2017
02.25
Close up of Synth with Buttons and Knobs.

2017年を読むための、注目アンビエント/エレクトロニカガイド

ARTIST, BLOG, VIDEO

近年 音楽シーン界隈で聞こえてくるのは、やれドローンだ 、ダブステップだ、リッチ・エレクトロニカだ…一聴して何なのか不明瞭な“新ジャンル”たちである。一体それが何なのか、ピュアーな音楽愛好家たちは意味を知ろうと検索し、余計な混乱に陥り、出口の無い情報の密林の中で夜な夜な途方に暮れているでは無いか。

無論、ジャンルというものが果たす役割も大きいのだけれど、殊に近年の変態的なほどの細分化は音楽にも音楽愛好家にも寄与していないのである。だが時代性、となると大いに事情が変わり、時代の持つ空気感やテクノロジーの進化は大きく音楽に影響するので無視できないところである。

というわけで、今回オススメしたいアンビエント/エレクトロニカ系ミュージシャンをあえて雑多にピックアップしてみた。


Tycho『Epoch』


USで活動するスコットハンソンのアンビエントプロジェクト。2017年グラミーではベストダンス/エレクトロニックアルバムにノミネートされるなど、現在再注目されているアーティストの一人だ。読み方は「ティコ」と読んでしまいそうだが、YouTubeなんかでチェックすると「タイコ」と読むようである。ソロアーティストでありながら容易にバンドで再現可能な、つまり聴いていてそれぞれのパートの演奏者の姿がまざまざと思い浮かぶような作りになっているが、まるで一つ一つの音が聞く人の耳を絶対に傷つけないようにと角を切り落とし、鑢(ヤスリ)をかけたように滑らかである。まるで父親が、昔自分が遊んでいたおもちゃを引っ張り出してきて、磨きあげ、組み替えて全く新しいオモチャにしてくれたかのように、懐かしさと人間味と、斬新さに溢れている。


Mark Pritchard『Under The Sun』


Global Communication名義(GLAYの曲じゃないですよ)で 1994年から活躍している人物であり、その作品は軒並み伝説の名盤扱いされている。ソロ名義でのリリースは本作『Under The Sun』になってからだが、堂に入った、気を衒わないサウンドはまさにベテランのそれである。自分で時代の波を生み出し、今も自らその波に乗っている稀有な存在。

安心と信頼のWARP RECORDからリリースされた本作はそれ自体、ISO規格適合サウンドと銘打ってもクレームがこないであろう名盤。若いリスナーにはやや退屈かもしれないが、抑揚と音数を抑えて作られたサウンドは、ベテランの証であり、GLAYの人が聞いてもきっと気にいるだろう。今回貼り付けた曲はニュースでも話題を呼んだトム・ヨークを迎えた一曲。他にもBibioやAnti Pop Consoltiumをフィーチャーした曲など全17曲全てが聞きどころだ。


Andy Stott『Too Many Voices』


2006年のファーストアルバム『Marciless』よりその非凡性を発揮し、名門レーベルModern Loveを代表するアーティストの一人として世界に知られている人物。2016年に発表された『Too Many Voices』では、冒頭からぶっ壊れた人工知能が電子音でおしゃべりしているような奇妙さで幕をあけるが、2曲目「Butterfly」からは彼の本領(と個人的に思っている)Sci-Fi的な浮遊感が聴き手の耳を捉え始める。そこからはその浮遊感が保たれつつも7曲目「Selfish」の鋭角なビートなどが頭をもたげ始め、終盤に向けて「Andy Stottとは何者か」、独自の音像からリスナーは理解するだろう。と同時にAndy Stottの本作は愛聴盤に加えられるに違いない。


Tim Hecker『Love Stream』


(間違いなく表記は『Tim Hecker』なのだけど、Google Play Music上では「ティム・ハッカー」として登録されている)

キャリアはファーストアルバムから数えて15年ほどになるが、今回のラインナップからは「中堅」といったところだろうか。Red Bull Music Academyにも講師として登壇しているがRed Bullの持つアドレナリン放出系のイメージとはだいぶ異なっている本作もまた’80s風電子音で幕を開ける。’90s頃には「ダサい」と一蹴されていたであろうサウンドだが、現代においては一音一音の響きだけでなく、それらが多重的に組み合わされた時に現れる音像こそが重視されているようである。それは本作2曲目「Music of The Air」のタイトルにもどことなく表されているようにも思える。

 

文 / 沢田 シュウ