2018
03.28

T-Rell ~ラップと音楽のクロスオーバー性を語る時

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オバマ政権以降と言うべきか、SNSの流行以降と言うべきか、理由は何であれ近年のアメリカのヒップホップシーンはあらゆる点において「ボーダーレス化」が進んでいる。東海岸、西海岸、南部等で分けることが出来たサウンドの地域性も薄まってきているし、かつて無いほどに白人ラッパー達の存在感も増してきている。そして何より、ラップと歌の境界線が無くなってきているのも大きなポイントと言えるだろう。

歌うようなフロウを聴かせるラッパー、ラップのような歌を聴かせるR&Bシンガー・・・チャートインしている曲をざっとチェックするだけでも思い当たるアーティストがいるはずだ。

 

そんなシーンの流れを受けてか、ラッパーなのかシンガーなのか益々分からなくなりそうなスタイルで頭角を現してきたアーティスト、T-Rellという男が面白い。

 

 

 

 

彼の不思議な一人二役ぶりは、この「I Got To」で存分に堪能出来る。冒頭からソウル色濃厚なコッテリとした歌声を聴かせたかと思うと、まるで別のラッパーが登場したかのように彼のラップが始まる。更に声質が似ているBoosie Badazzが客演していることもあり、耳からの情報だけでは何人が参加している曲なのか分からない面白さもある。

 

 

 

 

 

中西部はカンザス州トピカ出身のT-Rell。ライブバンドのシンガーであった母親の影響で4歳から歌い始めたようで、そういった意味ではどちらかと言うとシンガーよりの立場だろうか。同じくBoosieとの2015年にリリースされた「My Dawg」では、メジャー勢顔負けのブルージーな歌声を聴かせる。一曲の中でここまで歌もラップもこなしてしまうアーティストはかなり珍しいタイプだろう。

 

 

 

 

 

一方最新ミュージックビデオである「Issues」では、ラップらしいラップは客演のMoneybagg Yoに任せ、自身はシンガー役に徹する。ダークでメロディアスなTrap系ビートを、水を得た魚のように乗りこなす主役と、決して器用とは言えない無骨なフロウで突き進むMoneybagg Yo。両者の対照的なスタイルが上手く作用し合った、痛快な一曲だ。

 

 

 

今年1月にはデビューアルバムである” Can’t Stop Me”をリリース。今回ご紹介した3曲の他にもメロディアスな曲が満載で、ゲストもPaul Wall、Ampichino、Kevin Gates等なかなかの顔ぶれ。

歌もラップもこなせる起用さ、早くもベテラン勢との繋がりもあることから、今後客演としてもT-Rellの声を耳にする機会が増えそうだ。

日本のメディア等ではまだ全くと言っていい程知られていない存在のこの男。今のうちに是非チェックしてみて欲しい。

 

                               文=Kaytee Da Shade