2016
10.18
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【INTERVIEW】Gi Gi Giraffe 「何で”バンドのライヴ”にこだわっているんだろう。」

INTERVIEW, NEWS, RELEASE, VIDEO

今や音楽活動ツールとしても常識化したSNSは、シーンのしがらみを解釈するには手っ取り早い代物でもある。まずはインスタグラムを覗いてみよう。すると「いいね!してくれ!」と言わんばかりの膨大な“主張の大群”が僕の視覚を襲いにくる。個人の感性のみに従って楽しめば、あながち悪いものでもなかろうが、コメントなぞを通して人間関係が生まれてしまったと同時に、コミュニティによるしがらみとの距離感に少なからずともストレスをかけることになる。しかし仕事には付き合いも大事だ、とやがてコミュニティから抜け出すまいと必死な自分の滑稽さに気づかなくなるのもおよそ時間の問題だろう。いやいやその渦中でウェイウェイするのが醍醐味です——これがシーンの縮図でもある、と僕は認識している。

音楽業界コミュニティの中心地・東京で活動をしている以上、或いは物質的社会で生きる以上は少なからずともそれらとのバランス感覚も必要だろうが、その議論自体が不毛だよと言いたくなるのがこのGi Gi Giraffeという、都内に拠点を置く山本のソロプロジェクトの音楽だ。いやもしかしたら、彼の行動自体がある意味でシーンだとも言えるのではないだろうか。

多くのインディーファンは Gi Gi Giraffeの予測不能で意味不明(わかりやすいイカれたパフォーマンスをする訳ではない)な“インドアロック”のライヴに偶然出会い、その魅力に取り憑かれ、解明しようと試みてしまう。何を隠そう、僕もその一人だ。その山本氏が世に送ると決めた、バンド名をタイトルにした まさに名刺代わりの自主ファーストアルバム『Gi Gi Giraffe』は、地に足をしっかりとつけた後、自らの手で所謂シーンを逸脱し、バランスのとれた選曲やGrage Bandから一歩踏み出して厚みを増した録音/ミックスに至るまで、独立宣言するに相応しい内容であった。そんな今作品の思惑についてぬるりと語ってもらおうと試みたのが、今回の記事である。是非ご一読、ご一聴ください。

photo / 記者撮影

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——新譜の話もそうなんですけど、今年のルーキー(フジロック)に出てから、山本さんにどんなことが起きていて、それに対してどう受け止めているのか、と思いまして。心配半分、でもアルバムの興味も十分。

 

山本 まず今年の目標だった、1月に必要な曲の いくつか はレコーディングするっていうのができた。MVを撮ってくれた人の紹介のエンジニアさんが昔働いていたスタジオを貸してもらったんです。「Naked Girl」も宅録じゃなくてバンドで入れた。前回のインタビューでアルバムのリリースを2016年の春頃って言ったんですけど、それもズレちゃって、夏頃もなんだかんだでできなくて、このままじゃマズいので、11月にやっと決まった。

 

——ズレると「ジジジラフらしい」なあ(笑)。

 

山本 それ、この前俺が遅刻したからでしょ(笑)。

 

——今日は早めに来ていて、びっくりした。

 

山本 本当は真逆ですからね…この日絶対遅れ ちゃダメ っていう時に遅れちゃうんですよねえ(笑)。

 

——そういうのはわかる(笑)。3月の段階でどうしてリリースが長引きましたか?

 

山本 メンバー の 仕事が始まったっていうのが大きいですねえ。今までめっちゃ暇だったのが平日週5っていうペースにいきなりなったから、全然会える日がなくなった。全く練習しないでいきなりライヴとかもしょっちゅうで、この前のパエリアズとのツーマンも、見事にボロボロで。そのせいもあって、いろいろなことを先延ばしにするようになっちゃった。

 

——一方でフジロックの ルーキーにも出たことだし、バンドとして注目もされて来てると思うんだけども、今回の作品も自分で出すじゃないですか。

 

山本 今回は自主で出して、それから次にどうするか決めようって思っています。正直、全然ずっと自主でもいいって思ってますから。「シーン」とかそういうのに自分から乗っかろうとは思ってなくて。

 

——個人的にはアナログでのリリースを切望していますが。

 

山本 CDで売れたらアナログで出そうっていのが結構流行ってるみたいだけど、もし出すとしたらまた自主で出します。僕自身、LPでは聴かないんで、別にどっちでもいいかなって思っていますけどね(笑)。

 

——いつもはどんなデバイスで聴いている?

 

山本 いつもはAppleMusicとかYouTubeで聴いてる。むしろAppleMusicが出て来てからはアルバム単位で音楽を全然聴かなくなっちゃった。数年前まではアナログかじろうって思ってたんですけど、お金もかかるし自分らしくないって思っちゃった。引きこもって一人イヤホンで聴いてるのが自分らしいなって思うんですよね。

 

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山本 今は、CDで聴くっていう人が一番いなくて、アナログを買いまくる音楽好きって人と、YouTubeでチョロっと聴いて今のシーンを知るっていう人とがいる。そう考えたら僕は完全に「シーンを知る側」かもしれないですね。思いっきりパソコンを使っちゃってるし(笑)。

 

——その割にはさ、編集にもちゃんとした音を送ってくれていたよね。

 

山本  流通の人とデータのやりとりをしながら「ここは2 4bitだと再生できない可能性があるから16 bitでください」と言われたりして 「ちゃんとしないとダメだな」って思いましたね。

 

——で、CD時代の人間としてはさ、アルバムが曲間の沈黙やパフォーマンスも含めて楽しみでもあるんです。それがデータとして1曲ずつデータになったものが圧縮されてくると、その辺が全くわからないから、今は少し寂しくも感じるのだけども。今回のアルバムもそう言ったドラマは確認できなかった。けれども、曲順からドラマの意図を感じ取れました。

 

山本 僕は最初、思いっきり“そっち側”だったんです。今回の作品も、僕の作品は曲が短いから繋ぎでクロスフェードや効果音を入れて、ちょっと長めに尺を取れるようにするくらいがちょうどいいって思っていたんですけど、その提案は 結局諦めちゃった 。 とにかく何より早く出したいという気持ちが強くて。フルアルバムで 10曲28分だけど…(笑)

 

——短い!

 

山本 そう、めちゃくちゃ短いんですよ(笑)。だから、 逆に 10曲で28分だけど曲が終わったらすぐに始まるようにしよう、っていう感覚で曲を詰めた感じですね。

 

——それは楽しみだ!ワイルドに切り込んでいって、凛々しく尖ってる。

 

山本 わはは(笑)、でも今は全然ですけどね。

 

——最後は静かにシメるんですね。

 

山本 はい。でもこれは僕じゃなくてメンバーの意見なんですよ。ドラムがあの曲「Birdcage」を個人的に好きで、ああいうアコギの落ち着いた曲がアルバムの全部が終わった後に流れるっていう感じ、よくあるじゃないですか。そういうのを演出したいっていう希望があって、そうしようってなった(笑)。で、 その通りに アルバムの終わりに7秒くらい空白を入れてからその曲を入れたんですけど ね …ぼくは、この曲は別に特別好きじゃない(笑)!

 

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——アルバム用に曲を作ったっていうことは?

 

山本 僕のデモは60曲くらいあるんですけど、それを投げて、その中からアルバムに入れる曲を全部決めました。60曲って言っても、未熟な曲もいっぱいある。別に僕が曲作りの天才だってわけじゃなくて、とりあえずめっちゃ作ってみて、そこからピックアップして、手の込んだアレンジをしてからアルバムに入れているだけ。

 

 

山本 多くの人もそうだと思うんですけど、大事なのは”すごい曲を作 れる か作れないか”じゃなくて、とりあえずたくさん曲を作った後に、どれを表に出すか出さないかっていうことが大事かなって思う。そん中で「Naked Girl」とかは本当に出すべき曲だと思った。そういうのばっかりを入れたアルバムにしたかったんだけど、何曲かはメンバーが入れたいっていうから入れた、っていうのも正直ありますね(笑)。

 

——『Home Made Works』に入っていた「Tweet Like A Bird 」も、いびつなテクスチャがなんとも素晴らしい曲だと思うのだけど、それは今回のアルバムに何故外した?

 

山本 あの音源自体は僕も好きなやつなんですけど、あれを録音でもう一回再現するのは絶対無理で、だからと言ってもう一回同じ音源を出すのもまた違うから、実現の可能性をみてアルバムに入れるのを断念したんです。

 

——宅録プロジェクトだと、幻の名曲化もあるのか…。

 

山本 あれ(Tweet Like A Bird )は、田中さんみたいなコアなファンの方だけが知っている曲になるわけです(笑)。

 

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——レーベルにこだわりはない?

 

山本 レーベルのこだわりは本当にないですね。元を辿れば、自分の狭い部屋でグチャグチャやって出来たものが、どうして世に出ることになってんだ?っていう感じで(笑)。

 

——このまま自主レーベル文化が育つのもまた楽しみですね。

 

山本 そうですね。僕らの音楽をパクってくれるバンドがいたらいいなって思うんですよ。そしたらそういう人たちと仲間になって、そういう風になったらレーベルやろうってことにもなるかもしれないです。

 

 

山本 今は自分たちの音楽がどういう風に聞こえているのかも想像できない。誘ってもらうイベント(10.1のビートマとか)の対バンとかを見ていて思うに、多分僕らは“ポスト・シティポップ(シティポップ後のシーン)”〜って括りになってるんじゃないかとは思うんです。そういう風に見られても全然いいんですけど、逆にもっと孤立しててもいいのかな、とも思う。

 

——インドアパンクのようだよ、Gi Gi Giraffe。部屋の中で一人でローファイに発散している。

 

山本 そういう感じですね。自分のフラストレーションを自分の部屋の中で発散している。

 

——但し、人には迷惑をかけない。

 

山本 そうそう。部屋でフラストレーションを生んで、そこで発散。

 

——そうそう。昔のパンクとは違う、ワンルームパンク。

 

山本 一見ほとんどパンク要素がない。音楽的にはちょっと変わってるけど、別に激しいことはしない。

 

一同笑

 

——でも今回、サウンド面でダイレクトな“山本式ギターロック”みたいな曲も入っていて、バラエティに富んでいる印象も強い。

 

山本 僕はTempalayの『from JAPAN』が、今年のインディーで一番じゃないかって思っているんです。本当に音もめっちゃ凝っていて、曲の完成度も高くて真似できないと思った。でもそういうのを聞くと同時に「僕はそういうのをやらなくていいんだ」って安心もできたんです。だから、今回の自分のアルバムは、逆にまとまりもなくてすぐ終わっちゃうような曲ばっかりにしたら面白いんじゃないか?というコンセプトで作った。

 

——メンバーが忙しくなったら、例えばリリースツアーも組むのが大変でしょう。

 

山本 そうですね。現段階で決まっているのはリリースパーティくらいですかね。日にちが決まったくらいであとは何にも決めてない。僕らは積極的じゃないし、めちゃくちゃ低空飛行系のバンドだから。

 

——それが良さでもあると思うけどもね。

 

山本  でも 低空飛行しすぎると何もしなくなっちゃう(笑)。

 

——一時期は金管楽器を買ってジャムにハマっていたけども、あれはどうなった?

 

山本 ジャズブーム的なことはまだ続いています。思えば、僕は2013年までと2014年以降ですごい趣向が変わったんですよね。2014年にはジャズにハマって、いわゆる黒人音楽的なものにすごく惹かれるようになった。今は世界的 に ラップ が ブームだと思うんですけど、時代的にもそういう 黒人っぽさが始まっていくっていう読みは間違ってなかったなあって最近ふと思いますね。

 

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山本 それで、今はノリのいい音楽を好むようになっていって、今回のアルバムには「Daisy」みたいなロックもありますけど、リスナーとしてはこういう普通のロックはあまり聴かなくなりましたね。単純にロックというものから離れた。今日聴いて た の も 別に歌とか入ってないファンク。でまあ…サックスは全然吹いてないっすね(笑)。

 

——買ったのに。

 

山本 いやね、 うちのベースもサックスを買って、ベースの方がうまくなっちゃったから(笑)。

 

一同笑

 

——リリースパーティや今後のライヴではどんな構想を?例えばビックバンドとか。

 

山本 やってみたいですけどね。アイディアとしては浮かぶんですけど、実際にどうなるんだろう。話し合いをして、無理だよってなって、結局やんない流れがずっと続いてきた。

 

——その場合、「無理だよ」っていう人は大体決まってるんじゃ?

 

山本 いや、大体自分で提案して、周り に 「じゃあどうすんの?」って訊かれて、俺が「 じゃあ、無理だな」ってなる(笑)。

 

一同笑

 

山本 メンバーが増えるとそれだけ合わせにくいし、スケジュールも。でもまあ、今回は3人っていうことでやってるんですけど、実はサポートメンバーを2人増やしているので、今後は5人になるかもしれません。

 

——どのパートが増えました?

 

山本 今のところはアコギとコンガ。本当はシンセも入れたいんですけどね。でも「何で入れたの?」って訊かれるとあんまり意味はなくて、ただ単に大勢でのバンドがやりたかった。サックスとか入れるのはまだ難しいかな。

極端な話、アメリカでいうとジャック・ホワイトみたいなことがやりたい。大抵のバンドは曲を曲通りに演奏して、綺麗なまま終わるっていう流れで、ライヴによく通う玄人リスナーは「ライヴの完成度の高いバンド 」 を“良いバンド“って 呼んでいると思うんです。でも僕の場合は 、ジャック・ホワイトみたいに原曲通りに全然やらないで、その場で曲の構成とかも全然変わっちゃって即興的なライヴ。ステージ上で「何やってんだ?」っていうものがやりたい。

 

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山本 何で「バンドのライヴ」にこだわっているんだろう。どうしてステージ上で「バンドのライヴ」をやっちゃうんだろう…僕らもバンドですけど、もう少しオカシイことをしてもいいんじゃないか?って僕は思うんです。

 

——当然ながら 同じライヴには二度と出会えない。読めないスリルも含めてね。

 

山本 そうそう。「この前 メンバー あんなにいたのに、今日は一人じゃん!」とか(笑)。普通 、バンド って他の日も あんまり変わらないセトリでライブをやるじゃないですか。その流れが僕自身は全然楽しいと思えないんですよ。

 

——新しい大きな出会いのため?

 

山本 そうなんです。布教活動みたいなのも含めて。 誰かがツイッターで前に僕らについて書いてくれたんです。「ジジジラフはふらっとライヴハウスに寄った時になんだこれ?って思えるようなかっこよさがある」って。嬉しかったんですけど、そんな感じになってったらいいと思っています。

 

 

【リリース情報】

アルバム:『Gi Gi Giraffe』

ア ーティスト:Gi Gi Giraffe

リリース日:2016/11/16

価格:¥2,160(tax included)

レーベル:gigigiraffe(自主)

 

【Gi Gi Giraffe プロフィール】

東京出身のフロントマン山本KUによる宅録プロジェクト。

2013年から宅録をスタート。Mac付属のGarageBandのみを用いておよそ60曲以上のデモを作り上げる。初の自主制作盤となる”Home Made Works”を2015年8月にリリースする。

その後はメンバーを集めて、シンプルな3ピースバンドとしてライヴ活動を開始。今年の7月初めには、リードトラックである”Naked Girl”のMVとフジロック・フェスティバル’16の「Rookie A Go-Go」ステージ出演を同時発表した。

The Novembersの小林祐介氏も「素晴らしい」とコメント。今回のアルバムは、バンド編成でスタジオで同時録音したものと、山本自身が自宅のGarageBandで制作した音源の両方を混ぜて完成させたものである。

twitter:https://twitter.com/gigigiraffeband