2016
09.22
14374793_1156821771074968_526326088_o

ダニエル・マーティン・ムーア『ゴールデン・エイジ』 – 静かに胸を打つ。あまりにシンガーソングライターらしい名作 –

BLOG, RELEASE, VIDEO

ダニエル・マーティン・ムーアの歌を聴いていると、彼が暮らすケンタッキー州コールドスプリングの自然豊かな風景が目に浮かんでくる。遠くに見える山々。乾いた風と草の匂い。町の人口は多過ぎず、中心から少し離れれば街灯で町が明るすぎることもない。昼と夜の区別がはっきりしていて、何より静かだ。

シンガーソングライターという言葉から、あなたはどういうイメージを思い浮かべるだろうか。アコースティック・ギターを抱いて、あるいはピアノの前に座り、胸の内を飾らない言葉で弾き語る。バンドの演奏は音数を押さえた控えめなもので、メロディーは優しく、どことなく淋しげでもある。誠実であること、シンプルであることを大切にしていて、間に邪魔するものがないから、歌い手と聴き手の距離はとても近い。

ダニエル・マーティン・ムーアの『ゴールデン・エイジ』を聴いたとき、これは本当にシンガーソングライターらしい作品だと感じた。ここに収められている曲は、どれも個人的な歌ばかりだ。何かを高らかに主張するものではないし、明快な意味を求められるものでもない。でも、僕にはダニエルの歌っていることが理解できたし、彼がやりたいと思っていることや、これからやろうとしていることまで、わかるような気がしたのだ。

実際には会ったことのない者同士が、音楽を通じて共感し、心を通わせることができるというのは(あるいは、そんな気持ちになれるというのは)、なんと不思議なことであろうか。『ゴールデン・エイジ』を作るにあたり、どうすればより多くの人達と繋がりを持つことができるのかをダニエルは意識した。インタビューでは、これまでよりも「大きなサウンド」を求めたと語っている。そのために導き出された結論が、アルバム全体を包む淡いリバーブなのだろう。掴めそうで掴めない。そんな浮遊感をもったこのサウンドは、まったく違う場所でまったく異なる人生を送っている僕らが、同じ時代を生きているということのメタファーでもある。

 

 

 新しいアイディアが次々と浮かび
 頭の中はこれ以上ないほど明晰だ
 僕達がずっと待ち望んでいた日々が
 今まさにやってきている
       「ゴールデン・エイジ」

 

 境界は消え去り
 こうして薄れていくことを僕は知っている
 もう少しぐらい時間を無駄にしたっていいだろう
 日の光が金色に輝く時のために
       「ハウ・イット・フェイズ」  

 『ゴールデン・エイジ』を聴いていると、ケンタッキーに暮らす青年が抱える郷愁や未来が、日本で暮らす僕のそれと繋がっているのを感じる。さざ波のようなエコーが寄せては返すたび、ダニエルのノスタルジーと僕のノスタルジーは重なり、ひとつに混じり合う。そして、僕らが同じ情感を共有していることに気づくのだ。遠いケンタッキーの情景が目に浮かぶ。それはなんと不思議なことなのだろう。
 

14359871_1156821551074990_1009334813_o

【リリース情報】

アルバム:『ゴールデン・エイジ』(Golden Age)


アーティスト:ダニエル・マーティン・ムーア(Daniel Martin Moore)


価格:2,315円+税


ライナーノーツ:宮井 章裕


歌詞対訳:佐藤 幸恵

<購入・試聴>

Sandfish Records Shop

http://sandfishrecords.shop-pro.jp/?pid=102807268