2017
07.24
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【INTERVIEW】パラレルワールドの住人ミラ・パラメータ、アルバム「リボーン」制作で何を見た!?

ARTIST, INTERVIEW, NEWS

「その時」は突然やってきた。
「その時」とは、二つの事柄を指している。一つは、ゴンドウトモヒコ氏のスタジオに足を踏み入れること。今更ゴンドウさんの経歴について説明する必要はないが、僕にとっての“ゴンドウトモヒコ”という存在は、多分“聖書”とか“聖泉”だ。音楽の前に立ちはだかるネガティブの一切をスマートに解消してくれる、生ける“聖域”。実際に彼との出会いによって「こんな私でも音楽をやっていいんだ!」と輝きを取り戻した女性を知っているし、今回リリースしたミラ・パラメータもまたその1人だろうと思う。それに愚音堂の作品は今回も作り手の「楽しさ」が「新感覚」へと開花、本当に見事に咲き乱れている。このように育てられた幸福な作品は、間違いなく聴いている僕らにも “幸せ”をもたらしてくれるんだ。彼なしでの音楽の未来?今は考えられません。
もう一つの「その時」とは、ミラ・パラメータのような、異次元に触れる音楽家との出会いだ。この不思議な感覚は細野晴臣氏の1979年YMOワールドツアーエピソード以来だが、ミラ・パラメータはその一見オカルティシズム的な諸々を“真理”としてためらいもなく音源化できる希少な存在なのだ。これは時代や国によっては やれ悪魔だとか魔女だとか言われて叩かれかねないのだから、ミラ・パラメータとは非常に志操高く勇敢な女性でもあると思う。そろそろ宗教家と科学者が折り合いをつけることもできる時代だしね、多様性を受け入れる意味でもミラ・パラメータの誕生は非常に喜ばしいことで
はありませんか。
ミラ・パラメータはこれからも“ロジック”の先にある何らかの“信号”を音楽として放ち、その度に僕らの内にある “葬られたはずの才能”を刺激し続けるのだろう。そのうち、坂本龍一氏が楽器を自然に返そうと試みるように、彼女とゴンドウさんの手によって「歌」も本来の姿へ帰る、なんていう現象が起きるのかもしれない…インタビューをしながら、夢は膨らむばかりであった。

取材と写真 / 田中サユカ

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——今回のアルバムはまず愚音堂のゴンドウさんに聞かせたということですが、そもそもどういったいきさつだったのですか?成り行き、ですか?

 

ミラ はい。

 

ゴンドウ そうね。もうレーベルを作った時には、最初のメンバーに入っていたんだよね。アルバムを出すタイミングについては特に決めていなかったんだよね。

 

——そうだったんですね。ゴンドウさんに、この作品の最初の印象について伺ってもいいですか?

 

ゴンドウ まずは曲が面白いですね。たまに出てくる複雑なコードワークとかね。こういう感じはあんまり聞かないかもしれない。

 

——ミラさんは“いつもと違う作り方”とおっしゃっていましたが…

 

ミラ そうですね。今回は打ち込みで作ったんですけど、ピアノの引き語りの頃とはやっぱりちょっと作り方が違いますね。

 

——(打ち込みで作ろうと思った)きっかけとなった出来事があったのですか?

 

ミラ logic(機材の名称)を使って作曲をしている友達がいたので、それをみて「面白そうだな」と思ったのがきっかけですね。
ゴンドウさんに知り合ったっていうのも大きいですね。でも最初、ゴンドウさんが音楽をやっている方だって知らなかったんですけど(笑) 実際にゴンドウさんの音楽を聞いてみたら、面白い音楽をされていたから、影響を受けました。それで…作っちゃいました(笑)!

 

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——ゴンドウさんはミラさんが打ち込みの作品を持ち込んだ時は予想外でしたか?

 

ゴンドウ そうでもなかったな。聞かせてもらったものが最初から打ち込みだったしね。

 

ミラ もともと弾き語りではあったんですけど、それはすごく昔の話で、ゴンドウさんに聞かせたのは最初のデモから打ち込みだったのでね。

 

——作っていた時は“修行のよう”だと…

 

ミラ そうですね、やっぱりすごく細かい作業なんですよね。目もシュパシュパしてくるし、集中しすぎて肝臓とかも痛くなってくるし…!でも、のめり込んじゃいましたね(笑)。

 

——いちリスナーとして作品を聴いていても、あの…色々あったのだろうかと…

 

ミラ 笑。そんな風に感じました!?

 

——この作品を作られる前に、何か膿のようなものがあったのか、それをどこかに葬ったのか…。ミラさんにとって、今は“転機”なのでしょうか?

 

ミラ そうですね。打ち込みで作ったっていうのもそうだし、“人生”って言ったら大きい話になっちゃうけど、そういう意味でもそうだし。

 

——なにか大きな葛藤があったりとか…

 

ミラ 例えば「音楽とどう向き合っていこうかな」とかね。例えば「人間として、生活していかなくちゃいけない、でも人間って?」とか(笑)。この作品を作っている時は 「もっと素の気持ちのまま色々やって行きたい」と願っていた時期でもありますね。

 

——そもそも、普通に生きていくこと自体が大変ではありませんか?

 

ミラ うーん、大変と思うときもあるかな。
これまでは いろんな“概念”に縛られていたような気がしますね。でも年末くらいからポーンっと抜けた、という感じ。音楽に関しても集中して作れた。

 

——現時点である種の“答え”みたいなものはでましたか?

 

ミラ “答え”…。答えは出ていない。けれど、すごく気持ちが楽になりましたよ。「このままでいんだな」って。名前も変えて、余計なことは考えてないかな。

 

——それで、タイトルは「リボーン」。

 

ミラ 「リボーン」は、ゴンドウさんが考えたんですよ。

 

ゴンドウ 前にデビューしていて、ブランクがあって、また違うカタチでのデビューだからね。

 

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——作品を実際に拝聴してまず感じたことは、ミラさんの「歌い方」に固定概念がないこと。そういった自由度の高いスタイルがミラさんの一つの魅力だと感じたのですが、意識されているとすればそれはいつ頃からですか?

 

ミラ ありがとうございます。でも、いつからとか、全然意識してない(笑)。曲調によって“少年の気持ちで歌う”とか、そういうのはあるのかもしれないですけどね。ちなみに、基本的に自分の中には「少年」がいます。

 

——ミラさんの中に住んでいる「少年」とは、どんな人ですか?

 

ミラ というか、基本的に3歳くらいから感性が変わっていないんです(笑)。

 

——「少年」はミラさんとは別の人格なんですか?

 

ミラ 一緒です。

 

——ミラさんの“全ての人生”を知っている人なんですか?

 

ミラ そうですね。少年が色濃く出ている曲が「スカートの中の城(#7)」ですよ。

 

——なるほど。ほかにも色々な人格がこのアルバムに登場しているような気もします。というのも「輪廻転生」という考え方をアリとした場合、ミラさんのこの作品が非常にしっくりとくる気がするんです。非常に神秘的で、これをより正しく表現しようとするならば、それは「宇宙的」とも。

 

ミラ それはあると思います。「かぐやひめ(#9)」っていう曲は、まさに輪廻転生を題材にした曲です。

 

——非常に興味深いですね。おそらくこの作品「リボーン」もポピュラーミュージックの一つとしてレコードショップの棚に並ぶのでしょうけど、そもそも“ポピュラー・ミュージック”とはミラさんが感じるような「宇宙的」ではなく非常に「地球的」な領域でもある。その“アンバランスな感覚”は、ミラさん自身が音楽家として生きるのに苦労されてきた部分ではないだろうかとも思いますよ。ミラさんはそこをどのようにバランスをとっているのですか?

 

ミラ バランスはまだ、全然とれていないと思います。でも、いろんなことを客観的に見られるようになったとは思います。

 

——影響自体は受けやすい人ですか?

 

ミラ そうですね、今までは、人が感じていることを、自分も同じように、憑依するというか…感じてしまうところがありましたが、今は良い影響だけ受けるように努力はしています。例えばゴンドウさんの打ち込みは凄いじゃないですか。だから、その部分だけゴンドウさんに成りきる!そんな風に、良いところだけを憑依させるようにしています。

 

——他にゴンドウさんのどういった部分をリスペクトしていますか?

 

ミラ まずは、音楽に対してはめっちゃ真面目!それに全然寝ない(笑)。

 

ゴンドウ 寝てますけどね(笑)。

 

ミラ ちょっとの睡眠で全快するんですよ。

 

ゴンドウ ファイルを送ったりとかする時間が変な時間だからでしょ?

 

ミラ でも本当に、ゴンドウさんと出会ってから「自分は自分」っていう軸でやれるようなった。他に大切にしていることといえば、スポンジみたいな感受性は大切にしています。歌詞を書くときは特に。

 

——アルバムの中には他にも誰かについて書かれた曲がありますか?

 

ミラ 例えば「夜マラソン(#8)」は、あるおじさんを題材にしている曲なんです。でも自分を通して書くから、結局自分のことを書いた曲でもあるんだけどね。

 

 

——最初の「Onion Girl Onion Boy」は?

 

ミラ あれは自分の体験かな(笑)

 

——この曲はある意味“罠”なんじゃないかと思ってしまいました(笑)。一曲目のこの曲を聴いていると平面的な世界だったのが、トラックが進むに連れて、深い宇宙にハマって出られなくさせられるていう…!

 

ミラ それは嬉しいです(笑)!でも、そういう風に聴いていただけて光栄です。曲順は、ゴンドウさんが決めたんですよ。

 

ゴンドウ うん、何も知らないで聞くとかるーく聞こえるけど、ジャケットからこの曲が出てきて、歌詞をずっと聴いていると「ん?」ってなるかもしれない。

 

——そうです、ジャケットもすごい世界観ですよね。

 

ミラ 素敵ですよね。Dubstarさんにお願いしたアートワークなんですけど、この世界観、大好きなんです!

 

——アルバム制作中に聞こえてきたそうですが、小さい頃によく聞こていた“音”というのは?ミラさんの年代でいうとアイドルポップスなどでしょうか?

 

ミラ 違うんですよ。“音”って、音楽の意味じゃなくて、本当に“音”なんです!なんていうのかなあ…“耳鳴り”みたいな。そういう音、聞こえない?

 

ゴンドウ 耳鳴りはする時もあるけど…聞こえないよ!

 

——これまでは聞こえなかった音なんですか?

 

ミラ 今までは、ずっと忘れていた音で、このアルバムの制作中に、あぁ、小さい頃に、よく聞こえていた音があったなぁって、だんだん思い出してきたんです。

 

——音の正体は何でしょうね?

 

ミラ それが、私にもわからないんです、1人でお風呂に入ってる時、夜中に目が覚めた時、よく聞こえていた音です。

 

——よくよく巡らせてみると、ミラさんの世界観は意外と“普通”なのかもしれませんね。例えばですけど、昭和の時代にはテレビや雑誌などで“UFOと交信”とか“ムー大陸”だとか、科学で説明できない様々をオカルトとして楽しんでいましたけども、今ではその辺も、もう少し誠実に受け止める空気もできてきたりして。

 

ミラ そうですね、スピリチュアリティっていう視点は実は“普通”なんですよね。

 

——「私はシリウスから来た」という人もその辺にいたり。ミラさんの名前は“ミラ”という星から取られたそうですが、もしかしたらミラさんは“ミラ”から来たとか?なんて考えたりして。

 

ミラ 私、その人の言っていることわかります。私ももうすぐシリウスに帰りますよ。

 

——そうなんですか!?ミラさんの曲にも「シリウス」が登場しますよね。

 

ミラ  “ミラ”っていうのはくじら座の星の名前なんだけど、ただ可愛いから名前にしただけです(笑)。でも、シリウスには帰りますよ。…あれ?もしかしてひいてます(笑)?

 

——いやいや!ロマンティックな感じがします。

 

ミラ 人間は“宇宙人”だからね。

 

——ひどくドロドロした曲がアルバムの中に一曲ありますが…

 

ミラ 「MANGEGYO(#5)」ですね。この曲は、結構前に作った曲なんです。自分を含め、人に宿っている“苦しみ、でもその中にある何か、希望なのか、欲望なのか、大切なもの”を表現したつもりです。

 

——映像的な曲だと思いました。まさか浮かぶ映像は“そのまま”ですか?

 

ミラ そのままですよ。笑

 

——人の“愛憎”は、本来誰からでも見え隠れするものでもありますよね。

 

ミラ はい。「MANGEKYO」はこの曲では特にそういうのをトリッキーに表現したかったんですよね。

 

——そうだったんですね。…サウンドデザイン的にも説明し尽くせないほど凝っていますよね。それも全曲抜かりなく。

 

ミラ ありがとうございます。でもコンピュータ、全く詳しくはないです。知ってたら本当は相当楽に作れるはずなので。次の作品は最先端を駆使して創りたい気持ちです。

 

——刺繍をするように?

 

ミラ 本当に刺繍をするのと変わらない。「ナックルボールは過去のスマッシュから飛んだまま(#4)」っていう曲は、一見ピアノっぽいけどこれも全部シーケンスで打っています。

 

——この曲も戦っていますよね。

 

ミラ これは中学生の時、卓球部だったので、卓球を題材に創りました。

 

 

——これまで不思議なお話をたくさんしていただきましたが、制作に関わられた方とはそう言ったイメージのお話をされるんですか?

ミラ ゴンドウさんも相当、直感が鋭い方ですよ。

 

ゴンドウ    マスタリングに関しては、お願いした砂原(良徳)さんにはもうお任せしました。

 

——曲構成も非常に個性的でおもしろいじゃないですか。思えば、私たちのほとんどは義務教育で“音楽”を教育されるのと同時に一種の枠に入り、そこからどうにかはみ出そう模索するのでしょうが、ミラさんは最初から枠の外にいたのでしょうかね。

 

ミラ 枠の外!そう言われれば…そうかもしれないですね。行ったり来たり。

 

——リリースパーティも控えていますが、次の作品を作られる予定は?

 

ミラ また、少しずつ作りためています。創作意力が湧いているので、また面白いものが生み出せたらと。

 

——ゴンドウさんは“愚音堂”というレーベルをなされてから女性アーティストが続きましたが…

 

ゴンドウ そうだね。でも、これはたまたまだと思うけどね。どうも男性っていうとバンドが多くなっちゃうよね。

 

——今は個人レーベルをどんどん持つべき時代だとも言われています。ゴンドウさんはこれまでレーベルを運営されてきて、今をどう感じていますか?

 

ゴンドウ ああ、牧村(憲一)さんも言っているよね。

 

——そうですね。「1アーティスト1レーベル」。

 

ゴンドウ 今は自然と聞こえてくるもの以外、みんなが音楽をどんどん聴かなくなっちゃっているからね、僕も含めて。だから課題は(良い音楽を作ったら)どうやって人々に音楽を聴いてもらうか、じゃあないかな。

 

※2017/07/26文章修正済み

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【リリース情報】

タイトル:リボーン

アーティスト:ミラ・パラメータ

リリース日:2017/7/6

価格:¥2,000+税

レーベル:愚音堂