2016
11.28
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【INTERVIEW】★STAR GUiTAR歌モノベスト「『HERE AND THERE』はベストアルバムじゃないんです。」

INTERVIEW

SiZKのソロプロジェクトとしてデビュー8年目に突入した★STAR GUiTARが歌モノのベスト盤『HERE AND THERE』をリリースした。先月ソロAkiyoshi Yasuda名義『alter ego』のリリースインタビューで話したばかりの彼が「歌モノは当分やりたくない」と言っていた様子が記憶に新しかった僕は、ベストと聞いただけで何故か一瞬、ホッとした。これはベストだから、担当レーベル発信のインターバルに使われる一策だろう、と。

しかし、やはりその予想は大きく裏切られた。リリースされた6枚全てのアルバムで自ら剣が峰に立ち続けて来た★STAR GUiTARのこと、ベストでも自らが張り切って難題を見つけてきてはそれを解いてみせた。彼がそういうポジティヴ&ストイックな音楽家だったことを本当の意味で知らなかったのは、何を隠そう“僕”だったのだ。

足し算をしたいという気持ちが残っているうちはできない——こう言ったのは禅僧の升野俊明氏だったか、SiZKだったか。このインタビューでは、今作『HERE AND THERE』の概要に答えているだけでなく、10年代を羽ばたく眩しい音楽家としての佇まいを十分に感じるものになったと思う。さあ、これから始まる「切なる会話文」を読んだなら、★STAR GUiTARの血肉の分だけも成長した我が子(曲)の“姿”をお手持ちの「耳」で確認して見て欲しい。

 

Photo / 記者撮影

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――本当に面白いです方ですよね、昨日まで「歌モノはやらない」と言っていた人が歌モノを出すのだから!

 

SiZK ははは!これだけの曲数を作っておいて、さすがに放っておくのもあれかな、と思って(笑)。それに振り返ればちょうど歌中心3枚、インスト3枚とやったのでキリがいいだろう、というなんとなくの流れですね。

でも最初はあんまり出す気は無かったんです。歌モノを並べるのもなあ~、という疑問が自分の中で一番大きかった。まあ、ベストってそういうものなんですけどね。

 

――でも、これは聴かないと勿体ない。何故なら世間一般的なイメージの「ベスト」ではないから。ベストで確かにヒット曲が集まっているけれども、★STAR GUiTARの現在地で作られたポップアルバムといった印象です。

 

SiZK シンセポップとか、あの辺りのサウンドがやりたかった。それを「架空のバンドが★STAR GUiTARの曲をカバーしたらどうなるの?」っていうコンセプトで作ったら面白いかなって思って。

 

――なるほど、だから加工は程々にボーカルを立たせているんですね!装飾音も派手にじゃんじゃん遊んでいて激しい構造だったのが、今回は良い意味でスッキリしていて、それでいてさりげなくエッヂが効いている。

 

SiZK そうそう、意外とシンプルなんですよね。以前は自分の中から出てきたものはいなきゃダメ、そういう考え方が強かったんだと思う。でも今は「この音は要らなくない?」と思ったら潔く消す。

 

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SiZK それは単純に経験を積んだからじゃないかな。昔は隙間があると埋めたくなっちゃっていたんです、心配で(笑)。今は必要がなければ隙間のままでも大丈夫だと思える。

 

――しかしこのアルバムはある意味、以前までの曲の持つ役割も含めて全曲作り変えられていますよね。

 

SiZK そう、ベストっていうイメージで聴いた人がびっくりするアルバムにはできていると思うし、曲順もベストというにはありえない感じ。アルバムの中の一曲にすぎなかったセカンド『Traveller』の12曲目で、シングルっぽい感じでもない曲「Starting Over」がどアタマにきてる。そう考えるとベストとは全然言えないですよね(笑)。でもただ並べるだけだと、どうにも自分の中で整合性がつかなかったんです。

 

――しかも最近の作品はインスト続きだったこともあり、このベストは「★STAR GUiTAR初期ベスト」と言った印象も持てますね。カテゴリはダンス・ミュージックやエレクトロじゃなくて★STAR GUiTAR解釈のポップミュージック集のようで。

 

SiZK インストをやった時にどんどん生っぽくなっていった流れが多分影響したのかもしれないです。もともと僕はクラブミュージックとかテクノが好きな人だったから、ファースト(『Carbon Copy』)とかはまさにそっち寄りの歌モノになっていますから。

 

――そうですね。初期の頃は特にヴォーカルも音のパーツの一つにすぎないノリで、かなり遊びを加えている印象です。

 

SiZK 初期はそれがむしろ自分のウリでもあったからね。インストを経由して生楽器の良さを体験してきた上で作り直した時に、バンドっぽさが欲しくなっちゃった。

 

 

SiZK あと、これまでいろんな人とコラボしてきたけど、ボーカリストとやると僕がプロデューサー的な立ち位置になるから、どうしても主導権を強く握っちゃうんですよね。でも楽器の人の場合はもうちょっとフラットな関係になるから、今となってはそれも僕にとって大きな経験になったのかな。

 

――これはまさかの生バンド出現かも!?

 

SiZK そうですね、そうなったら面白そうですね。一回全部打ち込みで作って、それから対になる生演奏でカバーしたら面白そう。めちゃくちゃ大変そうですけどね(笑)。僕のイメージしているバンドは、ギターもベースもドラムも全部鍵盤のバンド。クラフトワークみたいにね。でも出てくる音はもっとバンドっぽい。

 

――さらに、このベストには新曲も入っています!

 

SiZK ここぞ、とばかりに(笑)!“スターギターがスターギターを演る”っていうのを凄くやりたかった!

 

――もしかしてずっと前から考えていた構想ですか?

 

SiZK そう。ルーツ感が出せると思ったから、演るならベストだなって思ってた。でも最初から演るのは違うし、みんな薄々★STAR GUiTARはケミカルブラザーズの「Star Guitar」だということを言わないだけで知っている状況で、それを今回出すのが面白い、と思ったんです。

 

――ルーツになっている曲、でもあくまで“ポップ”を意識して作られたんですね。

 

SiZK そう、それでもあくまでも「架空のバンドのルーツ」という聴こえ方を出したかった。

 

――同じ人とは思えませんよ。前作のソロとは思考回路も全然違うじゃないですか(笑)。

 

SiZK ははは、★STAR GUiTARはあくまでもコンセプチュラルにね。これ(★STAR GUiTAR)は、だいぶ自分の中の妄想で出来上がっている。

 

――アルバムの曲順もやはりご自分で決められたんですか?

 

SiZK そう。それも普通に始まったら面白くないなっていうところもあったし、1曲目にいきなり「Star Guitar」を持って来ればインパクトがあって面白いんだけど、わかりやすくて嫌だなって。まさか2作目の目立たない曲がどアタマにある方が逆にインパクトがあっていいんじゃないか?と思った。曲としても始まりっていうイメージがあったし。

 

――本当に初期の作品の一つですね。デビュー前の作品といえば「君はスナイパー」と「Mirai Real」「Future」でしたね。この中でベストに入っていないのが…

 

SiZK 「Future」。それは単純に歌が入っていないからという理由ですね。

 

――「Mirai Real」にはバージョンがあると思いますが、タイトルを見るとシングルの方ですか?

 

SiZK そうです、大元の方です。

 

 

――タイトルを並べてみると、漢字で書かれている「未来リアル」も大元!?

 

SiZK 本当だ!気づかなかった(笑)。でもこれも元の曲よりはヴォーカルの入れ方も全然違うと思うし、聴こえてなかったヴォーカルやブレスとかも聴こえてくると思う。

 

――そうですね、びっくりしました。非常にライヴしている。

 

SiZK 「Mind Trip」が一番今っぽいのかな。ベースミュージックの感じを取り入れているし。これは僕がYears & Yearsとかパッションピットから影響を受けているのが出ています。

 

――私はコールドプレイかとも思いましたよ。

 

SiZK もちろん入っています。あとはチャーチズとか…まあ、だいたいシンセが入っているバンド系の人たちですね。

 

――ちなみに、SiZKさん自身の一番思い入れがある曲は?

 

SiZK よく作ったなって思うのは「君はスナイパー」。

 

――これは20歳くらいの時の曲ですか?

 

SiZK 20歳か…よくこんな歌詞書いたよね、って感じですね。

 

――”SiZK”は作詞家でもあったんですね!

 

SiZK もう作詞はないと思いますけどね(笑)。歌い出しは「はるかぜ~」とか爽やかに言ってますからね(笑)、今の僕にはこんな歌詞は書けない。

このアルバムの中では「君はスナイパー」と「Brain Function」と「Find the Center of a Circle」の歌詞を僕が書いています。「Imagine」も。初期は結構僕が歌詞を書いているんだなあ(笑)。

 

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SiZK 作った当初はそれでも良かったんですけど、今の僕からすると初期の頃の曲は可愛すぎるんですよね。それを今どうやって落ち着かせるか、ということも今回の課題でしたね。

「君はスナイパー」は僕の最初の曲なんですけど、まずはこれをどうやって聴かせるかについて取り掛かった。この曲を生かすとしたらシンセポップにして架空のバンドが演奏していることにして…そうしてアルバム全体のコンセプトになっていったんです。

 

――「君はスナイパー」が今作のキー曲なんですね。

 

SiZK そうですね。そういった意味でこの曲は本当に思い入れが強いですね。

 

――こうして1枚のアルバムを作ってしまわれたわけですが、前作はAkiyoshi Yasudaとして★STAR GUiTARと対極とも言えるソロ作品を出されました。これだけ違う音楽世界を行き来することになって、コントロールはできていますか?

 

SiZK 逆に自由になったと思いますよ。やりたかったことが★STAR GUiTARで出来なかったから、今まではそのせいでモヤモヤしていたけど、それがなくなった。★STAR GUiTARとAkiyoshi Yasudaで立ち位置がはっきりしたからやることも明確ですごく自由です。

 

――それは本当にやってよかったですね。

 

SiZK やってよかったです。今回のアルバムもソロの次だったからここまでできたのかもしれません。STAR GUiTARとAkiyoshi Yasudaは本当に表と裏、陰と陽っていう感じですよね。

 

――理想的な生き方かもしれませんね。特にアーティストとなるとイメージ呪縛みたいに大胆なことがなかなかできないけれど、本来人って色々やりたいものですよね。“今っぽい”とも言えるのかもしれない。いい流れができるといいですね。

 

SiZK そうですね。アルバムタイトルも『どこにでも行く』みたいなタイトルですからね(笑)。これからも、どこにでも行きますよ。

 

【関連リンク】インタビュー/Akiyoshi Yasudaが★STAR GUiTARを脱いだ理由

 

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【リリース情報】

アーティスト:★STAR GUiTAR

アルバム:HERE AND THERE

リリース日:2016/11/16

価格:¥2,000+税

発売元:CLUSTER SOUNDS

 

★STAR GUiTAR Web

http://www.starguitar.jp/