2017
10.11
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【レポ】10.7 Predawn “Nectarian Night Tour 2017”

ARTIST, BLOG, LIVE

池袋の喧騒を背に目白方面に進むと、ぽっかりと時の止まったような一画が現れる。丁寧に手入れされた庭越しに見えるのは、左右に伸びる緑色の屋根に淡いクリーム色の外壁、幾何学的に直線の走る窓枠が印象的な、フランク・ロイド・ライト(帝国ホテルの設計などを手がけたアメリカの建築家)設計の自由学園明日館。土曜日ということもあり、ウェディングパーティが行われ、あたりは華やかな空気で満たされている。

道を挟んだ向かい側にもよく似た特徴をもつレトロモダンな建物があり、ここがPredawnの弾き語りワンマンライブの会場だ。約3年の改修工事を終えたばかりの講堂は、細部にまで宿る建築美に歴史の重さを残しながら、建設当時の美しさをとりもどしている。

昼頃まではぽつりぽつりと降っていた秋雨もすっかり止み、虫の声が聞こえ始めたころ、年季の入った会場の扉が開く。建物の中は、使い込まれた木の長椅子が並び、あたたかい光を放つ球状の明かりが左右均等に配置され、ステージ上の屋根の影がシンメトリーで美しい。

素朴でありながら美しい内装に見とれていると、足早にPredawn・清水が登場。はにかみながら「こんばんは、Predawnです。」と普段と変わらず短く挨拶し、ギターを爪引き始める。クラシカルなギターの運指に軽やかな歌声が重なるPredawnの最新曲「Deadwood(仮)」からワンマンライブがスタートした。

 

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今回のツアーはPredawnとしては初めてとなる弾き語りでのワンマンライブで、全国7箇所を回っている。本公演はちょうど折り返し地点の4本目にあたり、前売りチケットは早い段階でソールドアウトとなっていた。バンド編成でのワンマンライブは、昨年12月にリキッドルームで開催されたリリースツアーが記憶に新しい。セカンドアルバム『Absence』にはオルタナティブロック的な要素が色濃く出ており、Predawnの新たな可能性を感じ取れる内容だっただけに、「ライブハウス×バンド編成」という選択にも必然性があった。しかしながら、弾き語りでしか味わうことのできない、見ていてハラハラするような緊張感と、小柄で華奢な彼女から発せられる得も言えぬ凄みを帯びたステージもPredawnの魅力である。

 

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前半は「Keep Silence」や「Over the Rainbow」など、Predawnの持ち曲の中でも明るい曲がならび、少しずつ観客を引き込んでいく。途中のMCでは、「素敵なこの建物の雰囲気も楽しんでもらえたら嬉しいです」と話し、続いてスローテンポな「霞草」「JPS」などを演奏。建物自体の反響も心地よく、音数が少ないながらも豊かな響きに満たされていく。

中盤に差し掛かるあたりでギターを置くと、グランドピアノの前に座りなおす。今回のツアーでは、会場によってはピアノの弾き語りパートを設けており、通常のライブでは聴くことのできない曲も聴くことができる。「こんなところから失礼します」と話し、「In the Wee Small Hours of the Morning(フランク・シナトラ)」を弾き始めるが、キーが迷子になり断念。気を取り直して自身のピアノ曲「Sigh」を演奏し、ギターを抱え直す。「やっぱり、慣れないことはするものじゃないですね。」と恥ずかしそうに笑うと、先ほど演奏を断念した「In the Wee Small Hours of the Morning」をギターで演奏し始め、リベンジを果たした。

終盤に差し掛かると「みなさん、疲れませんか?もともと学校ということもあって椅子が直角ですよね。背筋がシャキーンて。」と、思わぬ角度から観客を気遣う清水のMCに、会場全体の空気がふわっと緩む。演奏中の凜とした雰囲気と、ふにゃっとしたMCのギャップも彼女の魅力だ。

 

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絶望から光を見出す”祈り”のような「Hope & Peace」や、Predawnの曲の中でもひときわエモーショナルな「Universal Mind」を力強く演奏し、観客の集中力も一気に高まる。最後は、季節的にもぴったりの「Autumn Moon」を演奏し本編が終了。

アンコールの拍手に応え、再登場した清水は「よいお酒を飲んで良い夜をお過ごしください。おやすみなさい。」と言うと、会場の窓から街灯が覗く中、「Lullaby from Street Lights」を演奏し、逃げるように小走りでステージを後にした。どこまでもPredawnの魅力に酔いしれる濃密な秋の夜だった。

 

文 / 平野眞由美 

写真 / 山川哲矢