2016
07.01
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【INTERVIEW】リクオ 拠点・湘南で眺める『Hello!』と『今』

INTERVIEW, LIVE, NEWS, VIDEO

実は、僕は彼に会う直前まで、この作品と向き合うことを避けていた。もはやバブルも高度成長期も“にっぽん昔話”にしか聞こえない時代に、死んだように淡々と生きていた人間にとっては、リクオのむき出しの“ポジティブ”を直視する勇気がなかったのだ。そして、いろんな言い訳をぶら下げて大人になった僕は『Hello!』の取材のために、この音源を通して自分自身と直面せざるをえない、という機会を得た。つまり、僕は今更『Hello!』に一枚皮を剥いてもらったようなものだ、もう足を向けて寝られまい。

リクオは言う。「立ち止まれ、振り返れ。始まりを始めようぜ」。長いこと戦ってきたズタボロの先輩戦士は、キラッキラのシティポップの中で、何の武装もせずに、「ハロー!」なんつって、ヘッドフォン越しの僕らをパレードへと連れ出す。アナログで録られた、直球の歌詞、直球のポップス。どれも決して若くはない。しかし最終的にはこの歌が、腐れた僕の肩にそっと手を置いてくれた。

そんな僕とリクオさんは割とご近所さんでもある。これから始まるインタビューは、海の匂いの届く 行き慣れたカフェで行われた。読む人によっては単なるリラックストークだと感じる人もいるのかもしれない“普通のラリー”が、フレッシュだと感じてもらえたら最高だ。

リクオ新章開幕—— そして今、何を思う?

 

photo / 田中 サユカ

 

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——もうツアーも始まっていますよね。

 

リクオ 発売記念ツアーは4月14日から始まっていますんで、もう2ヶ月くらいやっていますね。

 

——年間100本以上もこなされているという…。

 

リクオ だいたい130本前後くらいを十何年間。

 

——それはすごい!もう、ずっとお忙しいんじゃあないかと思っていたんです。

 

リクオ でも一年の半分くらいはだいたいこっち(湘南)にいますよ(笑)。

 

——今回の『Hello!』はご自身のレーベル HelloRecordaから出されていますね。

 

リクオ 今回からですね。やっぱりリスクを自分で背負わなきゃいけないな!と思ってね。

 

——今はネット社会ですから「1アーティスト1レーベル時代」なんていう方もいらっしゃるくらいで。

 

リクオ そうですね。そういう意味では時代に即している、と言えるのかもしれないですね。

 

——これからはバトンタッチの意味でも、新しい才能を見出す作業も?

 

リクオ いやあ、それに関してはね、あまり大きいこと言わんとこ!と思っています(笑)。

自主レーベルはやってみると、結構大変なことが多い。プロモーション活動も自分たちでブッキングしないといけないし、かなりそれで時間を取られてますね。

 

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リクオ でも、これでまた出来る事と出来ない事がわかってくるだろうと思う。確かにいろんな事を出来る時代になってきましたけど、自分で出来る限界もある。

 

——それは確かに!自分に向いているもの・向いていないものって、意外とやって初めてわかりますよね。

 

リクオ ありますよねえ!本当に今、それを感じています(笑)。でもやってみないと本当にわからなんで、まずはやって見て「次からはこれを人に任せよう」とか「この部分は自分で出来るな」とわかる。

 

——このアルバムの内容についてはOTOTOYさんの方で先にインタビュー記事が出ていて、聴きながら大変面白く読ませていただいたんですが、その中でまず興味深かったのは「僕なりのシティポップを作りたい」と言ったくだりが印象的でした。

 

リクオ 「シティポップ」というよりも、自分が聴きたいポップスの作品を作ってみよう、そういう思いがありました。

 

——実は、この作品を最初はきちんと聴けなかったんです。インタビューにあたり、作品と誠実に向き合おうとすればするほど、自分のダメな部分を出さないといけないような気がしてしまって。

 

リクオ へえー、向き合わされるような?

 

——そうですね。リクオさんがあまりにも平気な顔をして出されるから!自分で自分が追い詰められて今朝、やっと清々しい気持ちになれました。私にとっては、そういう“一皮むけるお手伝い”をしてくださったのがアルバム『HELLO!』でもあります。

 

リクオ へえー!どの曲だったんだろ?

 

——最初から最後まで!リクオさん、完全無防備じゃないですか。

 

リクオ 正直なアルバムを作ったなあ、と自分でも思いますね。でも、重く伝えようっていうつもりはなかったんですよ。ポップスという形で軽やかに伝えたかった。聴いてくれた人の心に寄り添える作品、曲の中にいろんな自分を投影してもらえるような作品になれたなら幸せですね。

 

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——ツアーを回られていて、反響はいかがですか?

 

リクオ すごく評判はいいです!今までにないカラフルでポップな作品になったので、今まで聴いてくれていたお客さんがどんな反応か不安ではあったんですけど、それが自信になっていますね。

 

——人気のある曲は?

 

リクオ 割とばらけるんですけどね。2曲目の「永遠のダウンタウンボーイ」、1曲目「僕らのパレード」も勿論だし「あれから」が好きだっていう人もいる。意外だったのが、アルバムで唯一の引き語りの曲に「アイノカタチ」っていう短い曲があるんですけど、それが良かったって言ってくれる人もいた。

「大阪ビター・スイート」を自分が過ごした街と重ね合わせててくれる人もいるし…そう言われてみると今回は、曲に自身の姿を重ねて聴いてくれる人が多い気がしますね。田中さんはどうでしたか?

 

——私は…強いて言うと「永遠のダウンタウンボーイ」ですかね。でも始めから最後まで、曲のアプローチにこそ変化があっても、リクオさんのコアな部分が全く変わらないので、訊いておいてなんですが、いざ訊かれると迷いますね。

 

リクオ そうですね、テーマは一貫していますね。今回は「ポップスに向き合った作品」っていうのと「自分以外の人が歌ってくれるのをイメージする」というテーマが先にあって、作品が出来上がったんです。聴いている人が、自分自身が過ごした時代を重ねあわせて口ずさんで欲しい。

 

 

リクオ それで、作っているうちに別のテーマにも気づいてきた。僕自身が50歳を過ぎたのも関係しているんですけど、それは「スターティング・オーヴァー」やり直しや再生の物語が多かったんです。

 

——そうですね。先のインタビューでは「次の世代にバトンタッチしたい」と仰っていましたけれども、この作品を聴いていると、「まだまだ!」という気力に溢れているようにも感じました。

 

リクオ そうですね。「人生これからまだまだトライできるんじゃないか?」とか「やり直しできるんじゃないか?」とか、そういう思いは込められていますね。だから、この作品を作ったことによって「自分自身も再スタートを切りたい」という気持ちがリンクした部分もありますね。

 

——もう一つ気になったのが、この作品は“男女間”を歌ったものだと感じる人が多いようですが、先ほどのお話にもあったように、その相手も人によってその相手を友達や恩人、ペットかもしれないと感じました。例えば、私は特定の男性の代わりに身近な家族や仕事上で知り合った恩人が映りました。

 

リクオ そういう聴き方をしてもらえたら一番嬉しいですね。ラヴソングという形式で曲は書いているんですけど、それは男女間に限ったことではないストーリーだと思って曲を書いていたので、嬉しいですね。

 

——歌詞にもある「君が笑ってくれるから」ではないですけども、リクオさんの存在がエネルギーになっている方も多いかと、ヒシヒシと感じます。

 

リクオ それだと嬉しいです。僕も共感してもらえるから、それに勇気付けられてやっていけてる。

 

——これは余談になるかもしれませんが…「あれから」という曲はポエトリーが入りますけども、湘南住まいとはいえ、イントネーションは関西ですね(笑)。

 

リクオ それね(笑)!育ちが関西なので、イントネーションだけは標準語でやると何故か違和感があるんですよね。

 

——「大阪ビター・スイート」はリクオさんの「大阪ベイブルース」だし。

 

リクオ そうね。ビリー・ジョエルが「Georgia On My Mind」を聴いて「New York State of Mind」を描いたように、自分なりの大阪ソングを描こう、と思ったんですよね。ただ、あの曲に関しては、今自分が大阪に住んでいないんで「大阪を離れた人間が歌う、大阪ソング」と描いてみよう、とういことになった。

 

——リクオさんにとって、大阪にどういう思いはあるんですか?

 

リクオ 仕事でしょっちゅう関西に帰るので、そんなに感傷的にはならないんですけど、自分の中の「大阪の景色」っていうのは、どうしても住んでいた頃の風景なんですよ。それはこれから何度大阪の街に戻っても変わらない。

 

 

リクオ だから、例えばこの歌の舞台にもなっているアメリカ村は、自分にとってのアメリカ村だから、20年以上前のアメリカ村を歌っているんです。今はもう景色も変わってしまっていますけど、やっぱり自分が青春時代に過ごした街なので、あの頃の街の風景が自分にとっての「大阪の街」なんです。

 

——今の住まい(藤沢)に越されたのは?

 

リクオ やっぱり仕事柄東京に住んだ方がいいな、ということで20年前に東京に引っ越ししたんです。元々、海沿いに住みたい憧れのようなものはあったんですけど、たまたま江ノ島の野外イベントに関わることになって、この辺によく通うようになったんです・。

 

——それが「海さくら」ですか?

 

リクオ そうです。そしたら「あれ?ここ(江ノ島)から東京に通える距離だな。」と気づいたし、何より「この町の空気感がいいなあ!」と思って、8年前に東京から越して来たんです。こっちに来た方が、ツアーから帰ってきてもチャージができるんですよね。しょっちゅう海沿いを歩いていますよ。

 

——越してから作品の傾向も変わりましたか?

 

リクオ こっちに来てから初めて制作した「リクオ&ピアノ」っていうアルバムは江ノ島の虎丸座っていうライヴハウスでレコーディングしたんです。あそこにはグランドピアノが2台あって、江ノ島の景色を見ながら、随分とリラックスした状態でレコーディングができたんです。

やっぱり住んでいる環境から影響受けているのはありますよね。どこか心の風通しが良くなった感じがしますもんね。

 

——今作『Hello!』のライナーノーツを書かれた宮井さんもご近所さんですが、こちらへ来てから知り合ったのですか?

 

リクオ そうですね。こっち来てからすぐに「sausalito」っていうアナログ・レコードを聴かせるミュージック・バーで知り合ったんです。こっち(湘南)は音楽好きが集う飲み屋さんが多くて、音楽好きが繋がりやすいんですよね。だから、こっちに来てから飲み屋と音楽を通じて地元の付き合いが増えました。

 

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東京に住んでいた頃は、業界人の繋がりばかりだったので、そこが東京に住んでいた頃と全然違うところですね。今は音楽好きでも音楽とは関係のない職種の人たちとも付き合いができている。そういう付き合いが自分でも気に入っています。

 

——またここでチャージをして、まだまだツアーが続きますね。ツアーファイナルは7月2日に名古屋、3日は大阪、そして10日は東京下北沢、これまた素敵なライヴハウス下北沢GARDENです。

 

リクオ 是非来てください!面白い夜になりますよー!

 

 

撮影協力/WIRED KITCHIN 湘南T-SITE店

 

 

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【リリース情報】

アーティスト:リクオ

アルバム:Hello!

リリース日:2016.04.14

価格:¥2,800+税

 

 

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