2016
11.09
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【INTERVIEW】Akiyoshi Yasudaが★STAR GUiTARを脱いだ理由

INTERVIEW, RELEASE, VIDEO

“未来”だらけのデビュー作『Carbon Copy』から6年、エレクトロニカのプリンス★STAR GUiTARが本名名義(Akiyoshi Yasuda)で提示したのは、これまでの作風からは想像もつかない“未来”だった。

本作はまずノイズが聞きどころ、といっても従来もてはやされてきたアンビエント風、或いは音響派的要素の強い作品とは明らかに別の角度から作られていることがわかる。当然ファッション性とも程遠く、Akiyoshi Yasuda自身の原点に基づいた未来の設計図、今時風に言えば下町ロケット的なサイエンティフィックミュージック群だと言えるだろうとも思う。

今回リリースされるのはハイレゾ配信で、音質を重視してiTunesでのリリースはない。しかしいくら音楽好きだといっても、例えば数万円もするハイレゾ対応ヘッドフォンやイヤホンに費やせるリスナーは限られてくるだろうし、そうしなければ楽しめない音楽を面倒がる人もいるだろう。でも僕は、この一見客を選びそうな本作品『alter ego』を 例えば電車通勤中にiPhone付属のイヤホンで音楽を楽しんでいる学生の皆さんにこそ聴いてほしいという期待をどうしてもしてしまう。音質ってなにそれ美味しいの的な皆さん、まずはこの作品をお手持ちのデバイスで、全神経を研ぎ澄ませて聴いてほしいのです。確かに作品を聴いてもらえれば私の仕事としては成功ですが、そういった思惑を抜きにしたとしても、です。何故ならファッションでもダンスでもない、上下左右縦横では説明のつかない音楽の明るい“未来(Future)”が、この暗い作品の中で確実に鳴っているのだから。

 

photo / 記者撮影

 

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――今作『alter ego』は是非出来うる最高の環境で耳を澄まして楽しみたい作品ですけども!

 

Yasuda そんな作品を作りながら、実は普段は自宅の近くを電車が通っているので、結構うるさい中で過ごしているんですよ。でも、そういうこともあって音は出し放題っていうこともありますけどね(笑)。

 

――普段からノイズとともに生活をされているわけですね。

 

Yasuda そうですね(笑)。

 

――そのノイズが効いた表現を最大限に楽しむために、今回はiTunesでの配信もやめて、音質にとことんこだわったわけですが、聴けばとてもよく理解できました。

 

Yasuda そうですね。さっきのノイズもそうですけど、そこまでこだわって作ったので、もし可能ならできるだけ解像度を落とさないで聴いて欲しいですね。落としても音楽としては楽しめるけど、どんどんファイルを下げるほど僕が最初に聴いている音(作品)とはやっぱり違うものになってしまう。

 

――ノイズだけでなく、様々な質感の音がどこからどのように聞こえてくるのか。それらを脳内で組み立てられて、音が立体的に構築されている空間を耳から想像力を掻き立てて楽しむ。この試みは四次元的な感触ではなかろうかと。

 

Yasuda おお、初めて言われましたね(笑)。とにかく今回は雑音がグルーヴする音楽を作りたかったんですよね。

 

――それはどういったきっかけがあったんですか?最近の ★STAR GUiTARとしての活動で言えば、制約の中でこそ力を発揮するプロジェクトや名手とのコラボレーション。そこからどう変化しましたか?

 

Yasuda 個人的にはどんどん自分自身のルーツへ戻っている感覚ですね。でも実は最初、音楽的に別のことをやろうとしていたんです。それが、実際につくってみたらすごい偽物っぽくなっちゃった。なんか違うなって思ったらもういいや、好きなことやろう!って開き直ったっていう。でも、それをやるのは煌びやかなイメージの★STAR GUiTAR名義じゃないだろうな、と。

 

――それはいつ頃のことですか?

 

Yasuda 作品を作ろうと思っていたのが2015年の年末のことなんですけど、出来たものは★STAR GUiTARを変に意識してるし、薄っぺらいというか…そんな音楽を一度作ってしまって、そもそもそれを作ろうとしているのが違うんじゃないかと思うに至った。それが2016年の頭。

だから、今回の作品はスタッフにも誰にも言わずに勝手に路線を変更したものを1曲じゃなくてアルバムが出来上がってしまった段階でいきなり出しました。

 

――担当の方はまずどんな反応をされましたか?

 

Yasuda え?みたいになってましたよ(笑)。全然違うことをやり出したぞって。でも、僕は自分のやっていることがわかっていたので、これを出せたら出したいけど、ダメならダメでフリーダウンロードでもいいやっていうくらいの気持ちだった。ただ、自分はこれが作りたかった。

 

 

Yasuda しかも、普段はある程度スタッフの意見を聞くわけじゃないですか。もっとこういう曲が欲しいって言われれば、なるほどねって。でも今回は誰の言うことも聞いていない。

 

――それが本名(Akiyoshi Yasuda)で出す本当の意味ですね。

 

Yasuda 自分の覚悟も含めてね。プロジェクトではなく自分の作品として。唯一スタッフの言うことを聞いたのは、もうちょっと長く聴きたいって言う曲を伸ばしたくらい。それが「y」という曲。

 

――それ(「y」)はご自身のイニシャル?

 

Yasuda そう!それは言われると思ったんですよ!

 

――ええっ?”y”と”a”があれば普通は。違うんですか?

 

Yasuda 違うんです(笑)!全然関係ないんですよ。今回はなんの意味もないです。そこに意味をもたせたくなかったので。

 

――いつもは全てに意味があるのに。

 

Yasuda そう、いつもは裏の裏まで意味があったんですけど、そう言うのを一切排除したかったので。逆に今回は追求されると困るくらい。

 

――それなら、例えば結果的に「y」とつけたのは?

 

Yasuda とりあえず名前をつけないとセーブができないからつけた、仮タイトル!しかもその時にはAkiyoshi Yasudaで出すことすら決めていなかった。曲順も本当にただ並べただけ。絶対に理由を訊かれるなって思いながらも、本当に何にも意味がない(笑)!

 

――そうだったんですね!その「y」ですが、もしかして冒頭からノイズが入っていますか?この音はなんでしょうね、微かなボアボアとした…

 

Yasuda それはこの辺の音ですよ。加工はしていますけど、唯一ノイズ系は全部デジタルじゃない方法―しかもiPhone6で録音されたものです。朝、昼、夜、晴れ、雨…何回かに分けて録りましたよ。

 

 

――それは全然予想していなかった!リズムに関しても驚きました。1リスナーとしては★STAR GUiTARというアーティストの持つリズムはものすごく幾何学的な印象で、ご自身の中で良しとするリズムの「型」がある方だと思っていたくらいでしたが、その辺の印象も覆すような。

 

Yasuda そうですね。★STAR GUiTARはもっとカチカチ作っていましたけど、今回は本当にただの「音」なんですよね。基本はピアノと弦とノイズを含む音。リズムには多少ヒップホップぽいところも出ているのかな。それでアンビエント。

 

――アンビエント。この言葉がジャンルとしてポピュラー化された今、その言葉を軽く出せないくらいの緻密な立体性。ラストの「standalone」も…あれは一体どうなっているんですか?

 

Yasuda あれはね…線路で夜中に線路の点検とか工事をやっているでしょ?その時に走っているヤツが割と変な音を出すんですよ。もちろんそのまま入れているわけじゃないけど、その音自体がなんなのかわからない音を示しているんですよね。

 

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――私としては環境音楽にも隣接しているような気がしているんですね。

 

Yasuda サウンド・トラックにも似ているのかな。映画「ソーシャル・ネットワーク」のサウンド・トラックが好きなんです。トレント・レズナーの作る音が好きで、あの人のノイズの入れ方がすごく好きなんです。

 

 

――そこから環境音楽を連想させるところもあるのかもしれませんね。ちょっとおかしな質問で申し訳ないんですけれども、4曲目の「lifeis」。例えばあの曲の制作では何かありましたか?

 

Yasuda いや、何も(笑)。でも僕はあの曲が一番好きですね。「lifeis」は暗くて平坦な曲ですけど、移動中なんかに聴くとすごく生きてくる曲だと思うんですよね。僕の奥さんもあの曲が一番好きだって言ってくれました。

 

――そうだったんですか!あの曲を聴いている時だけ、なぜか右肩の神経に反応があるんです。不思議なんですけども、何度試してもその曲が始まると反応して、次の曲に行くと治まる。

 

Yasuda もしかしたら周波数の影響かもしれませんね。

 

――なるほど!そういうことですね。この作品を作り終えてから心境として変化はありましたか?

 

Yasuda これからもっと追求しがいがあるなと思いましたね。もっと弦をフューチャーしたいなとも思いました。

こういう音楽を作っているくせに僕自身が今まですごくデジタルで作ってきたんですよね。ピアノも全部ソフトシンセだけど、みんなが生だと思っていることが多い。だから今回の作品を作っていて、逆にノイズが生だっていう不思議な感じもありましたね。

 

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――先ほど「どんどん戻っている」と仰いましたけども、それは★STAR GUiTARの前、ということですよね?

 

Yasuda そうです。

 

――デビューが2010年ですね。

 

Yasuda ★STAR GUiTARのデビューはそれくらいですけど、最初のアルバムの収録曲はその前から出来ていた曲が多いです。

 

――例えば「Future」はどれくらい前の曲だったんですか?

 

Yasuda 原型は二十歳くらい(2003年)です。その後2008年くらいだったかな、今のレーベルの方がmy spaceでいきなりメッセージをくれたんです。その時あげていた曲は「Future」と「君はスナイパー」かな。あとは「未来リアル」の原型とか。

 

 

――その前っていうのがね、本作を聴いていてすごく気になったんですよね。★STAR GUiTARとは別の部分はどこから?と。生まれてきてから★STAR GUiTARになる前のお話が聞きたい。

 

Yasuda 僕はずっと暗い感じですよ(笑)。幼稚園とか小学校の頃はものすごい病弱で、リンゴを擦ったものしか食べ物として受け付けないくらい。

母親が音楽の先生をやっていて、無理矢理ピアノを習わされそうになったんですけど、それを拒否したんですよね。まさか自分が今音楽をやっているとは…。今思えばあの時やっていればよかったですね。

 

――ああ…でも、やっていなかったからこその★STAR GUiTAR。

 

Yasuda そうですね。あの時やっていたら、今音楽をやっていなかったかもしれませんね。

 

――以前のインタビューで、人の演奏で起きるズレが許せなかったと仰ってたじゃあないですか。その感覚にも興味があります。音楽はどんなものを聴いて育ったんですか?

 

Yasuda 最初は小室哲哉さんですけど、そこからはエニグマかな。確かセカンドの『Cross Of Changes』を先輩から教えてもらったのが衝撃で、そこからオウテカも聴きましたね。

今まではこういうことをしたくても、もともと楽器ができる人でもなかったんで、それができなかったんですよ。ドミソをどうやって弾くとちゃんと響くか―そういうことをH ZETT Mさんやfox capture planのメルテンくんとかが実践しているところを見て、なるほどなと思ったんです。そういう感覚を試したのが『Wherever I am』と『Wherever You are』の2枚。

 

 

そうなっていくと、昔から好きだったオウテカとかレディオヘッドの『KID A』とかとリンクするような、ちょっとアンビエントとかダウンテンポとか言われるようなものができるんじゃないかと思うようになった。ここ2~3年で自分自身の趣向も変わっていったし、それからどんどんインストの方に入っていったんですよね。

歌が嫌いだというわけではなくて、今はどれだけ自分が楽器を使えるのかをやりたいし、ましてやAkiyoshi Yasudaだと誰もフューチャリングしない。そういうことは★STAR GUiTARの時には思ってもいなかったことです。誰かの力を借りなければできなかった。それに今、我欲も強いんだと思います。自分一人でやりたいっていう欲がすごくあるんでね。そういう気持ちは『Wherever You are』くらいからどんどん増えていますね。ただ★STAR GUiTARに関してはコラボレーションを排除しちゃうと面白みに欠けるので、それはまた別の話ですけどね。それでもフューチャリングは極力外すようにしていたし…。フューチャリングでないと成り立たない音楽は作りたくなくなってきた。自分があってエッセンスとしてならいいんですけどね。

 

――「なりたい、理想の自分ではなく、ただここにある自分」が今作のキャッチですね。「なりたい自分というのは、具体的にどういった自分でしたか?

 

Yasuda これまで出していた音が本当に近いと思うんです。キラキラしたい、とか。そういう“憧れ”のようなものが★STAR GUiTARには詰まっているんですよね。それは理想形として良いんだけど、自分自身はそこまで煌びやかでもない(笑)。そのギャップも含めて、どっちもあっていいのかなって思うんですよね。

 

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――ずっと潔癖な方かと勝手に思っていたので、今作は本当にびっくりしました。

 

Yasuda わはは!僕が好きなのは、キレイなものといびつなものが同居している感じ。ここまで振り切れると、逆になんでもできると思うんですよね。★STAR GUiTAR自体が変わってきているから、もしかしたらファンの方は「また違ったことやってるよ」くらいにしか思わないかもしれないですね。「挙げ句の果てにコイツ、名前まで変えてきたよ」って(笑)!だから、ファンの人は僕がどんどん変わっていくのを楽しんでくれるんじゃないかとも思うんですよね。あと2~3年したら逆に絶対に歌ばっかりになるよって関係者の方々には言われています(笑)。

 

 

――今後のAkiyoshi Yasudaとしては?

 

もっと映像的なところと繋がれるといいなあと思いますね。★STAR GUiTARからしたら想像もできないようなことをしたい。

 

――これからはAkiyoshi Yasudaから★STAR GUiTARを知るっていうこともありますよね。

 

Yasuda はい。Akiyoshi Yasudaとして知っていて、ふとしたことで知るっていうことがあるかもしれないですね。

 

――今現在としては★STAR GUiTAR 、SiZKそしてAkiyoshi Yasudaでは、どちらのスタンスで考えていることが多いですか?

 

Yasuda そうですねえ…アーティスト(Akiyoshi Yasuda)としての自分の方が強く…ありたい。そうだといいなあ、簡単にはいかないけれど。

 

――ライブとしては?

 

Yasuda 僕がいなくてもできるライブが理想ですね。作品として見せられるものがあればね!

 

 

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【リリース情報】

アーティスト:Akiyoshi Yasuda

アルバム:alter ego

価格:¥1,800+税

 

 

Akiyoshi Yasuda Web

http://www.studioselfish.com/