2016
03.11
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エドウィナ・ヘイズ『コーヒー・タイム』 – 震災の後に届いたメール。

BLOG

エドウィナ・ヘイズの『コーヒー・タイム』(Edwina Hayes / Good Things Happen Over Coffee)。このアルバムを聴くたびに思い出すのは、2011年3月11日、東北地方で発生した未曾有の大震災と原子力発電所の事故のことだ。その2日前に、僕は自分のレーベルからこのアルバムをリリースしたばかりだった。言うまでもなく、とても音楽のプロモーションをしている状況ではなくなった。事態のあまりの深刻さに、多くの人達と同様、僕もまた戸惑い、不安と無力感に苛まれていた。

 

「何かできることはないのか?」と考えては、何も思いつかない。思いついたとしても、行動力が伴わない。そんな日々を悶々と過ごしていたとき、東北にあるレコード店「Neat Records」が、ツイッターにこんなつぶやきをアップしているのを見つけた。「災害の狭間を通って、「エドウィナ・ヘイズ/コーヒータイム」到着。心温まる唄声。いろいろな動揺を静めてみてはいかがですか?本日より営業開始しました。しばらくは、18:00閉店とさせていただきます」。

 

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それは震災の前日に発送したCDが、無事お店に届いたことを意味していた。しかも、店は震災からわずか5日で営業を開始したという。そのことに僕は勇気づけられ、一気にやる気がわいた。その日、僕は何度も繰り返し『コーヒー・タイム』を聴きながら、仕事をした。被災した地域にある大小のFM局をピックアップし、自分の気持ちを手紙に書いて、CDと一緒に送った。エドウィナの歌声は、きっと被災した人達の励ましになる。僕にはそう信じることができた。もちろん、こんな時に音楽が何の役に立つのかなんてわからなかった。それでも、何かできることが嬉しかったし、もしそれが被災した人達の役に立つのなら、もっと嬉しいと思った。

 

エドウィナからメールが届いたのは、そんな時だった。そこにはこんな言葉が綴られていた。

 

「この恐ろしいニュースを聞いたとき、あなたが住む町は無事なのかをまず調べました。もしあなたが私の音楽を必要とし、そしてあなたがそうすべきだと思うなら、連絡をください。私は日本へ行きます。ギャラはいりません。渡航費も何も心配しないでください。」

 

結論から言えば、この来日話は実現しなかった。理由は、僕にエドウィナを迎える体制を整えるだけの力がなかったからだった。でも、あのとき彼女が示してくれた優しさに自分がどれほど救われていたのか、今となってみればよくわかる。

 

音楽を特定の出来事と強く結びつけて語ることが、その作品にとって、はたまたエドウィナ自身にとっても、適切でないことはわかっている。でも、僕には切り離すことができない。あの普通ではなかった状況の中で、エドウィナの歌声がどれほどの清廉さをもって僕の心に響き渡ったことか。どれほどの温かさで震える魂を包んでくれたことか。その事実は、5年がたった今も、何ひとつ変わってはいない。

 

 

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【アルバム情報】

アルバム:『コーヒー・タイム』(Good Things Happen Over Coffee)

アーティスト:エドウィナ・ヘイズ(Edwina Hayes)

価格:2,381円+税

ライナーノーツ:宮井 章裕

歌詞対訳:佐藤 幸恵

 

 

<購入・試聴>

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