2017
01.08
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L.A.に辿り着いたBonoboの、4年ぶりアルバム『Migration』を紐解く

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Bonoboこと、サイモン・グリーンの6作目のニューアルバム『Migrationが2017年1月にリリースされる。前作の「The North Borders」から丸4年。満を持しての新作品に待望しているファンも多いのではないだろうか?

 

実は、彼の音楽に、筆者自らが惹きつけられたエピソードがある。少し余談ではあるが、お話しさせていただきたい。

Bonoboとの出会いは、偶然の経緯から。行きつけのカフェで普段通りにPCと格闘しているとき、BGMで流れる音楽が、不意に耳に止まった。他とは一線を画す、メッセージ性の高い、ダウンテンポ、ブレークビーツサウンド。そして、エレクトロニカとしては、あまりに壮大なスケールの音楽に、聞き入ってしまったのだ。持ち前の好奇心をどうしても抑えきれず、「あのー、お忙しいところすみません。今、流れているBGMを演奏してるアーティストってわかったりしますか?」と忙しく働いているカフェ店員を止めてまで教えてもっらたのが、Bonoboの名前だった。楽曲名は「Black Sands」。2010年にレーベルNinja Tuneよりリリースされたアルバム『Black Sands』に収められている。アコースティックハープ一台によって奏でられるシンプルなコード進行のループに始まり、少しづつインストルメントのトラックが重ねられていく。クラリネットの主旋律が加わるまでが導入部。その後も、音の輪がどんどんと広がっていく、その様は、ごく自然で、且つ、ドラマチックだ。ブラスサウンドも加わり、フルオーケストラのサウンドにも似た壮大なクライマックスをむかえて、その後、その高揚感を名残惜しむかのように、その「円」は、静寂へと向かうのだ。

 

 

Bonoboは、ニューアルバム『Migration』制作時に、彼の音楽観、音楽哲学をこう話している。「人生の中で僕たちは様々な感情や経験を体感するんだ。それは、気持ちの高ぶりだったり、その反対に落ち込むことだってある。また、騒々しく、大音量の中に身を置くこともあれば、静かに穏やかに時を過ごすことだってあるさ。素晴らしく美しい場面が目の前に広がることもあるし、目をそむけたくなるような醜いことに直面しなくてはいけないかもしれない。音楽は、そんな人生の様々な部分を反射する鏡なんだ。」と。

そのようなBonoboの哲学が音楽から聞こえてきて、「他とは一線を画す、メッセージ性の高い」といった印象として、私の心(耳)をとらえたのかもしれない。

 

 

Bonoboの経歴を少しご紹介しよう。

ブリティッシュフォーク音楽に傾倒した父と一緒に、ハンプシャー地方で子供時代を送る。「家では、父と父の音楽仲間が集まって、フォークジャムセッションが永遠と夜遅くまで奏でられていたよ。週末になると、どこからか集まってきたバンジョー奏者やヴァイオリン奏者が家で寝泊まりしていたね。」と当時を振り返っている。「僕自身の10代はというと、やんちゃなスケートボード少年だった。聞いていた音楽は、アルトロック、ハードコアそして、ヒップホップと、まったく父の趣向とは違っていたね。」とはいっても、彼が、幼少期にはギターやピアノを習い、ブリティッシュフォーク音楽シーンの影響を知らず知らずのうちに受けていたことに間違いはないだろう。その後、ブライトンへ移住することとなる。音楽的に肥沃なこの小さな町ブライトンでの生活が、彼の音楽要素にまた深い影響を及ぼした。ドラムプログラミングの彼の技術は、レーベルTru Thoughtsのロブ・ルイスの指導の下、育まれる。また、彼のDJセンスは、Phonic:hoopなどで、オールナイトDJセットを定期的にやりことによって培われたことに他ならない。

彼の最初のアルバム『Animal Magic』はレーベルTru Thoughtsからリリースされる。彼の自由で確かな技術を持った音楽的センスは、「エレクトロニカシーンに新風を巻き起こす」と一躍注目を浴びた。

2010年『Black Sands』(筆者がカフェで耳にしたアルバム)がリリースされると同時に、Bonoboの音楽のもう一つの真骨頂でもあるDJグリーン・サイモンとしても、頭角を現した。2012年には、自身のアルバム『Black Sands』をリミックス、UKクラブシーンから世界中のダンスフロアへと圧巻のステージを繰り広げる。

同年には、ニューヨークへと拠点を移し、『the North Borders』の制作に着手。『Black Sands』で魅せた、エレクトロニカ音楽の色彩の豊かさを十分に引き継ぎ、また、さらに進化を遂げた、5作目である「The North Borders」を完成させた。エリカ バドゥ、グレイ レヴァレンド (シネマティックオーケストラ)、コーネリア(ポルティコ・カルテット)等がヴォーカリストとして参加もしている。「The North Borders」のコンサートツアーは、18カ月のうち、175の公演を4大陸30か国に及んで繰り広げられた。その結果、SongKickでは、世界中で最も旅をしたアーティストとしてBonoboが選出されている。

 

 

子供時代から「Migratory―渡り鳥」的人生をおくってきた彼は、現在、ロサンゼルスを安住の地としている。ニューヨーク時代には、出会うことのできなかった壮大な自然を目の当たりにし、「騒がしさ」から離れた「静けさ」という新天地で、彼のニューアルバム『Migration』は制作された。Bonoboはこう語っている。「僕自身がどこから来て、どこを『僕の家』と呼ぶかという、自分なりに出した答えが、このアルバムに描かれている。『Migration―移住』という題にしたのもそこにヒントがあるわけさ。結局、『僕の家』とは、今いるところなのか、生まれた場所なのか、また、人生のどの時期にいた場所っていうのがその答えの鍵を握るのかもしれないというようにね。」