…少し考えてしまいますよね。

 

宮井 嬉しいですね。そんな風に言っていただけると。

 

▷湘南には音楽家や音楽を愛している人が沢山いると思うんですけども、このようなレーベルが湘南にあって、それらの同志のような存在がタワーレコードという企業にいた。試聴機も二台くらい展開されていて…

 

宮井 ありえないですよね。

 

▷確かにおっしゃる通り「CDが売れなくなった」と言いますけれど、宮井さんがブログに書かれていたように「だからといってCDそのものがなくなるわけじゃない。やるべきことをやるだけだ」に尽きますね。レーベルの役割が失われるわけではない。その答えを宮井さんは具体的に今どう描いていますか?

 

宮井 やりながら覚えていったところとか、「自分に向いてるなあ〜、向いてないなあ〜」とか、わかってきたことっていうのがあるんですけど、その中には例えば「自分は商売やお金儲けはあまり得意じゃないんだな」っていうか、むしろ苦手なんだっていうことも含めて、ちょっと大それたことをやったりとか、リスクをかけて勝負するとか、何かを仕掛けるとか、そういうことは自分には向いていないんだなって思って。“出来る事”って言ったら、良い音楽を見つけて自分のレーベル“サンドフィッシュレコード”として良いものを揃えていくっていうことだなあ、と思っているんですよ。

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宮井 それっていうのは5年経っても10年経っても色褪せないもの。時代の流れとは少し離れたところで変わらず残るもの。例えば買って5年後とかにふと思い出して聴いた時に印象が変わっていなかったりとか、むしろあの時わからなかったものが今は新鮮に聴こえる、とか。そう言った“深み”があるもの。ウチは小さなレーベルだから、出してもなかなか気づいてもらえないんですけど、気づいてくれた時にカタログが残っていて、それが全て良ければ興味を持ってもらえるじゃないですか。「イイものを見つけた!」て思ってもらえる。そういうレーベルでありたいと思っていて。

よく例えるのが、大通りよりも道はいったところにある小さなお店のようでありたい。そこに行けば色褪せない深みのある音楽がそこにあって「いつでも来れる」みたいなね。

 

 

 

SFR_LOGO_Colora

Sandfish Records

http://sandfishrecords.shop-pro.jp/

 

Sandfish Records 主宰:宮井章裕 ブログ

http://sandfish.exblog.jp/