2017
02.12
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【Pick Up!】グリコラージュの天才 Kutimanが描いたアルバム『6AM』に「朝」を見る

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音楽は国境を超えたのか。だとすればどういうことなのか。Kutimanの暮らすイスラエルには、ユダヤ人をはじめとする毎年多くの民族が世界各国の文化を土産に持ち帰ってくる。

その地で6歳からピアノに親み育ったKutimanの、2011年にリリースしたフルアルバムKutimanでは、サイケロックやファンク レゲエ、ライ などから新たなグルーヴを産み出し、アフロビートの金字塔フェラ・クティやキザイア・ジョーンズあたりと並べて紹介されていたりもした。彼はまるで発明家のごとく、あらゆる”MUSIC”をグリコラージュする。

 

 

日本でKutimanの存在を一気に広めたのは2009年にスタートされたThru Youというシリーズだろう。

Thru Youとは、プロデューサーKutimanがYouTubeにアップされた動画をコラージュした音楽映像作品のシリーズで、日本を題材にした動画では明和電機やHifanaらが参加し、YouTube時代の気鋭な音楽家として大きな話題を呼んだ。やがてこのシリーズは1,000万回という再生回数を超えた。

 

 

今回日本でリリースされる『6AM』は、長くファンが待ち望んでいた、ひっさびさのオリジナルフルアルバムだ。

70’sサイケ臭プンプンのギターリフから始まり、そこから半ば当たり前のように繰り広げられる音のコラージュワールドは、時にジミヘン経由でロックの聖域を感じさせ(#2 She is a revolution)、時に「歌の書」を想像させるような抒情詩(#3 shine again)で、作品の多様性を確認させてくれる。それは日本で育った我々には未体験の異物混入感であろうか…しかしその「異物」なぜこんなにも心地良いとは、それらが現代のマインドでほぼ完璧にデザインされているからだろう。Kutiman作品のカイナ(歌姫)Karolinaによるアフロファンキーなヴォーカルとシンセの絡まり具合がそれらを具現的に表しているようにも感じた。

 

 

またKutimanといえば、近年は独特の切れ味をもつダンスチューンを多く発表していた印象だっただけに、アルバムタイトルにもなっている「6AM」の劇伴風の哀愁感漂うインストには拍手せずにはいられなかった。ラストにして圧倒的な存在感  -彼の見る「午前6時」の景色は、朝日の眩しい“希望の朝”ではないのだろうか。 儚く舞う砂漠の砂粒たちだろうか。それとも「無」でありたいと願いながら目覚めた時の天井の「色」だろうか。…多分 世界は思っているよりもずっと広いのだろう。

 

 

Kutimanの「6AM」を聴いていると、個人の現在地点から見聞きする情報を超えて、知るはずのない場所で感じられる様々な情景を無意識に求めるように、想像力を掻き立てられる。僕らの目の前に映るものだけが「世界」ではないことを30分という時間をかけて自覚させられるようだ。

何よりこの度は日本リリースだ。本作はゴリラズ、日本では小島麻由美を経由したリスナーをはじめ、多くの音楽ファンに愛されるだろうし、彼にとってもシーンにとっても非常に有意義な作品となると思う。本作を手に取るのが楽しみでならない。

 

文 / 田中サユカ