2017
10.15
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【特集】考察・ミムラス内藤彰子 「SQUAME」

ARTIST, BLOG, INTERVIEW, NEWS, RELEASE

 

「ミムラス内藤彰子さん、今晩は。新しいアルバムができたみたいですね!ずっと待っていましたよ、ずっと。」

 

真夜中に僕は心を躍らせていた。何しろ彼女のフルアルバムが完成したのだから。ミムラス内藤彰子名義のアルバムは2015年8月以来となるわけだが、今作「SQUAME(スクエイム)」では自主レーベル「kwaz label」からリリースされる。友達に手作りの贈り物をプレゼントするようなノリで送ってくれた本作「SQUAME(スクエイム)」を聴いてすぐに、音楽家としてのミムラス内藤彰子に劇的な“何か”が起きたことを受け取った。

 

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“鱗”を意味する本作は、彼女自身の怯懦な心を意味しているそうだ。例えば長く居座っていたインナーチャイルドを癒すために、あるいは目配せしがちな音楽マーケットで逞しく在るために。 重ねてきた立派な鱗を少しずつ、但し一枚残らず剥がすために出来た“決意”の作品でもあるようだ。

だから前作の「Fragement&waves」に見られるような、整頓されたポップスはどこにも見当たらず、むしろ本作を聴けば聴くほど、持ち前のメロディとハーモニーを嬉しそうに汚す彼女の笑顔が想像されることが、泣けるほど嬉しかった。

 

「前作をリリースした後も色々ありましたよ。自分らしくやろうと思ったら、離れていく人もいっぱいいた。でも、こうやって続けていくと残った人もいますよね。」

 

 

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本作は、盟友・立井幹也(Dr.)、山中勇哉(Gt.)と千葉県の潮風漂うスタジオに篭り「SQUAME」の輪郭が塗られるように生まれた。

「HOSONOVA」を源流に感じるような、DIYの歪さやノイズの残るサウンド、ヴォーカルに身近な音を重ねた 素朴な情景づくりが特に印象的で、1曲目「新しい春が呼んでるーA NEW SPRING IS CALLING」では、その場にあるホウキで踊るがまま、音と同時に“楽しさ”という感情を重ねる自然な“手法”から、ミムラス内藤彰子らしい思い切りの良さが伺えて微笑ましい。一体、ここに到るまでに何があったというのか。

 

ミムラス内藤彰子は、物質的な仕組みの今世で長らく苦しみながら、ある日オランダへ2度も旅立った。そこで多様性にあふれた生活を受け入れた人々を目の当たりにして、ミムラス内藤彰子の覚醒が起きた。

 

—「もっとこうだったら良いのに」という添削をやめる代わりに、自分の音楽をただ突き詰めていく。こうして丁寧に出来た作品だから、一つ取材をしてもらおう、とも思える。これが“私”なんですよね—

 

 

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本作では、英語詞曲1曲の他にオランダに住むシンガーのティム・トレファーズをゲストに迎えたオランダ語詞の歌も1曲収録されている。これまで日本語で歌ってきた彼女が言葉を変える理由は一つ、友愛の“証”だという。

 

 

 

歌詞の話題が出れば、ソングライティング自体にも触れておきたい。いつもながらのマイルドなポップワークにエモい歌詞。その中に隠し入れた彼女の太い芯のとおった“ロック”たる詩想には、極めて個人的な思いから成り立っていると感じ取り、信服する。しかも、これだけのポピュラー性でありながら、あざとさも凡庸性も押し付けがましさも感じさせない作品が他にあるだろうか。相当漁っても見つかるまい。

 

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-朝も昼も夜も 私はすでに幸せだった-

 

最後にご紹介するのは本作10曲目「ALREDY」の一説。ミムラス内藤彰子は、2017年にして遂にこの言葉を拾った。

僕は、音楽を嗜む一人のファンとして、彼女の最新アルバム「SQUAME(スクエイム)」が、現在における彼女の最高傑作であると言い切りたいし、2017年に誕生した良作として正式にご紹介したいと思います。

ポップスは、赤裸々かつファッショナブルであるほど麗しき。

 

 

取材・文・写真 =田中サユカ

 

【リリース情報】

タイトル:SQUAME

アーティスト:ミムラス内藤彰子

リリース日:2017/10/25

価格:¥2,000+税

レーベル:kwaz label