2016
05.23
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18禁人気連載シリーズ!飯田華子の妄想一人インタビュー/最終回

ARTIST, BLOG

みつこ:あ、おじさんだ。(開け放した店の扉から野良のおじさんが入ってくる)

 

店のおばちゃん:あ〜、うちは酔ってる人だめなのね、ごめんなさ〜い。(追い払う)

 

まりお:おじさんも猫ちゃんみたいに追い出されちゃいましたね。

 

みつこ:私もいずれああいう感じになるんでしょうか。

 

まりお:なりたいんですか?

 

みつこ:「セーラームーンになりたい」みたいな意味では、なりたいかもしれません。なんか、別世界のキャラとして。

 

まりお:でも、野良の世界は野良の世界でけっこう規則があるみたいじゃないですか。

 

みつこ:そうなんですよね。思ってるほど別世界じゃないですよね。体もキツいだろうし。

 

まりお:そういえば以前寿町(※横浜のドヤ街)に滞在してましたが。

 

みつこ:「アートで街を活性化させよう!」ってプロジェクトですね。

 

まりお:ドヤに住んでる方と野良の方はちょっと違いますけど。

 

みつこ:「アーティスト」って名目で私みたいな中途半端なクリエイターが全国から来てましたけど、みんなどういうつもりだったんでしょうね。

 

まりお:あっ、そんなこと言っていいんですか?人にどう思われるかばっかり考えてるあなたが。

 

みつこ:大丈夫。誰も見てないですよ。

 

まりお:「中途半端」とか言ってごめんなさい。自虐として言ってるだけで、決して他のアーティストさんたちを蔑んでいるわけでは…

 

みつこ:だいたい「アート」って言葉は胡散臭いんですよ。

 

まりお:…酔ってきましたね。ビールなくなりましたがどうします?もう一本頼んでアジフライ食べるか、日本酒にしてシメサバにいくか。

 

みつこ:悩みどころですね。ビールを飲みたいが…

 

まりお:あんまり金がない…

 

みつこ:でも今日はインタビューなんでビールにします!

 

まりお:ちょっと!一時の気分で遣ったらまた後悔しますよ?親から借りた金も全然返せてないじゃないですか。いいんですか飲んでて。親を喜ばせたいんでしょ?

 

みつこ:うっ…。な、なおのこと飲みたい!

 

まりお:破滅願望で飲んでもロクなことないですよ。どうせ破滅しなくて明日も生きてるんですよ。いい加減わかってるでしょ。

 

みつこ:…日本酒にします。

 

まりお:一本で帰りますよ。ちょっとつまらないぐらいがちょうどいいんです。

 

みつこ:あーあ、500円落ちてないかな。

 

まりお:寿町で仲良くなったおっちゃんもそんなこと言ってましたね

みつこ:町のおっちゃんたちと積極的に関わりあって創作活動をする、って企画でしたけど、他のアーティストさんたちはどんな気持ちでおっちゃんと接していたんでしょうね。私はどうしても差別意識が抜けなかったんですよ。私なんかより生活保護もらってるおっちゃんのほうが金持ってますけど。

 

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まりお:おっちゃんを見下せる立場じゃないですよね。

 

みつこ:当たり前ですが差別はいけません。でも、人は差別します。自分の差別意識を自覚した上で動かないと、すごーく表面的な、なんの意味もない企画になってしまいそうで、期間も限られているしジリジリしましたね。だから、アーティスト同士で飲んでるときに、差別意識についてどう思うか水を向けたんですよ。みんな「おっちゃん最高」とか「おっちゃんがんばれ!」しか言わないから、ドロドロした本音をあぶり出したくて。

 

まりお:そしたら「面倒臭い奴」って空気になりましたよね。…常々思ってましたが、あなたの質問の仕方はちょっと問題ありますよ。質問するさいに、あらかじめ答えを決めつけているようなところがありますね。

 

みつこ:あぁ、そうですね。「子ども欲しいー!」って人に対しても、「あんまりちゃんと考えてないだろ?」ってハナから思ってるフシがありますね。このときも、「心の奥底ではお前ら差別しているはずだ」「もしくは自分の差別意識に無自覚な浅はかな奴らだ」って思ってましたね。

 

まりお:そういうのは雰囲気で伝わるものです。

 

みつこ:なるべくまっさらな気持ちで質問したいとは思うのですが。

 

まりお:あと、あなたは言葉というツールを信用し過ぎです。言葉で表現することに慣れてない人もいます。逆に、あなただって言葉以外のツールで何かを表現されても気づいていない場合もあるでしょう。

 

みつこ:でもね、「言葉じゃない」って言われるとなーんかムカつくんですよ。「怠けやがって」って思うんです。私だって、言葉で表現することがとっても巧いわけじゃないし、言葉で何もかもが言い表せるなんて思ってないですよ。それでも伝えるためにトライしてるんです。

 

まりお:その割に察して欲しがってますけどね。

 

みつこ:うん。甘えてますね。

 

隣にいた男:おねえさん、酒強いね。

 

まりお:話しかけられちゃいましたよ。

 

みつこ:こういう店で一人で飲んでたら仕方ないですね。(曖昧に会釈する)

 

まりお:この「話しかけないでムード」察してくれますかね?

 

みつこ:だといいんですが。

 

まりお:この人50過ぎくらいかな。

 

みつこ:犬のアップリケがついたジャージ着てますね。「犬介」にしましょう。

 

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犬介:なんか一杯飲む?

 

まりお:…察してくれなかったですね。

 

みつこ:でも奢ってくれるかも。

 

まりお:奢るってことは期待してんじゃないですか。

 

みつこ:え、性行為を?

 

まりお:いや、寂しくなくなりたいんですよ。

 

みつこ:じゃあ期待に応えられないなぁ。

 

まりお:酒もなくなったし出ましょう。

 

みつこ:(犬介に)すみません、もう帰るんで。

 

犬介:えー。じゃまた飲もう。この近くなの?

 

みつこ:えへへ(へらへら笑う)

 

犬介:携帯番号教えてよ。

 

店のおばちゃん:はいはい、おねえさんごめんねー、1500円ちょうどです。

 

みつこ:(店を出て)おばちゃんに助けられましたね。

 

まりお:ああいうとき、ピシャッと断れないですよね。

 

みつこ:自分でうまくかわせなくて情けないですね。

 

まりお:…なんで傷ついてるんですか?

 

みつこ:桜、咲いてきましたね。

 

まりお:これからどうなりたいですか?

 

みつこ:どうにかなりたいもんですねぇ。

 

まりお:頑張りましょう。

 

みつこ:はい。頑張ります!

 

☆おしまい☆

 

Photo / Mami Otsuki

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