2017
08.03
ムラサキシジミ

【pick up】不思議系レトロポップ Cub Sport のジェンダーレスな魅力

ARTIST, BLOG, VIDEO

ファッションの世界でジェンダーレスという言葉が聞かれるようになって久しいが、音楽界でもその流れは着実に育っているようだ。オーストラリアの男女混成4人組ポップ・バンド、カブ・スポート(Cub Sport)の音楽性は、雄々しいとか女々しいとか、そういった「性別」を感じさせない不思議な魅力にあふれている。中性的な声質のボーカルもさることながら、気だるいアンビエント寄りのポップ全体を流れる空気が、ジェンダーという壁の先にある人間そのものを表現して、妙に人間臭い生々しさに満ちているのだ。

 

 

オーストラリア中東部の都市ブリスベン出身のカブ・スポートは、ティム(ボーカル)、ゾエ(ベース)、 サム(キーボード)、 ダン(ドラム)の4人で構成され(以前はアンディーというギタリストがいたが、現在メンバーとしてクレジットされていない)、2016年にデビューアルバム「ディス・イズ・アワー・ヴァイス(This is Our Vice)」をリリース。エモーショナルながら抑制の効いたポップサウンドはイギリスのBBCラジオやアメリカのKEXP、WXPNなどで高評価を博した。

同アルバムからのシングルカット「カモン・メス・ミー・アップ(Come On Mess Me Up)」は、イギリスの気鋭ロックバンド「The 1975」を率いるマシュー・ヒーリーの目にとまり、彼らの2016年のオーストラリア・アリーナツアーでカブ・スポートはサポートアクトを務めた。

 

 

また、新人アーティストの登竜門的な存在であるオーストラリアの朝のラジオ番組「Like A Version」(たいていの場合、オリジナルの他にアコースティックのカバー曲を披露する)にも出演、カニエ・ウェストの「ウルトラライト・ビーム」をカバーし、原曲とは異なるジェンダーレスなカブ・スポート風味でリスナーを魅了した。

 

 

 

そもそも「ジェンダーレス」とは、「男」と「女」という既成概念にとらわれない生き方のスタイルのこと。近年世界中で支持する人の増えているこの考え方は、強くマッチョな男性像も、可愛くセクシーな女性像も、拒否するというよりは無視して、純粋に個人個人の好みや性格に忠実な生活やファッションのスタイルを自由に選ぶことを意味している。性そのものの在り方にも変化がみられ、最近ではアメリカの歌手マイリー・サイラスがパンセクシュアル(恋愛対象の性別や趣向を限定しない人)であるとカミングアウトしたり、他にもLGBTQIを自称するアーティストは多い。

カブ・スポートのティムとサムはデビュー後、同性愛の恋人関係にあることを公表しているが、それもなんだかバンドの空気感にしっくりくる。同じくメンバーのゾエはその後、バンドのソーシャルメディア上やライブ会場などでホモフォビア(同性愛嫌悪)の人々に対し、安全なコミュニティー作りに努めている。オーストラリアは性的マイノリティーに比較的オープンな国だが、それは意見の多様性を認めるということでもあるのだ。

 

カブ・スポートは現在、セカンドアルバムのリリースに向け次のステップを進めているという。ポップをベースに、R&Bやソウルの要素を取り入れたという彼らの新作がどんな新境地を切り開くのか楽しみだ。

 

文 / 水田真梨

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