2017
05.03
iStock_000035275738_Small

Dios Trio『High On Bikes』に見るあの”光景”

ARTIST, BLOG, VIDEO

どこだかわからない原っぱで仲の良さそうなぽっちゃりめのおっさん4人がくっつきあって魚眼レンズで自撮りをしている、どうやらロックバンドらしいのだが本当だろうか。そもそも「トリオ」という言葉の意味をわかっているのか…アーティスト写真を眺めながら、浮かんでは消える数々の疑問を胸に抱きつつ、なんとなくプレイしてみた、彼ら、すなわちDios Trioのアルバム『High On Bikes』はそんな疑問をあろうことか一瞬にして滅却してしまった。

 

 

マサチューセッツ州ウェストボロのインストゥルメンタルバンドDios TrioはTony Kissell(Dr)

Sam Perry(Ba) Tim Longo(Gt) Justin Brown(Gt) の4名により構成されており、2008年からデモ録りなどを始め、フルアルバムのリリースは上記「High on Bikes(2011年リリース)」の一枚のみでシングルっぽいものをBandcamp(音楽のダウンロード販売サイト)で小出しリリースしたりしながら現在もなんとか活動しているようである。YouTubeで2016年時点での彼らの生存を確認できるが、最近はやや骨太なサウンドになってる様子だ。

 

 

クリーントーンでアルペジオで変拍子、「いかにも」なマスロック三種の神器を有しつつも、「どっかで聞いたことある」感ゼロ%、疾走感+焦燥感120%のそのサウンドの謎を僭越ながら考察してみるに、

要となっているのは何と言ってもリフにあるだろう。リフそのものに真新しいのもがあるわけではないとはいえ、通常のバンドであれば1曲に1,2個詰め込んで満足してしまうリフのアイデアが5個も6個もと詰め込まれているのである。

 

ゆえに聴き手が「もうちょっとこのリフ聞いていたいな」と思ったところですでに次の、または次の次の展開に突入している。聴き手の理解力をはるかに超えたスピードでリフが描き出す風景はバッサバッサと切り変わっていく。まさに「High on Bikes」である。

 

目まぐるしく回転し、停止するようにして疾走し、墜落するようにして飛翔する。こんなグルーヴをうみだせるバンドがあったとは。しかも全く売れてないとは。

 

 

凄まじい展開にはもはやストーリーも背景も必要ない、しかし、アルバム終盤「Spoon」に続いて「Fast Car」がスピーカーから流れ出す時、Dios Trioは一つの明確なメロディーを、ありったけのエモーションを込めて放ち始める。ここに至ってリスナーは初めて、彼らが本当に鳴らしたかったエモーションを明確に感じ取るのである。

 

そこに描かれているのは、今も胸の奥に突き刺さったまま錆び付いている、あなたの、あの時の、あの光景とまさに重なり合うものだろうか…。

 

文 / 沢田シュウ