2016
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【INTERVIEW】岡田徹、初の全曲歌モノで魅せた現在の「自画像」に迫る

INTERVIEW

セルジュ・ゲンスブールとフランス・ギャルというキーワードが「人ごみの中のお化け同士」という曲のイメージを明るみにするだけでなく、実はセルジュ・ゲンスブールという人物から滲み出る雰囲気そのものが岡田徹氏から漂うロマンティックでモダン、ユーモアに溢れていて、癖の強い——日本ではなかなか流通しない特殊なチーズのような香りとどこか被った時、一瞬ドキリとした。ほんのりエロティックな趣も、しなやかなメロディーが粋にまとっては僕らをフフフとにやけさせてくれる——そうだ、僕らが憧れた“大人のニオイ”はこの香りにきっと、似ている。

でもそれに気づいたのは、実際にお話を伺ってから数日経ってのことだった。緊張で完全に硬直していた僕は、不覚にも現場では全く気づけなかった。

ただ、親子ほどの歳が離れた僕が唯一このインタビューを通して作品を読み取れたことは、この『Tの肖像』には1970年代から現在までの様々な音を扱ってきた音楽家・岡田徹の肖像というだけでなく、男性として、また父としての岡田徹の「肖像」をも映っているであろうことだ。自身が作詞を手がけた「sofa」の詞の中では、なんと未来の肖像まで描こうとしている。なんと凛々しいお方だろうか。

本作の一曲目「しっかり!ダイナモ!頼むぞ!バッテリー!」は、かつて「夕方フレンド」のデモとして出された曲だったそうだ。当時は結果的にお蔵入りとなってしまったが、その曲を気に入っていた岡田徹が今、この年になってベストタイミングでのリリースを飾ったのだった。

少々珍しいくらいのどどど直球のメロディと鈴木慶一氏の歌詞が、互いのケツをそれも愉快爽快に叩きあっているように聞こえる。“残量はまだまだだ、漕いで燃え尽くす”ようでもあり、力が漲る。

だから今回僕は、このアルバムを「岡田徹」という偉大な音楽家を説明するためだけでなく、激動の(音楽業界)時代を進行形で駆け抜けている一人の“生ける自伝”としてもおすすめしたいと思う。僕らがこの“すごいオジサン”のストーリーを耳で読んだ時、迷わず「自信」ではなく「勇気」と組んでペダルを踏むことができるだろう。

 

photo / 記者撮影

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——今回、姫乃(たま)さんがツイッターで岡田さんの楽曲に参加したことを「恐れ多いを通り越して恐ろしくないですか?」とツイートしていましたね。

 

岡田 ははは、だいぶ前だけどね。

 

——ムーンライダーズ時代の曲と新曲がちょうど半分ずつで構成されていますが、例えばムーンライダーズを知らない人が聞いたとしたら、全て新曲だと錯覚してしまいそうになります。それだけ鮮度が落ちないメロディー。

 

岡田 みんなそうだと思うけど、モチーフみたいなものを結構貯めて持っているんだよ。今回はその中から相棒の(佐藤)優介くんと選んだんだよね。

 

——その佐藤優介さんと共同プロデュースとのことですが…

 

岡田 2016年の3月くらいにソロアルバムをやりませんか?とウルトラ・ヴァイヴサイドから話をもらったんだよね。僕は最初、レア・トラック集みたいなのを作ろうと思っていたんだけども、そうじゃなくてシンガーソングライターとしての岡田を前面に出した歌モノをやりませんか?と言われた。そういえばそういうのがなかったなぁ、やるなら今のうちにやらないと声が出なくなるぞ!と思ったの。

山本精一さんと優介くんからも「絶対歌モノを聴きたい人がいるからやるべきだ」と言われて、最終的にはその2人に背中を押された感じです。

俺の歌なんか聴きたい人がいるの?って訊いたら絶対いるって。結果から見ればその二人が聴きたいと思っている歌を引き出された感じだな。

 

——個人的な趣向で申し訳ないのですが、私は(鈴木)博文さんとの「さよならは夜明けの夢に」のメロディがなんとも好きで。イントロから個性的でロマンティック。この曲が1977年、つまり私が生まれる前に作られて、今このアルバムに収めても岡田さんの作る楽曲としてあげるべき一曲だと思える存在感。

 

岡田 この曲が好きだっていう人が多いよね。イントロはね、僕でもよく思いついたと思うよね(笑)。とんでもないメロディーだよね。あの頃の自分を褒めてあげたいよ。

 

——これまでの岡田さんの作品といえば、例えば架空映画音楽集シリーズに代表されるように、現代ポピュラー音楽のアイディア集のような引き出し満載の作品が多いイメージですが、他にも「ウェディング・ソング」や「週末の恋人」など、これだけの名曲がありながら、ソロとして歌ものメインとなる作品がなかったことは、本当に盲点だったな、と。

 

岡田 そうだよね、その中に歌モノが潜んでいる感じだったものね。

 

——「週末の恋人」に至っても、ソロ作品ではピノキオPさんと作られたりしていましたけども。

 

岡田 ピノキオPさんとのを聴いてからムーンライダーズの「涙は悲しさだけでできてるんじゃない」を聴いて「泣きました」っていう人がいたね。

 

——アルバムタイトルの『Tの肖像』は『(岡田)徹さんの肖像』という解釈で合っていますか?

 

岡田 そう。このタイトルに引き寄せられるように、段々作品も脚色されていったというかね。

 

——13(曲)の肖像画。これまでの岡田さんの姿や今の岡田さんだから実現した曲も印象的です。例えば、姫乃たまさんが作詞&ヴォーカルで参加された「人ごみの中のおばけ同士」。おそらく姫乃さんから見た岡田さんではないかと。

 

岡田 実際ボクは半分くらいセブンイレブン(コンビニ)で体ができているだろうからね(笑)。初めて詞を目にしたとき「ああ、これは俺だ!」って思ったよ(笑)。

彼女には、フランス・ギャルとセルジュ・ゲンスブールがデュエットしてる感じって大雑把にオーダーしたら一言「わかりました」って言って作ってくれたんだよね。出てくる言葉がまた面白いよね。一番最初に「ワンカップ」って出てきた。

 

——その昔、ムーンライダーズではバケツなどの後ろを叩いておられたりしましたよね?そのオマージュでもあるのでしょうか?タイトルも「いとこ同士」とかけているとか。

 

岡田 昔はやっていたね。でも、それは知らないと思うよ(笑)。取材してないからわかんないけど。姫乃さんはね、優介くんの紹介。優介くんは「君とジョルジュ」っていうユニットをやっているでしょ?それで優介くんの方から推薦をしてくれたんだ。

 

——柴田聡子さんとも共演されています。

 

岡田 柴田さんとはya-to-iで一緒に演ってるからね。やっぱり柴田さんの発想と声が好きです。もともと柴田さんと演った曲(「オーロラ見るまで眠れない」)はya-to-iの次回作として作られたモチーフの一つだったの。だから自然と柴田さんが詞をやって、山本さんがギターを演ったの。

 

——出だしの歌詞も含め、かなりのインパクトがありますよね。

 

岡田 うん。ああいう歌から出る曲がやりたかったんだ。

 

——ya-to-iから見える岡田さんも「肖像」として漏れなく収められている感があります。

 

岡田 最初はピアノ弾き語りだけでいこうと思ってたのが、段々と「こういうのもあった方がいいよね」となって、こういう感じになっていったんだよ。

あの「人ごみの中のおばけ同士」もそうだよ。こういうモチーフがあるんだけど…って言ったら、優介くんが乗ってくれた。

 

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岡田 優介くんとは小泉今日子と二階堂ふみ主演の『不機嫌な夏』という映画の主題歌を一緒にやった時に「この人とは合うなあ」と思ったの。で、今回誰かと組みましょう、という話になった時には真っ先に彼の名前が浮かんだ。

これまではソロアルバムを作る時に自問自答してきたやりとりだったのが、彼とのやりとりになってくる。「このタイプはあったほうがいい」とか言ってくれたりして、すごく楽な部分があるわけ。

今まで全部自分で決めてきたから、委ねたことがない。だから、今回は委ねる気持ち良さも体験できたね。

 

——作詞もされた山本精一さんにも触れておきたいです。

 

岡田 山本精一さんには、もうだいぶ前から詞を書いてくださいってお願いしていたの。で、彼は人のために詞を書いたのがこれが初めてだって。デュエットもしたよ。Bメロに至っては山本さんが歌ってるんですよ。

 

——そうなんですね!

 

岡田 もしかしたらクレジットはコーラスになっているかもしれないけど、Bメロのヴォーカルなんですよ、加工もしてるけど。

 

——そして衝撃だったのが、井手ちよの(3776)ちゃんとの…

 

岡田 あ、マスカット(「マスカット ココナッツ バナナ メロン」)?

 

——あれは問題作でしょう!ムーンライダーズファンが聴いたらどう受け取るか!

 

岡田 あれは衝撃でしょう。全く二人が噛み合ってないからね。そこが面白いんだよね。

 

 

——これは3776プロデューサーの石田さんがトラックを手がけられたとか。

 

岡田 そう。トラックをお願いして僕がピアノを加えたりとかしたの。

 

——シングルカットのバージョンで繰り広げられる攻めまくりのセリフは、ちよのちゃん発信ですか?

 

岡田 ちよのちゃん発信じゃないかな?プロデューサーの石田さんが彼女に好きに喋らせたのを選んだんだよ。

 

——「酔ってんの?」って!

 

岡田 「心肺停止!」とかね(笑)。面白いよね。

 

——この曲、元々は20〜30代のセクシーな女性をイメージした曲ですが。

 

岡田 今まではカバーも含めてそういうイメージだったんだけど、僕はそうじゃないものが作りたかったんだよね。今までのものを全部跳ね飛ばすような、おじさんの妄想が大気圏に飛んでいっちゃうような…そういうキャラクターがいいな、と思った。

 

——今の岡田さんだからできる作風でもありませんか?

 

岡田 そうだね。50代くらいだったらちょっと考えちゃう。大丈夫かな、中学生に対して…とかって(笑)。

 

——そうですね(笑)。歌詞から言えば“熟れすぎる前の果実”は罪の香りが倍増です。3776とはどんな出会いでしたか?

 

岡田 3776との出会いはスタッフから。衝撃的な子がいないかって訊いたら、富士山のアイドルがいるって。よく考えたら“3776”って富士山の標高だし、いろんなことを富士山に引っ掛けてて面白い。

 

——細かいギターのカッティングは?

 

岡田 あれは石田さん。石田さんのマークみたいなやつ(技)だよね。で、後半の激しいカッティングは山本(精一)さん。

 

——それらが不思議とエロティシズムを掻き立てているというか。ロマンティックなメロディにさりげなく含まれたユーモアとエロティシズムは、岡田さんという大人への憧れをも抱いてしまいます。

 

岡田 あんのかな?エロはわかんないけどな(笑)。

 

——そして岡田さんは今回、なんと作詞をされたんですか?

 

岡田 「sofa」ね。

 

——岡田さんはムーンライダーズ初期に詞を書かれて以来、作詞をされていませんよね?だからこそ鈴木博文さんとのコンビが生まれたと言ってもいい。

 

岡田 そう。「ウェディング・ソング」とか「あの娘のラブレター」とか「紅の翼」くらいまではやっていたけど、書かなくなっちゃった。今回はタイトルと1番まで書いてから、あとは覚和歌子さんに投げちゃった(笑)。だって、みんなが「シンガーソングライターは詞を書くんだぞ!」なんて言って、書けっていうから(笑)!

 

——久々の作詞はいかがでしたか?

 

岡田 “sofa”ってパッて思い浮かんでから、割とすぐに書けたよ。でも、一番までで止めて、あとは委ねた(笑)。

 

——これは驚きましたね。もう一つ驚いたのは、インストの名曲に歌詞がついたことです。

 

岡田 ああ「月面(讃歌)」ね。これはね、曲を作っている当時から歌詞をつけたかったんだけど、あれはインストで行こうって当時のプロデューサーが言ったからインストのままだったんだ。

 

 

岡田 角田(陽一郎)さんがこれに是非詞をつけたいって言ってくれたんで、お任せしたんだよね。彼はTBSの番組「オトナの!」のプロデューサーですね。

 

——角田さんは頭の半分がムーンライダーズでできていらっしゃると公言されている方ですね。

 

岡田 いや、7割だよ(笑)。

 

——7割!もっと、でしたね。「月面讃歌」もムーンライダーズを代表する1曲だと思うんです。ソロ作品でも登場されていますし。

 

岡田 今回もね「どれだけ(「月面讃歌」が)好きなの?」とか言われちゃったんだけどね、指摘されるまで意識してなかったんだよ。

 

——あの曲はもともとアルバム『月面讃歌』10曲目の「服を脱いで、僕のために」の間奏が独立してできた曲ですね。

 

岡田 そうそう、かしぶち(哲郎)君作曲のね。確か慶一君が言い出したのかな。あれも良くない?1曲目の慶一くんが書いているやつ「しっかり!ダイナモ!頼むぞ!バッテリー!」。

 

——はい。本アルバムは出だしがいきなり鈴木慶一さんとのコンビから始まります。

 

岡田 個人的にはこれが一番思い入れがあるの。みんなの応援歌でもあるし、俺の応援歌でもある。(ギルバート)オサリバンの「アローンアゲイン(ナチュラリー)」みたいな、歌いっぱなしの曲をやりたかったんだよね。

これは音数が多いから割とそういう詞が書けるじゃん?実はこの曲のPVも作ってるんだよ。

 

 

岡田 このPVを作ってくれている監督がすごく気に入ってくれて「是非これをやりたい!」って言ってくれた。「こんな若い子にそんなにうけてくれて嬉しいなあ!」と思ったよ。先々週の日曜かな?荒川の土手にロケに行ってきたの。

 

——岡田さんはその昔、ムーンライダーズを続けるためにソロを頑張っている、とおっしゃっていましたね。今はどんなスタンスでソロ活動をされていますか?

 

岡田 長期的展望はもうこの年だとなくて、未来を考えるよりも目の前にあるものや飛び込んできた案件をやれる限りやっていこうっていう感じ。

ライダーズのツアーにしても、新曲が出てのツアーじゃないから、ある意味楽で楽しいですよ。「新譜がなくてツアーって楽しいな!」ってなっているね。

 

 

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【リリース情報】

アーティスト:岡田 徹

アルバム:Tの肖像

リリース日:2016/11/23

価格:¥3,000(+税)

〈収録曲〉

01. しっかり!ダイナモ!頼むぞ!バッテリー!       

02. ウェディング・ソング

03. Bitter Rose

04. ドアの外に待たせた夏

05. アケガラス

06. 週末の恋人 ft.姫乃たま

07. 人ごみの中のおばけ同士ft. 姫乃たま

08. オーロラ見るまで眠れない ft.柴田聡子      

09. マスカット ココナッツ バナナ メロン[アルバム・ヴァージョン] ft.3776

10. 月面讃歌 2016

11. さよならは夜明けの夢に

12. HOUSE

13. sofa

【ライブ情報】

日時:2016年12月27日(火) 18:30スタート 入場フリー

場所:タワーレコード新宿店7F イベントスペース

出演:岡田徹、3776、姫乃たま

内容:ミニライブ&サイン会

イベント対象商品: 11月23日発売『岡田徹/Tの肖像』(定価3,000円+税)

イベント対象店舗:タワーレコード新宿店、渋谷店

※詳細につきましては各店舗へお問合せください。

岡田徹 Twitter

https://twitter.com/bi10r?lang=ja