2017
08.29
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ポール・アブロ『アナザー・ウェイ・オブ・ビーイング』 – 遥かケープタウンの岬から届いた陽だまりのような歌 –

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ポール・アブロは南アフリカ出身のシンガーソングライターで、今も生まれ育った町ケープタウンで暮らしている。アフリカのアーティストというと強烈なアフロ・ビートを想像するかもしれないが、ポールの場合はそうではない。美しいメロディーと温もりのあるサウンドが彼の個性だ。

 

流れるようなコード進行に、吟味された言葉たち。じっくり時間をかけて作られたはずなのに、伝わってくる印象はとてもナチュラルなものだ。ポールのリラックスした歌を聴いていると、まるで陽だまりの中や、月明かりの下にいるような気持ちになる。

 

『アナザー・ウェイ・オブ・ビーイング』は、今のところ、ポール・アブロの唯一のフル・アルバムだ。すべての曲が美しいメロディーをもっている。ポールの最もすぐれた資質がソングライターとしての才能であることは間違いないだろう。オープニングの「エンジェルズ・コライド」を聴けば、彼が並のソングライターでないことはすぐにわかるはずだ。

 

 

ポールは油絵を描くみたいに歌を書く。じっくりと時間をかけて、ちょうど油絵に色を重ねていくように、メロディーと歌詞を微調整していくのだという。そうした丁寧さが、ポールの音楽を暖かみのあるものにしているのだと思う。ちなみに、アルバム・ジャケットのひまわりの絵はポール自身が描いたものだ。

 

これまでの人生で、ポールは1度音楽をやめている。17歳でアメリカへ留学し、歯科医学の博士号を取得したときだ。ポールにとって歯科医は生涯の仕事であり、今も手術をすることは珍しくないという。近年、ポールのように他の仕事を本業とする優れたミュージシャンが増えたと思う。

 

 

ポールが音楽活動を再開したのは、アメリカから帰国して数年後のことだった。4曲入りのミニ・アルバムを制作したところ、その歌は海を渡り、かつて生活したアメリカのカレッジ・ステーションで頻繁にオンエアされた。そのことが大きな自信となり、それ以来、ポールはマイ・ペースで音楽活動をつづけている。

 

『アナザー・ウェイ・オブ・ビーイング』では、「ファイアフライズ・ララバイ」という曲が、中盤とラストに登場する。子供たちに向けた短い子守唄で、ある意味アルバムのテーマと呼べる曲かもしれない。澄んだ音色のハーモニカが響き、ゆったりとしたポールのヴォーカルが美しいメロディーをなぞる。そこに大袈裟なものは何もなく、あるのは相手を思いやる心だけだ。

 

 

 

日々の暮らしの中で、僕は十分に誰かを思いやれているだろうか?ポール・アブロの歌を聴くたび、陽だまりの中や、月明かりの下にいるような気持ちになる。そして、僕の中で何かがほぐれ、溶け出し、やわらかくなるのだ。

 

 

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【リリース情報】
アルバム:『アナザー・ウェイ・オブ・ビーイング』(Another Way of Being)

アーティスト:ポール・アブロ(Paul Abro)

価格:2,190円+税

ライナーノーツ:宮井 章裕

歌詞対訳:佐藤 幸恵

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