2017
10.13
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スコット・フィッシャー『ステップ・イントゥ・ザ・フューチャー』~メロディーの向こう側にある情熱〜

ARTIST, BLOG

このアルバムが発売されてから10年がたったことに、まず驚かされる。たくさん売れたアルバムではなかったが、一部の人達にとっては今も記憶に残る作品なのではないだろうか?

スコット・フィッシャーの個性は、美しいメロディーの向こう側に「熱っぽさ」が感じられるところだった。情熱的で、束縛がなく、自在だ。その1点において、スコットは他のシンガーソングライターとは一線を画していた。

タイトル・チューンの「ステップ・イントゥ・ザ・フューチャー」は、そんなスコットの魅力が凝縮されたナンバーだ。変則的に弾むリズム、ジャズ的なピアノ・プレイ、タメを効かせたヴォーカル、意図的に作られた隙間。知性的な演奏でありながら、曲が進むにつれ熱が充満していくのがわかる。「未来へ進むか、それとも死か」というフレーズが繰り返され、「ラジオでは体制に逆らう音楽は流されない」という言葉で締めくくられる。

 

 

スコットが音楽に向かう姿勢は、とても自由だ。それは彼がジャム・バンドの出身であることと無関係ではないだろうし、演奏力の高さも納得がいく。そんなスコットがバンドをやめてソロ・アーティストに転向したのは、メロディーメーカーとしての優れた才能と、魅力的な声をもっていたからだ。

そういう意味では、スコットの音楽はあまりシンガーソングライター的ではないのかもしれない。内省的と呼ぶにはリアリティーがありすぎるのだ。スコットの気持ちは常に外へと向かっているし、音楽もその分タフだ。「アトモスフィア」での疾走感と強烈なバックビートはその表れだろう。まさに白眉の1曲だと言える。

 

 

10年前、僕は新しい時代のシンガーソングライターをさがしていた。優しいだけでなく、この世界を生き抜くだけのタフさをもった音楽を。普遍性があり、知性と情熱が共存しているサウンドを。言いたいことがはっきりしていて、立ち位置が明確なアーティストを。

そして、僕もまた新しい扉を開こうとしていた。これまでとは違う手段で世界と対峙し、前に進もうとしていた時期だった。そのためには、自分の中の何かを変えるだけでなく、これまでやってきたことに自信をもつ必要があった。スコットの歌を聴いたのは、そんな時だった。

『ステップ・イントゥ・ザ・フューチャー』は、今も僕を揺さぶる。突き飛ばすのではなく、静かに揺さぶる。そのたびに僕は目を覚ます。思えば、ずっとそんなことを繰り返してきたような気がする。

 

 

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【リリース情報】
アルバム:『ステップ・イントゥ・ザ・フューチャー』(Step into the Future)

アーティスト:スコット.フィッシャー&1a.m.アプローチ(Scott Fisher&1a.m.Aproach)

価格:2,381円+税

ライナーノーツ:宮井 章裕

歌詞対訳:佐藤 幸恵

<購入・試聴>

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