2016
06.29
13523751_1077885205635292_1940553365_o

ビター・スウィートなメロディーを紡ぎつづける本物のピアノ・マン~ジョン・リーゲン<中編>

BLOG

<前編>はこちら↓
http://veemob.jp/2016/05/08/52712/

 

久しぶりにジョン・リーゲンからメールが届いたのは、2010年の秋だった。ニュー・アルバムを制作中であること。タイトルは『レボリューション』になりそうだということ。そして、「まだラフ・ミックスだけど」という注意書き付きで、4曲の音源ファイルが添付されていた。

素晴らしいメロディーとヴォーカルはいつも通りだが、曲調はバラエティに富んでおり、トータル性の高かった前作『レット・イット・ゴー』とはまた違う作品であることを窺わせた。しかも、「これのどこがラフ・ミックスなんだ?」と思うほどの完成度である。僕は興奮し、すぐジョンに感想を伝えた。ジョンからの返事も早かった。そこには「これまで行ったことのない場所へ行きたい」と書かれていた。「だから、僕は居心地のいい場所から出て行くことにした」と。

それからしばらく便りは途絶え、アルバム完成の知らせが届いたのは2011年の春だった。思っていたよりも時間がかかったのは、満足がいくまでミキシングをしたかったからだという。その言葉通り、曲はさらに磨き上げられ、より普遍的なものになっていた。とりわけ、1曲目のタイトル・ナンバー「レボリューション」は秀逸だった。美しさの中にも信念を感じさせるバラードで、冒頭の「僕の頭の中で革命が起きている」という歌詞は、自分の中に眠っている才能を呼び覚まそうとする静かな決意表明だった。

 

 

アルバムには、美しいバラード、ミディアム・テンポのナンバー、70年代ライクなロック・チューン等、様々なタイプの曲が収録されていた。ふたつの共作曲(M④、M⑩)についても、「(人と一緒に曲を作ることで)固定観念から自分を引きずり出したかった」と語るなど、ジョンがこれまでとは違う音楽を作ろうとしているのは明らかだった。多彩な曲がバランス良く配置され、オープニングからラストまで一気に聴かせる。バラエティに富んだ内容でも、散漫な印象を受けないのは、曲同士の親和性が高いからだろう。どの曲からも外へ1歩足を踏み出そうとする意志が感じられた。前作から4年振りの新作は、待っただけの甲斐がある申し分ないものだった。

ジョンに感想を送ると、返事はすぐに届いた。そこには「聴いてくれる人達を、これまで行ったことのない場所へ連れて行きたい」と書かれていた。ラフ・ミックスをもらったときのメールにも似たようなことが書かれていたが、ニュアンスが違っていた。ジョン曰く、アルバムを制作するうちに、気持ちが主観的なものから、聴き手を意識したものへと変わっていったのだという。それを読んだとき、僕は溜飲が下がる思いがした。とても大切なことに思えたのだ。

『レボリューション』でジョン・リーゲンがやろうとしたのは、自分の殻を破りながら、聴き手の裾野を広げることだったのではないか。それはミュージシャンとしての自分をひとつ上のステージへと押し上げることを意味していた。その成果がここ収められた全10曲であり、今も僕らを知らない場所へ連れ出そうとしている。そして、このとき懸命に試みたことが、数年後、より熟成された形で、次作『ストップ・タイム』へと繋がっていくことになる。

(後編へつづく)

 

13509643_1077885135635299_1961296429_o

【アルバム情報】

アルバム:『レボリューション』(Revolution)


アーティスト:ジョン・リーゲン(Jon Regen)


価格:2,381円+税


ライナーノーツ:宮井 章裕

歌詞対訳:佐藤 幸恵

 

 

〈後編〉はこちら

<購入・試聴>


Sandfish Records Shop

http://sandfishrecords.shop-pro.jp/?pid=33313520