2017
07.20
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【pick up】Melorman -現代人として求めたい「浮遊感」

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音楽において「浮遊感」と言う言葉は抗いがたい魅力を持っている。某有名ネット辞典によれば、浮遊感とは「空中に浮いて、ただよっているような感覚。浮いているような心地よい印象。」とされている。

そう「浮遊感」とはジトジトした高温多湿のコンクリートの密林の中を彷徨い歩き、乗りたくもない満員電車に押し込まれて挙句の果てに痴漢に間違われて線路内に逃走、鉄道営業法違反に問われて連行される…そんな殺伐とした日常を送っている我々にとっては無縁のものであり、無縁ゆえに強く惹きつけられるのである。

我々が常日頃渇望している「浮遊感」を、Melormanの紡ぎ出すサウンドはまさに余すところなく提供している。

 

 

 

ギリシャはアテネを拠点とするMelormanはAntonis Haniotakisによるソロプロジェクトであり、Boards of Canadaや Tychoなどを彷彿とさせるサウンドを特徴としている。

10年ほどのキャリアの中で数枚のフルアルバムとEPをリリースしているが、そのサウンドは一貫してどこまでも角がなく、耽美的なサウンドが突如鋭角的なビートに転調するというような手法も取らない。美しいものは美しいままで、という考えの人にとってはうってつけのサウンドだ。

 

 

控えめなビート構成と、煌くような多重的ノイズに乗っかった電子音はまさに「空中に浮いて、ただよっているような感覚。浮いているような心地よい印象」であり徹頭徹尾それが失われることもない。また、アルバムジャケットやムービー全てにおいてイメージは淡くドリーミー、この確信犯的な浮遊感は、アスファルトにへばりついて生きる現代のわれわれにとって、ある種の福音のようにも響くのである。

 

文 / 沢田シュウ