2017
04.28
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オージー・ロックの雄・キングスウッドが魅せる更なる野心

ARTIST, BLOG, VIDEO

オーストラリアの音楽シーンというと、古くはハードロックのAC/DCや、近年では再結成も話題になっているJETなど、ヘヴィーなロック・サウンドを特徴とするビッグ・ネームのイメージが色濃いかもしれない。しかし一方でEDM系のシーア(Sia)や、2016年のフジロック・フェスティバルにも参戦したコートニー・バーネット(Courtney Barnett)のような純オルタナ・アーティストなども着実に世界へと巣立っていっている。
前置きが長くなったが、今回紹介するバンドはオーストラリアきっての文化都市・メルボルン発のキングスウッド(Kingswood) 。彼らの2枚目となる最新アルバム『After Hours, Close to Dawn』にフォーカスしたい。

 


2014年のアルバム「Microscopic Wars」で重めのドラムとひずんだギターのヘヴィーなリフが弾けるサウンドでロック好きを魅了した3人組。同作は国内チャートARIAの年間ベスト・ロック・アルバムにノミネートもされるほどの人気を博した。そこから数年を経た今年2017年2月に発売された新作「After Hours, Close to Dawn」は、音楽誌やレビューサイトで話題になっている。話題の中心は「前作からの旅立ち」とも言えるほどの、今作における大きな音楽的挑戦だ。聴いて頂けばわかる通り、「ギターリフで踊らせるロックだった前作」という言葉がピンと来ないほど、曲調もサウンドも一変し、オルガンやビブラフォンなどが時にダウナーに時にきらびやかに入り、フェザーのようなドラミング、小粋なホーンなども加わり、一部音楽サイトなどでは、前作と比較して「Very Un-Kingswood(とても非・キングスウッド的)」なんていう言葉も聞こえてくるほど、オルタナ色を強めた格好だ。

 

 

しかし、新作アルバムが不評かというとそうでもなく、多くのリスナーはキングスウッドの挑戦を好意的に受け止めているようだ。変化が大きかったとはいえ、よくよく聴いてみると気持ちの良いリフがフィーチャーされていることに変わりはなく、ボーカル・ファーガスのシャープな声はこれまでより一層曲中で生かされた形になっている。

ちなみに過去の彼らの作品を聴いてみると、ハードロックやヘヴィーロックを意識した曲調やアレンジが感じられ、今作とは全く違ったテイストのロックらしいMVを楽しめる。

 

 

 

そもそもオーストラリアは移民が多く文化的な多様性を持つお国柄で、イギリス系の国家とはいえ英語圏であることからヨーロッパだけでなくアメリカの文化の影響も強い。テイラー・スウィフトもエド・シーランも当然チャート上位に入るし、アデルがツアーで公演すればチケットは数日で完売する。音楽配信サービスも盛んで、無料や定額のパンドラやスポティファイの利用も早くから制限なく行われており、当然ほかの先進国と同じスピードで音楽シーンの進化も情報のシェアも進んでいる。音楽を提供するミュージシャンの側だけでなく、同時にリスナーの耳もまた、時代の先端にいるのだ。

そんな中で、バンドが成功を収めたアルバムの次作のコンセプトを考える時、「時代に合う音」を選び取るのは必然と言えば必然。ただし、闇雲に流行りを取り入れるのでなく、「時代」を手繰り寄せ自分たちの音として昇華させるところにバンドのカラーや実力が表される。キングスウッドの新作「After Hours, Close to Dawn」は、新たな試みの中で、彼らのバックグラウンドだけにこだわらない強みやポテンシャルが明かされた1枚となったと言えるだろう。

 

文 / 水田真梨