2017
03.21
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グリフィン・ハウス『ボールズ』 – 短編映画のような歌から伝わる洗練された哀愁 –

ARTIST, BLOG, VIDEO

グリフィン・ハウスには、ロード・ムーヴィーから抜け出て来たような雰囲気がある。アウトローを思わせる風貌は、カラーよりも画質の荒いモノクロ・フィルムがよく似合う。彼はオハイオ州出身のシンガーソングライターで、現在はナッシュヴィルを拠点に活動している。ナッシュヴィルといえばカントリー・ミュージックの聖地として知られているが、彼の音楽にはほのかなヨーロッパの薫りが漂う。それは「洗練された哀愁」とでも呼べるもので、グリフィンの大きな魅力となっている。

 

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グリフィンは正直な男だ。その性格は若い頃から変わっていない。恵まれた身体能力によりスポーツの奨学金をもらえるところを断って、友人から中古のアコースティック・ギターを$100で買ったのは18歳のときだった。たまたま出演したミュージカルで自分の音楽的な才能に気づき、当時のガール・フレンドのために曲を書いて聴かせたら彼女の涙を流したことにびっくりして、それ以来ずっと歌い続けている。

 

 

大学卒業後、すぐにメジャー・デビューが決まり、音楽制作とツアーに明け暮れる毎日がやって来た。「巨大なシステムの後ろにぴったりとついて、置いて行かれないようにするんだ。そして、うまく時流に乗れたら成功。やったぜ!というわけさ。でも、それは僕のやりたいことじゃなかった」。グリフィンはそう言って当時を振り返る。「多分だけど」と彼は続ける。「あのままメジャーにいたら、僕は今よりも有名になれたかもしれない。でも、音楽を続けることはできなかったと思う」と。そして、グリフィンが選んだのは、音楽を続ける方の生き方だった。こうした自分の気持ちに正直に向き合おうとする姿勢は、彼の音楽からもしっかりと伝わってくる。

 

 

『ボールズ』はグリフィン・ハウスの9枚目のオリジナル・アルバムだ。「どの曲にもたっぷりと時間をかけた。完璧だと思えるまで発売する気はなかった」というグリフィンの言葉通り、ノスタルジーを含んだサウンドにはトータル性があり、細部まで気を配って制作されたことが伺える。そして、誠実な歌声がシンプルなメロディーにのってまっすぐ胸に届く。そこにギミックはない。感情のゆらぎはコントロールされ激することはないが、それぞれの歌が違う表情を持っているのがわかる。だから、何度聴いても飽きることがないのだろう。

 

僕は『ボールズ』を聴くたびに、モノクロの短編映画を観たような気持ちになる。主人公はグリフィンで、画面の中の彼は過去の世界にいるようなのに、やけにリアリティーがある。そして、歌い始めるとそれは確信に変わる。これは今の物語なのだと。彼は旅の途中で、これからも歌い続けるのだと。

 

 

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【アルバム情報】

アルバム:『ボールズ』(Balls)

アーティスト:グリフィン・ハウス(Griffin House)

価格:2,381円+税

ライナーノーツ:宮井 章裕

歌詞対訳:佐藤 幸恵

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