2016
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【INTERVIEW前編】ASA-CHANG&巡礼7年ぶりアルバム『まほう』大解剖

INTERVIEW

僕ら日本人は幼き頃から西洋音階に基づいた音楽の教育を9年間、幼稚期も含めると10年以上にわたり、当たり前のように刷り込まれながら大人になる。特に真面目な民族性を持つ日本人の僕らは知らずのうちにそれらのルールに当てはまるものを音楽とし、またそうでないものを「実験的」「よくわからないもの」などというカテゴリーに分類してしまってきたようだ。外国に評価されればとりあえずは頷くが、その目に自信は伺えないことが多い。

しかしネットから様々な価値観で自由に育った人々の音楽を容易に触れることのできる環境が整うにつれ、ポップ…つまり多くの人々に愛される音楽の飽く無き世界が日本でも若者を中心に受け入れられてきたように感じる。

ASA-CHANG&巡礼の音楽とは、まさに日本を代表する自由なポップの一つだ。ちょっと生意気な言い方をすれば、ASA-CHANG&巡礼の歌を「ポエトリーリーディング」などとステレオタイプの表現をするのは超真面目君か少々昭和のニオイ有り、だろう。

そして今作『まほう』。相変わらず何ものにも囚われない、目の前の表現者を引き立たせることのみに全霊を注ぎ込んだ 新生・ASA-CHANG&巡礼の“希望の音”がここに誕生した。このインタビューでは、そんな新生・ASA-CHANG&巡礼のフレッシュ感や必然性、またそれらを導くリーダー・ASA-CHANGの愛と優しさに満ちた爆笑コメントを楽しめると同時に、新作の制作秘話や作品の奥行きについて存分に知っていただけるのではないかと思う。

 

(Photo / Mami Otsuki)

 

 

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▷7年ぶりとなるオリジナルアルバム、おめでとうございます!まずは率直に、作品が出来上がった直後の感想をお願いします。

 

 2012年に私達(杏・後関)がASA-CHANG&巡礼に入ったんですけど、実はもう(一緒に活動を始めてからは)4年目くらいになっていて、新生になる前の曲も含めてこの4年間はけっこう変化があったなあ、と思っています。「まほう」とか「告白」にいくまでに、初めて作った「アオイロ賛歌」とか改めて聴き返して見て「ああ、こういう過程があったなあ!」って。

けど方向としては朝倉さん(ASA-CHANG)もよく仰っていましたけど、暖かくて本当に「新生」と言った感じですね。やっとですけど(笑)。できてよかったと思っております。

 

ASA-CHANG 歴史がありますねえ、実は意外にある。

 

 そうですね。映画(『合葬』)の曲とか。それぞれ全然違う。でも一つ一つが変化だったなあっていう実感があります。

 

後関 「新生・巡礼」を掲げて僕らの作品を発表できるまでに4年という年月がかかったんだな、っていうのが「早いもんだな…」と。ここから新しいアルバムを作ってレコ発とかで新曲発表をどんどんやっていく。これで本当の意味での「新生」なのかなって気も、ちょっとしますね。

 

ASA-CHANG いい回答しますね~。

 

後関 いや、今杏ちゃんが言っているのを聞いて改めてジーンと。

 

一同笑

 

ASA-CHANG これからがスタート。

 

▷実はこんなものを(巡礼名義のファーストアルバム『タブラマグマボンゴ』)を持ってきてみました。ここからだと18年経つのだなあって思いまして。

 

ASA-GHANG これ、U-zhaanはまだ居ないよ。ピアニカ前田さんとかが写ってくれていて、これは俺。アフロヘアはU-zhaanより俺のほうがが早いんだから(笑)。

 

後関 すごい、アフロが(笑)!

 

 すごい。初めて本物を見た!

 

ASA-GHANG トラットリア盤ですね。

 

▷この時から比べたら、それはもう!だいぶ歴史が伺えますね。現在の「新生」のスタイルで発表されるには(ASA-GHANGさんは)相当なご決断であったと思いますが、ここで改めて朝倉(ASA-GHANG)さんにお二人の魅力を伺いたいと思います。

 

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ASA-GHANG 魅力といえばもうヴォーカル…(照れながら)歌い慣れていないとか歌い慣れているとか、訓練されたということではない、ヒリヒリするような個性がいいなあって思いまして…。あと…楽器はね、もっと練習してもらわないと困るんですけどね、楽器はね!楽器は嘘をつきません(笑)!

 

一同笑

 

ASA-GHANG 声はね、もう誰とも替えられないですからね。サックスとか道具に息を吹き込んだりしますけど、声は違う。独特ですよね、よく考えるとね。おしゃべりを練習する人っていないじゃないですか。スピーチとかはありますけど。普通に喋る声が良ければ歌はいいのですよ。それぞれの個性でね。

 

▷そうですね、まず今回は何と言っても「まほう」で後関さんがヴォーカルを取られていますね。歌われている箇所は漫画(「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」)では親友の女の子が歌っていますが、それをあえて後関さんが歌われているところが一つのポイントだと思うんです。

 

後関 朝倉さんが「仮歌いいじゃん!」って言ってくれたんです、はい。

 

▷奇跡的に無意識だったからこそその部分魔法に磨きがかかったかもしれませんね。タイトルも漫画では漢字で「魔法」だったのがあえて平仮名で「まほう」になった。ここもたまらない!

 

後関 これも朝倉さんのチョイスですね。漢字じゃなくて平仮名にするっていうのはハッキリ言っていたんで!

 

▷喋ろうとしている時の、言葉。

 

ASA-GHANG そうですね。平仮名ってやっぱり女性の文字だとも思うし。漢字だと一つの意味を固定させちゃうので、平仮名がいいなあ、と思いました。

 

▷もう一つのリード曲は「告白」ですけども、こちらは杏さんがヴォーカルを取られていますね。

 

 はい!

 

▷アルバム『まほう』では4曲目と5曲目で1曲、という認識ですか?

 

 そうです。これはもう男の人が歌う、しかもはっきり誰が歌うか聞かされていて、キーも男の人のキーでした。無理やり自分が仮歌で歌ったのが使われているんです(笑)。

 

ASA-GHANG そうでした。

 

▷いずれも仮歌が採用されている!

 

ASA-GHANG 仮歌レベルで人の心をね、打つ。

 

一同笑

 

▷私はここ(「告白」)で一旦止めて泣きましたけどね(笑)。朝倉さんが新体制をどのようにして表現するかを模索されたと伺っていましたが「告白」で改めてその景色が広がった気がします。本作『まほう』が前回の影を包み込む光のようなアルバムに仕上がった一つの大きな要因は、杏さんの母性的な存在は大きいのではないでしょうか?

 

 おおっ!

 

ASA-GHANG そうです。間違いないです。

 

▷愛や慈しみといった要素も深く表れていますね。

 

ASA-GHANG 僕が「告白」の杏ちゃんの歌ですごく好きだな、と思うところは、ボーカリストは歌にメッセージを込めようとするんですね。説得力を増そうとするような、歌唱の技術で人の心を動かそうとかするんですけど、そういう感じが全くない無垢な感じが(杏ちゃんには)すごくするんです。

 

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ASA-GHANG ちょっと普通に読み上げているだけというか(真似をして唄ってみせる)あまり気持ちを込めないところにグッときましたね。それで当初予定していた男の人に頼むことを辞めてしまいました。

そういう新しいメンバーの声の魅力、存在の魅力っていうのは本当にありますね。

 

▷今回、押見修造さんと勅使河原一雅さんとの関わり深さが感じ取れますが、後関さんと杏さんとのASA-GHANGさんの関わりにしても、お話を伺えば伺うほど、改めてASA-GHANGさんの懐の深さありきだと思うんです。でないとこれだけ深い作品が作れませんよね。ただのコラボやモチーフではね。仮歌は仮歌だったでしょう。志乃ちゃんの言葉の詰まり方や雑音も、これまで以上に滲み出ていますよね。ASA-GHANGさんは押見修造先生へはどう言った思いがおありですか?

 

ASA-GHANG 押見先生とは3年前の「悪の華」という漫画のアニメ化からのおつき合いなんですけど、最後に「花」という巡礼(ASA-CHANG&巡礼)の作品が流れるんですね。今まで巡礼の音楽を知らなかった人達、特にアニメ業界の方達がザワザワとした。それがキッカケでした。どうしてこの曲がエンディングになったのかというと、押見先生が巡礼の「花」をすごく聴いていたと。そういうことを仰ってくれて「花」をリメイクしたんです。それまで僕は押見先生の作品を読んだことがなくて、でも杏ちゃんは知っていたという。「え?あの押見修造!?」って。

 

 漫画はその一年前からすごく流行っていたんです。

 

ASA-GHANG そうなんですよね。象徴的に人を詰る、みたいな言葉で「クソムシ」が流行っていたりしていた。あんなに激しい作品のエンディングに「花」が流れると「無茶苦茶だな。」って感じでしたけどね(笑)。

 

▷この作品にはまだまだ関わっている方はいますね。天才と言われる小田朋美さんのピアノで始まる「ビンロウと女の子」。

 

ASA-GHANG あ!触れていただいて嬉しい。

 

▷台湾でビンロウを売っているセクシーな女子の情景がまず浮かびます。

 

ASA-GHANG でも街角のたばこ屋さんでおばちゃんが「はい」って売ってるところもありますよ。

 

▷そうですね、インターチェンジとか。こういった強烈に妖艶な楽曲もなかなかない気がします。

 

ASA-GHANG どことなく不思議な南国感のような曲は多いような気がしますけどね。「ビンロウと女の子」とか「まほう」の声を担当している「おかぽん」の声の存在が今回はすごく大きいと思いますね。「木琴の歌」にも入ってる。

 

▷7曲目の「行間に花ひとつ」は椎名もたさんご自身の声ですか?

 

ASA-GHANG これは椎名もたさんご本人の声です。自分で吹き込んでいた声があったんです、パソコンの中に。

 

▷あれも素朴でいいですよね!

 

ASA-GHANG いいですよねー!あれに僕達が一緒に演奏したらどんな曲になるかなあ?ってイメージで作ったんです。

 

▷もたさんが生涯を終える前にどんなことを考えていたのか…。そしてここでも「花」が出てくる。この作品には本当に「花」がたくさん咲いていますね。

 

ASA-GHANG なんかね、歌詞を書き始めた初期衝動にちかい感じに僕はすごく魅力を感じた。人生観みたいなのを上手く言い当てられなくて言葉が難しくなってしまっているするところも可愛い。

 

▷椎名もたさんの歌しかり、ASA-CHANG&巡礼の音楽を聴いていると例えば「音痴」という一般概念自体が少し違うんじゃないか?と思えてならない。下手だとか実際音痴だとかそういうことではない。歌うことについてはどう考えていらっしゃいますか?

 

ASA-GHANG 歌はとても恥ずかしいものですよね。多分、杏ちゃんもゴセッキー(後関)もとても恥ずかしいと思う。僕も恥ずかしいんですよ。なんでかというとそういう修練もしていないし、テクニックもない。人の(歌)は「いいな」って思うんですけど…自分の声って嫌でしょ?みんな歌えばいいとは思わないんですけど、メンバーの存在感は声にもあるなあと思う。どうしても嫌だったら脱退しているのかもしれないし(笑)。

 

後関 録音したやつを改めて聞いて、やっぱり恥ずかしいっていうのはあります。

 

ASA-GHANG 飛ばしたくなるでしょ?

 

後関 そうですね。ライヴの時とかも「歌くる!歌くる!」って…

 

ASA-GHANG え?ライヴの時とか、ものすごい背筋が伸びてたじゃん!

 

▷本当に真っ直ぐですよね(笑)!

 

後関 あれは演技指導が入ってて(笑)!

 

ASA-GHANG 演技指導じゃないって! そもそも演技ってなんだよ(笑)!演者に失礼だ(笑)。

 

一同笑

 

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後関 歌はこの話をしているだけで汗がどっと出てきます(笑)。

 

 私もライヴ先行だったので、最初の時はここにいる人全員に聞かれていると思ったら、本当に恥ずかしかったです(笑)!だから感動するとかそこに全然まだいけなくて。でもアルバムになった時に一つの作品としてやっと聴けるようになってきた。

 

後関 俺の一歩先だ…!

 

 一歩先に行けたかもしれない(笑)。ちょっと自分じゃない感じもしますけど、作品として聴けるようになってきたかな。でも本当に「幼稚な声だなあ(笑)!」って言いたいことが沢山出てきちゃうんですけどね。

 

▷ライヴでも演奏者とパフォーマー、本編と客入れの境い目がないように、普段歌わない人が歌い、生演奏と巡礼トロニクスの境い目がない感覚がこの作品で堪能できますね。

 

ASA-GHANG まあ、3人と機械一つでやってかなきゃいけないですからね。

 

▷ドキッとさせられたのは、ANIさんの「ANIのエンドレスダンス体操」ですね。これはもうASA-CHANG&巡礼往年の「諭しのナンバー」というべきか…

 

一同 諭しの!?

 

▷「今じゃん!これ、今じゃん!やっぱり今って危ないじゃん!」などと、ビビりましたけども。

 

ASA-GHANG これね、最後に作ったんです、ギリギリ!

 

▷そうなんですか!いい感じのライヴをしている後ろで結構大変なことが起きているんじゃないか?っていう。

「だんだん慣れて来ちゃったみたいだね」って何回も言いますよね。

 

ASA-GHANG 3回も言いますよね。「慣れて来ちゃったみたいだね」って言った後に何万人規模の歓声が「うわーあ!」って。

 

▷電気つけました、怖くて(笑)!

 

ASA-GHANG 暗くしてたんですか?暗くしちゃダメですよ、巡礼の音楽!持っていかれますよ!

 

一同笑

 

ASA-GHANG ANIはこういうのが割と得意ですよね。キャラクー設定は。ANIがエアロビや体操のお兄さんになったらどうなるんだろうな?って思ったら「はーい!!!」って出てきそうですよね。居るだけで絵になっちゃう存在感。

 

一同笑

 

▷そして映画『合葬』のエンディングテーマの後、最後は再び「告白」。こちらはコーネリアスさんのリミックスで締めくくられています。最後の「沢山のものをつくりたい」というフレーズが印象的ですが、もしかしてこれはみなさんの思いでもありますか?

 

ASA-GHANG そう示唆するような言葉なんですけどね。でもこれ、プロフィールなのに最後が「沢山のものをつくりたい」ってプロフィールじゃない、じゃないですか。プロフィールじゃないですよね!自分の思いですからね。

 

一同笑

 

ASA-GHANG 勅使河原さんはそういう、(良い意味での)エラー感がありますよね。メッセージが。僕はほとんどいじっていない。

 

▷このプロフィール自体が一つの作品になっているという…。

 

ASA-GHANG 誰かに救いとって欲しかった気もしますけどね。「ヤクザが怖くて泣きながら警察をよんだ」って、どういうプロフィール?…すごいですよね。

 

一同笑

 

ASA-GHANG 面白い言葉というのは本当に色んなところにありますよね。

 

 

 

 

 

【INTERVIEW後編】ASA-CHANG&巡礼『まほう』から見えたポップの定義

http://tmedia01.xsrv.jp/veemob/2016/02/27/asachangjyunraymahou2/

 

 

 

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【リリース情報】

アルバム:まほう

アーティスト名:ASA-CHANG&巡礼

リリース日:2016.03.02

価格:¥2,800 (+税)

 

《収録曲》

  1. アオイロ賛歌
  2. まほう
  3. ビンロウと女の子
  4. 告白 –Prelude-
  5. 告白
  6. 2月(まほう ver.)
  7. 行間に花ひとつ feat.椎名もた
  8. 木琴の唄 –Xylophone-
  9. ANIの「エンドレスダンス」体操
  10. 告白(Cornelius ver.)

 

 

 

ROPPONGI VARIT grand opening live!
ASA-CHANG&巡礼ワンマンライブ「まほう」

日時:2016.03.23 (水)

Open 18:30 / Start 19:00

場所:六本木VARIT

前売 ¥3,000 / 当日¥3,500 (D別)

 

 

アサちゃん

ASA-CHANG&巡礼 Web

http://junray.com/