2017
03.09
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エドウィナ・ヘイズ『ポウ・ミー・ア・ドリンク』 – 透明感。そして、深み。慈しみのエンジェル・ヴォイス。

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エドウィナ・ヘイズの歌声には、抗えない魅力がある。聴く者を優しく包み込むその声は、静かな湖面のようであり、暖炉の火のようでもある。伝統的なのに新鮮で、言葉以上に多くのことを語りかけてくる。ナンシー・グリフィンは、そんな彼女のことを「イギリスで最もスウィートな声の持ち主」と言って讃えた。また、エドウィナがカヴァーしたランディ・ニューマン作の「フィールズ・ライク・ホーム(Feels Like Home)」は、キャメロン・ディアス主演の映画『あなたの中の私(My Sister’s Keeper)』の最も感動的なシーンに使われ、多くの人に彼女の歌声の素晴らしさを知らしめた。

 


『ポウ・ミー・ア・ドリンク(Pour Me a Drink)』は、エドウィナ・ヘイズの2枚目のオリジナル・アルバムで、2008年の春にリリースされた。ジャケットに描かれた桜のイラストは、そんな季節を意識したものだろう。内容はエドウィナの歌とギターだけという非常にシンプルなものだが、これがエドウィナの歌声の魅力を伝えるのに最高の選択となった。おそらく、彼女はわかっていたのだろう。ギター1本でライヴ・サーキットを廻る日々の中で、ステージの上で歌った後の肌が粟立つような観客の反応から(目に浮かぶようだ)、エドウィナはこのやり方こそが自分に最も似つかわしいことを確信していたのだと思う。

 

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同じギターと歌だけの作品でも、例えばボサノヴァの響きが波のゆらぎを思い起こさせるとしたら、エドウィナの歌が想起させるのは古い家具の温もりだろうか。素朴で飾り気がなく、とても身近だけど、かけがえのないもの。エドウィナはそうした日常的な情景を、オールドなアコースティック・ギターの燻したようなトーンに合わせて歌ってみせるのだ。

 


また、エドウィナは元々ソングライターとしてキャリアをスタートさせた人だけに、ソングライティングの手腕も見事だ。このアルバムのラストを飾る「アイリッシュ・ワルツ(Irish Waltz)」での深い佇まいなどには、ある種の歴史性さえ感じる。シンプルな作風が特徴のシンガーソングライターにとって、曲の良さは生命線だ。どんなに歌と演奏が優れていても、曲が良くなければ退屈してしまう。そうした意味でも、『ポウ・ミー・ア・ドリンク』は優れた作品だと言える。

 


エドウィナの歌はとても優しい。聴く者の心に落ち着きと安らぎを与えてくれる。それは彼女自身が優しい人だからであることを、僕は知っている。2011年3月11日に起きた東日本大震災、あのとき彼女から届いたメールに僕はどれほど励まされたことか。そのことは以前こちらにも書き記している。彼女の人柄が伺えるエピソードなので、合わせて読んでいただけたら嬉しい。

【合わせて読みたい】エドウィナ・ヘイズ『コーヒー・タイム』 – 震災の後に届いたメール  

 

 

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【アルバム情報】

アルバム:『ポウ・ミー・ア・ドリンク』(Pour Me a Drink)

アーティスト:エドウィナ・ヘイズ(Edwina Hayes)

価格:2,381円+税

ライナーノーツ:宮井 章裕

歌詞対訳:佐藤 幸恵

〈購入・試聴〉

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