2017
10.29
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【INTERVIEW】Day and Buffalo「今回のドレスコードは付き合いの長い服。」

ARTIST, BLOG, RELEASE, VIDEO

異色の音楽家・森逹希によるバンド Day and Buffaloが、フリーペーパーでリリースをするなどと半ば“罠”みたいなことを言うものだから、僕はまんまと引っかかって 音楽家としての仕事である“音”との関係性を探りに出かけた。

さて、実際に手に取ってみるとフリーペーパーと言うよりは豪華(無料)ブックレット。10周年を迎えたDay and Buffaloのメモリアル企画とも呼べるような充実した中身で、歴代メンバーとのビジュアル写真が並ぶページを眺めながら、舵を取り続けてきた森逹希は静かに笑っていた。

本インタビューでも語られているが、Day and Buffaloは他人の創作意欲や芸術に対して常にオープンだ。今回のプロジェクトも、写真や文字、VJやアートスペースなどの様々な個性が混合するアートソサエティーについてユニークに提案をしている。それに向けては”恐れ”や”構え”どころか”偶然”を歓迎する“覚悟”が最初から備わっているような気がして、僕はふとこんなことを思ったのだ。

(市場に並ぶ作品も含めて) 表現する者が表現することに対して 誰かの評価や反応を意識しすぎている気質の意外と多いこと—— 森逹希と言う人物はそういった意味でも真のアーティストだと思ったのだった。

Day and Buffalo、10年。それにしても本アルバムも孤高のグランジ・ドリーム・シューゲイズ・ポップ…汚美学を慈しみたもう、絶品です。

写真・取材・文 =田中 サユカ

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——今回は“フリーペーパー”でのリリースということで、どんなものかと思って来たのですが、フリーペーパー、web上のアルバム、それと同時に公開されている物語が一度に楽しめる仕組みですね。

 

達希 そうです。Day and Buffaloというのは、僕以外のメンバーが色々と変わって行くバンドなんですけど、その時々のメンバーで時代に合わせた面白いことを追求するのがこのバンドのテーマなんじゃないかとも思っているんです。

今はこの作品のために入ってくれたシンガーの女の子(桑原麗子)がいるんですけど、その子の友達がすごく若いんですよね。で、その子達に今の音楽の聴き方について話を聞いたりするんです。それから、僕は市役所などで音楽を教える先生もやっているんですけど、そこでも若い世代の音楽の聴き方について話を聞いたりするんです。

 

 

達希 それで、話を聞いていてなんとなく感じたのは「多分、僕らが若かった頃よりも全然お金がないんだろうな」っていうこと。

 

——今話題に出ている“若い世代”というのは、年齢的にどれくらいですか?

 

達希 小学生から高校・大学を卒業したあたりまでの世代の子ですね。昔だったらバイトをバンバンやってお金を稼いでっていうイメージだったんですけど今の子たちは「意外にみんな金ないぞ?」っていうことに気づいた。

 

——例えばどういった場面で感じますか?

 

達希 遊びに行くにしてもまずお金がない。ライブハウスに行くにも二千円出すのは結構なハードルかもしれないな、と。それに、僕らはCDを買うのは当たり前なんですけど、今の若い子たちからすれば、CDを買うことが当たり前じゃなくなって来ていることをすごく感じるんです。だから「バッファローさん、すごく格好よかったです!」って気に入ってくれても、CDを買うんじゃなくて「YouTubeとかはないんですか?」と言ってくる。となると、僕らの稼げるところはなんだろう?と思う。でもそれで成功している人って、ユーチューバーみたいにタダで全部見せて、広告でお金を稼ぐ人。そこでミュージシャンでもそういうことができないかと思って作ったのが今回のフリーペーパーなんです。

 

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達希 このフリーペーパーには写真や文章もあり、QRコードもあるので、ここから音楽を聴くことができるし、web小説に飛んで読むこともできる。

制作費は後ろのページにある8社くらい。ライブハウスや洋服屋さん、カフェなどジャンルも色々です。この広告を含めたフリーペーパーは、フリーだからみんなに渡せるんですよね。だから若い子たちと電子的なもののやりとりだけではなく物を通して触れ合う機会になる。そういう作品になればいいな、と思って作ったんですよね。

 

——この広告には自由にコラムや写真なども掲載されていますね。

 

達希 なるべく自分たち(Day and Buffalo)とは関係ないもので、今自分が一番面白いと感じるものをリクエストしたんです。A-FILEのキシモトさんが動物園について書いて来た時は「本当に最高だな!」って思いましたね(笑)。こういうスピリットが僕は大好きです。

 

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——そもそもこういった広告営業を経ての制作活動は初めてのことではありませんか?

 

達希 初めてです。でもCDが売れなくなっている時代に「こういう面白い方法もあるよ」と示せたらいいと思う。それに若い世代に僕らは繋げていかなきゃいけないとも思うんです。

 

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達希 資金集めの方法としてはクラウドファンディングという方法があるけど、それも「自分たちにお金を出して!」というアピールでしかない。でも僕たちは集めた資金を「どうせやるならみんなで面白いことをシェアして楽しもう!」という発想なんです。

 

——なるほど。このフリーペーパーを早速拝見していますが、一般的なフリーペーパーというイメージでは勿体ないボリュームと内容ですね。どちらかというとブックレット。

 

達希 そうなんです。紙質もこだわっているし、フリーと聞いてびっくりするような内容にしようと思って作りました。

 

——音楽とセットで小説も発表されていますが、これが意外とレアな体験でして、様々な楽しみ方が生まれますね。

まず 音楽を先にかけてから読むかどうか、という選択。或いは音楽をつけずに読み始めた場合、小説のどの部分でどのトラックのキューを出すのかが各々の判断によりますので、その辺りでも物語や音楽のイメージに変化が生じる。そう言った制約が明記されていないぶん、実際に私も何度も読み返しながら音楽を拝聴したのですが、作者として「こう聴いてほしい」というガイドや要望はありますか?

 

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達希 完全に自由だと思いますね。かけ流して読んでもいいし、むしろかけ流しながら読むのが一番理想なのかもしれない。音源を覚えてもらったら、頭の中で自分で演出してもらってもいいんじゃないかな。

 

——それは確かに面白かったですね。例えばシェルターの嘘を悟って笑みがこぼれるシーン。ここでは4曲めの「LIFE IN VAIN」が理想ではないか?と個人的に閃く体験が新鮮でしたね。

 

 

達希 僕としては、聴いている人がどう使ってくれても嬉しい。作ったお蕎麦をつゆにつけて食べてもいいし、塩で食べてもいい、そんな気持ちです。

 

——本作が出来たのはTHIRTY THREE RECORDとセッションをした成果によるものと伺いましたが?

 

達希 雰囲気の良い倉庫があって、そこでレコーディングとかができるけど、そこの人達は、気に入った人たちとしか活動しない、ということでまずは紹介されました。そしたら僕らの音楽を気に入ってくれて、セッションをすることになったんです。

 

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達希 実際に現場に行ったら向こうはかなり積極的で、いきなり「今日は何曲やるか決めましょう!」ってことになった。前から今日は何か面白くなると思っていて、カメラマンのナッキさん(藤井 夏樹)とVJ マナコさん(守屋最愛子)と、記事を書いてくれるA-FILEのキシモト(岸本)さんも呼んでました。僕らはみんなで、酒でも飲みながら軽くセッションするくらいの気でいたから「なんだかすごいことになってきちゃったなあ〜」と思いながらレコーディングしましたね。

 

 

達希 ちょうどその頃、実は僕もこっそりと小説の一話目を書いていたんですよね。それも持ち寄って全体を見たら、実際は全てが今回の音楽の世界観とマッチしていた。これはすごく面白いから、みんなでフリーペーパーにして面白いものを作ろう!と決心しましたね。

 

——そこで関わっている人々の名前が物語に登場していますね。

 

達希 名前とビジュアル的なイメージが僕の中でほぼ一致しているんですけど、話がつまらなくなってしまうので、性格はガラリと変えましたね。

 

——達希さんは物語を書くのは今回が初めてですか?

 

達希 はい、初めてです。

 

——文体がスマホ読者に向けた書き方で、誰かのブログを読む感覚でスラスラとスクロールして読める構造で新鮮でした。物語を書こうと思ったきっかけは?

 

達希 もう僕は「どうしたら音楽を聴いてもらえるんだろう」ということだけ!今回も「小説を書きました、音楽のための!」と言えば、ちょっとは興味を持ってもらえるかな、と。だから僕はあくまでミュージシャンなんです。

 

——その物語の中にはもちろん“音楽”が登場しますね。

 

達希 そう、音楽は素晴らしい!とね(笑)。ミュージシャンが言わなければ誰が言うんだ(笑)。

 

——物語はシェルターの中の世界と外の世界を描いたものですが、それは我々の日常と似た感覚でもあるのでは?と、作品を通して感じました。

 

達希 僕も海外に住んでいた人間なので、日本という国を多少客観的に見たときに、ほんのりとシェルター感を感じますね。普通に生命を維持するには天国みたいな国だなってよく思います。でも、自由に発想・発信していくにはすごく苦しさを感じる。

 

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達希 でもまあ、深く考えずに漫画感覚で楽しんでもらえたらいいなって思います。それに写真がまた、小説に出てくる登場人物たちにぴったりで、そこも見てもらいたい。シェルター感がすごくある。

 

——そうですね。音楽、物語、そして写真を見ていても感じますが、今回の作品は「光」が一つのキーワードのようにも思えます。特にビジュアル面ではヴォーカルの桑原麗子さんが積極的にイメージとして登場しますね。

 

達希 この子は僕が今話しているようなことがわかってくれるような子ですね。バンドでは歌を歌ってくれていますが、元々は歌う子ではない子で、ライブハウスで見かけた子なんですよ。声をかけて話し込んで見たら、良い感じに(感覚が)ぶっ飛んでいて「こういう子に歌ってほしい!」と思った。気がついたらもう2年も一緒に歌ってくれている。

 

——設定が22世紀以降のイメージでありながら高度成長期以前のモチーフも印象的ですね。

 

達希 そうなんです!“レトロフューチャー”がイメージなんですよ。で、実はこの作品を作りながら次の作品も半分くらい出来ているんですけど、それもレトロフューチャーな感じ。それは来年の3月くらいに今度はレコードで出そうと思っています。11月2日にシングルで出そうと思っているこの曲も倉庫内で演奏をしているイメージで、レトロフューチャーな曲です。

 

——(聴いてみて)…やっぱりカッコいい!Day and Buffaloは。最近発表される曲はさらに透明感がノイズの中で際立っていて美しさが増している気がしますが、それはメンバーによるものですか?

 

達希 多分そうですね。彼らと一緒にやっていると、シンプルなディテールにどんどんなっていっている感じがしますね。多分、同じ曲を弾かせても(プレイヤーによって)全然違う。

 

——それがDay and Buffaloの最大の魅力ですね。

 

達希 そうですね。それが(Day and Buffaloの)面白いところでもあるし、お客さんがつき辛いところでもある。メンバーが替わる毎にお客さんが一から入れ替わりますから。

 

——一貫して変わらないのはノイズとエレクトロニカから摘出するポップメロディの美しさ。これはどこから?

 

達希 僕はもともとジャズをずっとやっていたんですけど、ロンドンに居た2006年から2007年くらいはアンビエントとかノイズのカルチャーが広まっている時期だった。僕はそれにかなりカルチャーショックを受けたんですよね。それからノイズを取り入れるようにしたんです。

 

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達希 でも、僕はどちらかと言うとポップスのほうが好きなんですよ。だから、こう見えても僕は自分のことを「ポップミュージシャンです」って言い続けているんです。確かに“J”はつかないかもしれないけど(笑)。

 

——こんなことを言うのはアレですが、ポップにしては鋭くて、刺さりまくって痛いですよ。楽園と地獄のスレスレを行き来しているような際どさがある。ここまでハードで大衆的な感じは…

 

達希 いやいや、そんなことはないですよ!「ポップ」です。“キャッチ&キャッチー”ですよ(笑)!

 

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——それから、作品からは尋常じゃない“エネルギー”を感じますよね。

 

達希 それはなんだろうな。僕は音楽家でもあるけどベーシストとしての自分を大事にしていて、15歳の時にイギリスに渡った時から一日もベースを弾かなかった日はないんです。バイトをしていても、それが出来ない仕事なら辞めるべきだと考えてきた。

 

——その熱量が作品の温度を直にあげているのでしょうか。その頃のベースを今も愛用されている?

 

達希 もちろん!ずっと白のフェンダーですね。名前は“ベッチー”くん。でもその子を酷使しすぎるとかわいそうだから、他にも予備で何台か置いていますけどね。

 

——小説冒頭の「死後の世界が何よりも自由」と言う一節もかなりのインパクトがありました。

 

達希 これは前の作品の名残なんです。前の作品は「Ghost Walk」って言うんですけど、それも変わったギミックを使っていて、CDをSONY製のデッキで1曲目を再生しながらずっと巻き戻しボタンを押すと、逆再生の音とともにマイナストラックになるんですよ。

そこに4曲入れているんですけど、その作品が「死んでしまった後の世界はすごく楽しいのに、生きていた頃のことばっかり気にして死後の世界を楽しめない」と言うテーマを表現したものだった。

 

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達希 “精神世界”ってものすごく自由じゃないですか。死んでしまって“魂”になった瞬間っていうのは、全く無かもしれないけど、肉体がなく 想像力だけの世界が待っているんだとしたら、ものすごい自由なものが待っているんじゃないかって思うんですよね。だから結構僕は(死後の世界に)ワクワクしています。

それに僕が思う「地獄」っていうのは、生前凝り固まった価値観のままいれば生まれ変わってもその世界でしか楽しめない状態のことなんじゃないかなって思う。でも毎日を楽しく過ごしていて人に優しくして生きていたら、そういう人たちが集まってきて、楽しいことができる。

 

——それはまさに今の“状態”ではありませんか?

 

達希 そう。いろんな人たちと良いものを共有していくーそれが本当のユートピアなんじゃないかな。そう過ごしていたらすごく幸せな日々が送れる。

 

 

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act:Day and Buffalo / 笹口騒音&ニューオリンピクス / くふき / 俚謡山脈

Day and Buffalo オフィシャルサイト