2017
03.04
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【Pick up!】無料アルバムでグラミーを勝ち取ったラッパー、Chance The Rapper を聴く

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先日行われたアメリカの音楽業界最大の式典、第59回グラミー賞授賞式。開始一番に発表された「最優秀新人賞」から「ベストラップパフォーマンス賞」「ベストラップアルバム賞」と計三部門を受賞し、今最も注目されているラッパーがこの男 Chance The Rapperだ。ノミネートされたアルバム『Coloring Book』は、無料ネット上配信のみという形で2016年5月にリリースされている。

これまで無料配信のみの作品は度外視されてきたグラミーの選考基準までをも変えることになり、大きな話題を呼んだ。

 

( こちらが『Coloring Book』収録のベストラップパフォーマンス受賞曲。)

 

 

イリノイ州シカゴの中流層が暮らすエリアで育ったChance。父親はシカゴ市長や上院議員時代のバラク・オバマ氏の補佐官を務めていたそうで、ヒップホップシーンにおいては割と”お堅い”家庭環境だったようだ。

 

私が彼の存在を知ったのは、2014年。ヒップホップ情報誌XXLにて毎年行われる新人お披露目コーナー”Freshman class“に選出された頃だ。

しかし当時のシカゴのシーンは、Chief KeefLil Durkらによる”ドリルミュージック“と呼ばれるサウンドが盛り上がり始めた時期。彼らの音楽と共に現地の治安の悪さなども話題になっており、イマイチこの男の”非ギャングスタ”なキャラクターにはピンと来るものが無かった。

 

が、今思えばまさにこの”非ギャングスタ”なキャラクターこそが現在のアメリカの音楽シーンで人気を得た大きな要因ではないかと感じている。

 

 

 

 

Chanceは、例えばJay-Z50centのようなドラッグディーラーや銃撃されたタフな経験を売りにするタイプではないし、Drakeのような女性ウケするセクシーなタイプでもない。

一見どこにでもいそうな”普通”な男が、時に神への感謝やゴスペルを、時に地元に蔓延る暴力についてラップする。

かつてのヒップホップが「大衆の代弁者」であったように、ヒップホップが人種の壁を越えた今、彼が最も音楽市場における「大衆」にマッチした存在となったのではないか。

 

一方で、一部ではあるが彼のヒップホップらしからぬサウンドに眉を顰めるコアな層が存在するのも理解出来るし、何より無料の作品が当たり間になってしまう流れも手放しで喜ぶことは出来ない。(ヒップホップではミックステープと呼ばれる無料アルバムは以前から存在するが、やはり有料との線引きはあるはずだ)

 

 

良くも悪くも、新たなヒップホップ・新たな音楽の形へと扉を開け放ったChance The Rapper。この流れがどこへ行き着くのか注目したい。

 

文 / Kaytee Da Shade