01.21

【INTERVIEW】Robert de Boron初ベスト『nostalgic』で振り返る轍
メロウ・ヒップホップの代表格として現在絶大な支持を得ているRobert de Boronが1月20日、初のベストアルバム『nostalgic』をリリースした。東京で生まれ育ったBoronのヒップホップは、周知の通り土着的なイメージとは大分異なる。都会的なメロとコードのアプローチで洗練された明美さを装いながも、儚む深さをデビュー当時から一貫して併せ持っているトラック達…。それらの平穏なループをヘッドフォンから耳へと染み込ませながら、常にBoronについて『人が音楽を産む』と言うが彼のことだろう、と好意的に感じていたのだった。
表層的な軽さからにじみ出るBoronのシャイでジェンエトルな親和性—。ベールに包まれる彼のパーソナリティーに触れた今回のトークもまた、彼の作品のように、我々をHAPPYな空気に包んでくれていた。
(Photo / Mami Otsuki)
▷Boronさんは女性ファンが本当に多いですよね?今日は普段よく話してくださるような音楽家としてのコアな一面よりも、ファンの皆さんに向けたインビューをあえて取らせていただきますね!
Boron えー!?緊張すんなあ(笑)!
▷ブログを拝見しても「素敵だなあ!」と感じることばかりなので、いつも通りにいっちゃて大丈夫だと思います。
Boron うっす、ありがとうございます!了解です、頑張ります(笑)。
▷さて、まずは初のベスト『nostalgic』が出来上がった率直な感想から伺ってもいいですか?
Boron そうっすね、振り返れてよかったですね!6年前からずーっとひたすら作ってきて、そういうチャンスがあんまりなかったんで、それが嬉しかったかなあ、って感じですね。
▷一曲目に「Shine a Light」を持ってきたっていうのは?
Boron なんでだろう…やっぱり”一番売れたから”ですかね…。Robert de Boronの代名詞?ていうか。みんなが知っている曲を一発目に持ってきたかった感じですね。「Shina a Light」Awaとの共作でアルバム1枚にするくらい、僕にとっても大事なものなんです。
▷どんな曲がいいかファンの方に訊いていましたね。
Boron 「どのくらい聴いてくれている人と僕との間で温度差があるのかな?」っていうのが気になっていて、SNSがちょうどよかったんで「どういうのが好き?」「どういうのが聴きたい?」ってちょくちょく訊いてたんですけど、あんまりズレてなかったかな。僕が入れようかと思っていたものと、リスナーさん達が聴いて「これ、いいね!」「これが入れて欲しい!」って言ってくれることが、そんなにズレてなかった。
▷「意外だな!」と思った曲はありましたか?
Boron え…?…あったかなあ。でも「Take Your Turn」とかは「え?これ好きな人いるんだあー!」って…。
▷私、好きです。
Boron ほんとスカ?
▷「Be Okay」と「Take Your Turn」。
Boron 嬉しいなあー!ありがとうございます(笑)。
▷MVも最高ですね。でも、異質といえば異質なんですかね?
Boron そうですね。ファースト(Diaspora)って結構トンガってるんですよね!すごいジャジーで…リフとかプレーもね。セカンド(Mellow Candle)以降はナチュラルで分かりやすい音楽に変化しているんで「どうなのかなぁー?」って。でも嬉しいですけどね「Take Your Turn」好きって。俺も大好き。いいよね!
だいたいしっとり系の方が受けがいい印象…寄せてった感はないんですけど。その中でみんなが「Take Your Turn」を選んでくれたっていうのは嬉しいですね。
ちょっと我を通したのがMelody.とやった「Love Out Of Sight」。これもファーストに入ってるヤツなんですけど、これもジャジー進行で。
▷個人的な思い入れがあったんですか?
Boron まあ…あんまないけど、でもなんかやらしい。セクシーなコード進行っていうか。
▷リード曲と言われているものが全部さらりと入っているからこれからRobert de Boronさんを知るにも勧められる。ベストアルバムって、アーティストさんの思いというよりはビジネスの顔を持つものが多いから、アルバム単位で買うリスナーはベストを遠ざける傾向にある。でもこれはBoronさんの意思が見えるから…
Boron そうですかねー(笑)ありがとうございます。
▷いやね、会社が選んだというよりはご自身で選ばれた感じがすごくしますよね。
Boron そうですね!会社は何も言わなかったっすね(笑)。「好きにやんな!」みたいな(笑)。
一同笑
Boron セカンドくらいから結構言わなくなったよね。ファーストは結構「ああしろ、こうしろ」って煩かったけど「ファーストセールス的にむずかしいじゃん!」って思って。セカンドから言われなかったですね。そしたらセカンド売れてサードも売れて(笑)!「やったぜ!」みたいな(笑)!だからベストもね!
MGR 自分の作品にすごく責任を持っていらっしゃる。アートディレクションも自分で「こういう風にしたい!」って、それがジャケになって。
▷なるほどなー!確かにSNSを拝見していてもそう思いますね。ジャケをファンの方に見せてコメントされているところ。
Boron そうっすね。毎回そうっすね。「こんな感じがいいね!」っていうのを何枚も持って行って、デザイナーさんにやってもらう。…なんか、僕と仕事すると肌荒れがすごくなるらしいですよ、うるさいから(笑)!
一同笑
▷最初から花火って?
Boron うん。でも気球にしようか花火にしようかすごく迷って、絵的には花火のほうが華やかでいいかなっていうのと、一番最後の「Setuna」っていう曲がすごい切ないんですけど、それと対照的なものを落としたくて花火にした感じですかね。
▷確かに「Setuna」は本当に切ないですけれども…こういう音楽を創る方には確かに見えないですよね。これも対照的。
一同笑
▷面白すぎます(笑)。
Boron ありがとうございます(笑)。
MGR 見えないです(笑)。
Boron …そうかなーあ?…(笑)
一同笑
▷Boronさんもいつか仰っていましたけども、Boronさんの作られる曲は、悲しそうにも聴こえるし、楽しそうにも聴こえる。そう言った器の広い音群。心がけていることはあるんですか?
Boron “哀愁系”ですかね。「イッセーのせ!」で100人が聴ける音楽を作っているって僕の中にはあんまりなくて、イヤホンの中で例えば「Setuna」なら切ない思いとリンクさせて…ていうところは意識してるかな。ハッピーな曲はハッピーな曲で「イッセーのせ!」で100人が聴ける音楽じゃなくて、こじんまり聴いてくれる音楽を心がけてる。
▷今 求められている音楽をあげるとするならば、さっき仰ったような「イッセーのせ!」で盛り上がる音楽よりは、より個人的な気持ちにフィットするものなんじゃないか…?
Boron そうですね。
▷そう言った意味でBoronさんの曲は従来のヒップホップとはかなりかけ離れていますよね?
Boron そうですね。日本的なヒップホップからは、確かにかけ離れていますよね。
▷やっぱり…喧嘩したいんですかね?
Boron どうなんだろうね。でもヒップホップっていう文化自体がそういうとこの色が濃いじゃないですか。
▷はい。
Boron 人の悪口言ってみたり、攻撃的な音楽性がヒップホップにはあるから。それとは全然違うことを提示してる、特にアメリカンナイズされちゃった日本的ヒップホップとかとは(僕の音楽は)違うものですよね。
▷確かにね。“本場”とかそういう話をする人とはね。
Boron そうだね。でも嬉しいですけどね、そんな人も聴いてくれているんだったら。
▷…そういうところじゃないですか?女性ファンが好きなところ。
Boron そうですか?好きになりました(笑)?
一同笑
▷ダメでしょ!これ文字に起こせない(笑)!
▷実は私もヒップホップは長いこと遠ざけていたんですよ。悪口・男尊女卑・人種差別・資本主義的な一方的な主張をする勝手なイメージ。
Boron そうそう、“イイ車乗って!”とかね(笑)。
▷ GOON TRAXのお陰ですよね。だからBoronさんを聴いてヒップホップを聴くようになった人はとっても多いはずですよ。
Boron うん、だからこれが入り口だった人はリアルにガチガチしてるヒップホップっていうのにはいかないでしょうね、きっとね。だからそんな人に向けてるって意味でも「やってる意味はあるのかなあ。」っていうのはあります。
▷3.11がボロンさんのターニングポイントになっているということはファンの皆さんもご存知だと思いますが、それらの触れ方も従来のヒップホップとは違う…
Boron そうですね。
▷もしかしたらもっと深いところ。
Boron 確かに。
▷言い方が難しいんですけども…「震災が起きました」「手助けしました」「良いことをした」ではない。
Boron どうなんでしょうね。自分自身ではわからないですけど、あんまり表面的にはないじゃないですか。何万人が死にました…でもその“何万人”の下にはもっと何十万って悲しんだ人間がいて…っていうところにフォーカスしないと。あんまり震災の話してもアレなんですけど…いろいろ一個一個そうだっていうか。数字だけで見ると「何人死んだ!」「可哀想だね」で終わるけど、そこには親友がいたり家族がいたりして。そこにもっとフォーカスして寄ってみてあげることのほうが本当は重要なんじゃないかな?…って思うんですよね。
Boron だから「見てるところが違うのかな?」って思ったりしますよね。みんな「物資運んだぜ!」みたいなのじゃなくて。もっとあるよ!もっと見るとこあるでしょ!
▷分かります。私の親戚は茨城で、そこもめちゃくちゃでしたけれども、誰も触れない。いつも報道されたりするのは石巻と大船渡…とかね。
Boron とかね。
▷本当に難しい話ですけどね。でもそう言った中にそっと踏み込んで創作されている。女性のファンが多いのもそういった部分が心に触れているような気がしますね。
Boron そうであると嬉しいですけどね、本当にね。
▷どうですか?ファンの方からベストの曲ってどんな反響をもらいますか?
Boron 「Shine a Light Pt.2」はね、本当に地震の後にリリースしたんですよ。…まあ、その前からずっと作っていたんですけど…曲もドスっとくるっていうか、歌の内容も「ニュージーランドから日本へ光を当てよう!」みたいな。たまたまなんですけどね。言い方が悪いんですけど、だからちょうどうまくハマったんでしょうね。それを聴いて「勇気もらえました!」とか「元気でました!」とか感想が来た時は、すごく嬉しかったですよね。「ああ…少しでも役に立ったんだなあ!」とか。
Boron あんま一丁前のことは言えないんですけど、でもそういう気分に(ファンが)してくれたっていうか。逆に「そういう気分にさせてあげられたのかな…。」って言うところは「Shine a Light Pt.2」をやっていてよかったなって思いましたね、すごく。
▷曲が作者の手を離れ新しい解釈が生まれて“曲が育つ”ということでもあるんでしょうね。
Boron そうですね、あるでしょうね、一人一人、ね。「Home」とかもそう。これも男女のことを歌っているんですけど、「今の私にピッタリです!」って。…よく考えたらそういうの多いですね(笑)「It’s Never too Late」もモロそうだったし。
▷「これは印象的だったな!」っていうのは?
Boron 一番パンチあったのはやっぱり「Shine a Light Pt.2」じゃないですかね。…インパクトありましたよね、本当に。あの地震っていうのはね…。その当時はあんまりこの話をするのが嫌で。今は聞かれれば全然話せますけど…当時はあまり話さなかったですよね…それをどうのこうの…「してやったぜ!」とか、そういうのもなんか嫌だし。「当たり前でしょ!」みたいな。停電して電気もないから真っ暗だし、信号もついてないし、ガソリンスタンドだけ異常に並んでいて、街はぐちゃぐちゃになっていて。北茨城を抜けたあたりで4車線くらいの道にどっと広くなるんですよね。そうすると車がどんどん増えていくんですよ。「車が全然ないって聞いていたけど、結構運転している人がいるんだな。」って思って、パッと(ナンバー)見たら全部東京のナンバー。「物資持って行っているんだな!」とか思ったらすげー感動しちゃって。「人間ってこういうところだなあ!」っていう瞬間が多々あった。
▷“見た人”と“見なかった人”の差は想像以上でしょうね。
Boron うん、だから東京に帰ってきた時の温度差がすごかったですよ。全然違う!フツーにパソコン開いて仕事してるし。「そんな状況じゃねえだろー!?」みたいな。しょうがないって言ったらしょうがないんだろうけど…でもなんか…ね。「そういうことがあったんだよ、たった200キロしか離れていないところで。」て、もっと知ってもよかったですよね。
▷アーティストの方にとって3.11以降っていうのは作品作りにおいてとても重要視されていますよね。日本のアーティストは避けて通れない。その表現の仕方が“見たアーティスト”と“見なかったアーティスト”では全く毛色が違う気がします。
Boron そうかもしれない。でも、あれは本当にすごかったですよ、本当に!行かなきゃわかんないことですよね。テレビで見てても…ね。
▷今も多かれ少なかれショッキングなことが起きているわけで。その中でBoronさんのメロディが普遍的に作用しているというところに注目したいですね。
Boron そうだと僕も本当に嬉しいんですよ、やってる意味が本当にあるっていうか。もちろん、生活するから「これで稼げたらいいな。」とか色々考えることもあるけど、。もっとその枠を超えたところで全然違う感じ方をしてくれている人がいて、そこに知らず知らずにアプローチできているっていうのは、やっている価値がありますよね!
▷「Setuna」がまさにそんな曲に思えますね。…あ、違いますか(笑)?
Boron いやね、答え合わせじゃないじゃないですか、音楽って。
▷ありがたい。
Boron 俺が思って作ったことも全然違う解釈はアリだし“10人いたら10人の感じ方がある”で全然いいと思う。俺の中では「Setuna」は本当に対照的なものというか。美しくて綺麗なものの中には汚いものもあったりするよって言うのもあるだろうし、本当に美しいものは「美しい」と思えるかもしれないし、表面的じゃない。ただ音楽だからね、でもヒントを出すなら、いよいよ愛し合う二人が別れる時なんだってかんじですかね。言葉もないし表現し辛いですけど。そこまで落とし込めたらな…て思って作った曲なんですよね。
▷(「Setuna」を)最後に持ってきた理由は何かあるのかなあ?確か5枚目のアルバムの構想がもうあるって…
Boron そう。ある程度、ね。やりたいことはね。
▷続く…みたいな感じで終わるベストアルバム。
Boron ね、どうでしょう(笑)?
▷多くのベストアルバムって区切り感があるじゃないですか。
Boron カタログ的な意味合いは勿論あるとは思うんですよ。当たり前のベストアルバムの意味っていうかね。でも次につながる伏線っていう意味を引けたらいいな…て言うのもありますよね。…引けてるのかな?って言うのもあるけどね(笑)!
一同笑
▷ファンが納得するベストアルバムっていうのもなかなか作れない。
Boron ねー!
▷これはファンが納得するでしょう!憶測でもありますけど。
Boron …で、あると嬉しいですよね。難しいっすよね!色々ですからね。
▷どうなんですか?Boronさんのファンの方に「これ嫌だった!」とかいう人いるんですか?
Boron いますいます、全然いますよ!「コレないっしょ〜!」みたいな(笑)。
▷どう答えるんですか?
Boron いやあ〜もう笑う、しかないですよね(笑)!「ないんだ〜!」って。
一同笑
▷でもね、恐縮ながら“ファンはアーティストの鏡”賛成派の私から見て、Boronさんのファンで嫌な人はいなそうですよ。「人としてどうなの?」暖かい感じ。
Boron そうですね。変なヤツいないですね!
▷で、チャラそうっていうイメージが蔓延していますけど…
Boron どうなんでしょうね?(笑)
一同笑
▷いや、チャラさはほぼサービスで、実際はかなり熱い人間なんじゃないかって!
MGR 熱いです!熱量がすごいです。
▷そうですよね!そういう人って作品で絶対に嘘つけないから。親切で寄せても媚びたりはしない。これから5作目…ロックやりたいって言っていませんでした?
Boron そうですね。でもRobert de Boronでは難しいでしょうね、きっと。でもコード進行とか寄せた曲とかはありますよね。「Be Okay」とかはカノン進行形なんですけど、こういうのはロックから受けたニュアンスってありますよね。…でもこれからやってみたいのは“もろロック”ですね!
▷ピンクフロイドとか好きだって確か…
Boron そうそうそう!昔ハマってましたね。
▷あんな感じですか?
Boron いや、王道ロックですよね。エレキとか、どかーん!って(笑)。
▷それはそれで観たい。
Boron やってみたいとは思っているんですけどね…なかなかチャンスないですよね。
▷やっていいって言われていたじゃないですか。
Boron メンバーとかっていうのもなってくるじゃないですか。ドラムとかキーボードとか。やっぱり一つの船を作るっていうのがね。絶対沈むでしょ!俺が船作ったら(笑)!
▷えー!?
Boron 沈むよーきっと!チャラいもん。
一同笑
▷絶対そっちに行っちゃうんだから(笑)!
Boron もっと硬派なヤツがいて、俺がピョンって乗るなら面白いかもしんないけど…だいたいチャラいんですよねバンドマンって(笑)。
▷絶対そんなことないでしょ!(女性とも)長く付き合うタイプでしょ。
Boron そうね。でもやりたいんですよ、バンド!でも歳も歳だし、どういうのをやったらいいか悩んでいる間に多分40とか50(歳)になっていって、いいおじさんになった頃に「いい音楽やりたいな〜!」くらいでいいのかなあ?でも明日やれるって言ったらやりたいですけどね。「お金ください!」って感じですかね(笑)!
▷ファンは会いたいだろうな!生Boronさんに。
Boron そういう場も欲しいですよね。
▷ライヴもやらないし…俳優さんとトークショーとか?
MGR どこの満足度を上げるか、ですよね。
▷完全に女性向けに。
MGR もうAV男優さんみたいなことしないと無理でしょ。
Boron 「キミ可愛いね〜!」みたいな?オッケー頑張る、それ(笑)!イヤダメだろ(笑)
▷今日は有難うございました!
Boron こちらこそ、楽しい時間を有難うございました。また取材来てくださいね♥
【リリース情報】
アルバム:nostalgic
アーティスト:Robert de Boron
リリース日:2016.01.20
価格:¥2,400(+tax)
Robert de Boron
公式サイト: http://robertdeboron.com/
Twitter: https://twitter.com/robertdeboron
FaceBook: https://www.facebook.com/robertdeboron
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