6年ぶりのアルバム『K 2.0』 クーラ・シェイカーの挑戦状

クーラシェイカーはデビュー・アルバム『K』でイギリスのアルバム・チャート1位を取った。華々しい登場だ。ギターボーカル&のクリスピアン・ミルズがルックス、家系も含めて人気の原因だったこともある。ただ、その後の売れ行きは今ひとつだった。 Kula Shaker – Infinite Sun 2016年、2月末に新譜が発売される。タイトルは『K 2.0』。収録されている「Infinite Sun」のミュージックビデオを、クーラシェイカーは出してきた。イギリスの、しかもロンドン出身のバンドとは考えられない。イントロからインドに影響された『K』をさらに進めたような音が鳴っている。これが彼らの『K 2.0』なのだろう。 Kula Shaker – Tattva デビュー・アルバムからインド音楽への傾倒は濃かった。ビートルズやローリング・ストーンズとの大きな違いは、音の取り込み方だ。クーラシェイカーは良い意味で言えば「そのままの生食」を混ぜ込んでいた。食べた瞬間にインド料理と分かるような感じだ。ビートルズなどはスパイスとして利用した。隠し味ではない。ハッキリと風味は口に残る。しかし、もっと複雑な口当たりがした。それがセンスと呼ぶなら、それで終わりだ。 Kula Shaker – Hey Dude 「Hey Dude」。デビュー・アルバムは、この曲から始まる。1996年、シングルカットされた。全英2位である。アメリカではスマッシュ・ヒット程度の扱いだ。「1発屋」という言葉がある。音楽シーンにも数々の「1発屋」がいた。ほとんどがシングル曲の「1発屋」だ。時代のせいもある。昔はシングル曲がメインの音楽界だった。クーラシェイカーのイメージとしてアルバム「K」だけの「1発屋」。その印象は拭い取れないだろう。 Kula Shaker – Hush もう1曲、全英2位を取ったシングル曲がある。カバー曲だ。元はジョー・サウスの曲だった。日本では、ディープ・パープルのカバー曲の方が有名かもしれない。「Hush」だ。センスの話をしよう。カバー曲のカッコ良さならディープ・パープルよりクーラシェイカーの上だ。インドの味はしない。正統派である。クーラシェイカーは実力派だった。あまりにも過小評価されていないだろうかと、そんな気がしてならない。 1996年のデビュー・アルバム『K』。2016年に発売される『K 2.0』。「Infinite Sun」を聴く限り、こんなことを感じる。 進化ではない。深化だ。 デビューから20年が経った。あえて、『K 2.0』というタイトルを付けたことは、クーラシェイカーとしてリスナーへの挑戦かもしれない。「ほら、聴いてみなよ」とクリスピアン・ミルズが語りかけているようだ。