2018
04.18

【INTERVIEW】師弟TUNE「音楽がどんなだろうと、自分を表現するというのが目的」

ARTIST, INTERVIEW, RELEASE

一瞬にして虜になる作品というものがありますが、2018年の初「虜」は師弟TUNEの1stフルアルバム「卒業」でした。一見企画モノを思わせるようなあざといキャラクター性に騙されまいと構えながらの出会いではありましたが、ヨレヨレのフライヤーに同封されたアルバム「卒業」は、狙い撃ちされたポップでありながらも、膨大なロック/ポップアーカイブの中から選び抜かれたセンテンスが根を張りめぐらしていて、その上に若手ならではの無防備な“いなたさ”さえも恐れずにぶつけてくるのです。そのアーティスト姿勢、と言うべきか人柄というべきか に、とにかく撃ち抜かれてしまいました。しかも、この二人は関係が深くなればなるほどにより突き抜けてくるのでしょう。

すぐに夢中になった私は、あまりにも艶やかなヴォーカルに親しみを感じながらも、准教授があのミスター・ネガティヴ「柴山一幸」さんだと気づくまでに少し時間がかかってしまったほどでした。

とにかくヘビロテしました。渇望した異なる2種類のロックが、ありふれたはずの音の中で眩いほどに光り輝いています。

今回は初・インタビューなので「師弟TUNE」なるデュオが一体どんなアーティストなのかを中心に伺っていますが、この後は是非、作品の温度に触れてみてください。

 

取材・写真・文=田中サユカ

 

准教授 名古屋の某私立大学で准教授をやりつつ、シンガーソングライターとして活動しています。そのライブをデシベルが観に来てくれて。その後学生たちと音楽の話をざっくばらんにしてたんですけど、今の学生ってボカロとかアニソンが圧倒的に多い中で(デシベルとは)オールドロックとか、90年代のギターロックとかの話ができたので、その時に彼に興味を持ったのが(師弟TUNEを結成する)キッカケですね。まあ、俺に話を合わせてくれただけかもしれないけど(笑)。

 

デシベル 准教授のことは存じていたんですけど(准教授の)授業は高学年向けの専門的な授業だったので、当時大学2年の僕はまだ取れなかったんです。でも、講義を受けている先輩から准教授のライブに誘ってもらって、それでライブに行けたんですよね。

 

——当時、デシベルさんの目には准教授のライブがどのように映りましたか?

 

デシベル 実際にライブを観るまでは、准教授がどんな音楽をやっているのか全く知らなかったんですけど、僕はロックが好きだったので「これをロックと言わないで何をロックと言うんだ!」と言うような衝撃を受けましたね。こういうものを生で観られると思わなかったし、ましてやうちの大学の先生だって言うのも衝撃的でした。

 

——特にどんな部分でロックを感じましたか?

 

デシベル ギターの弦が切れるまで弾いて、最後にはマイクだけにしちゃったり。客席との距離感も、普通に気取って歌ってるんじゃなくて、身近に感じたし、その人の内から出ているのものを表そうとしているのが、目に見えてわかったんです。本質的なロックとか、誰かに訴えかけるとはこう言うことなんじゃないかって思っていたことを目の前で観ることができてすごく衝撃的でした。

僕は(師弟TUNEを組むまでは)バンドを組んだこともないですし、自分で曲を作り始めたのも大学に入ってからなので、これまではいち普通のリスナーでした。

 

 

准教授 うちの大学は音大じゃないけど、コンピューターミュージックの講義が一年生からあって、デシベルはそこで音楽を初めて作ったんだよね。スタジオではもちろんPro Toolsを使うんだけど、今だとMacのGarage Bandを使って作りますね。

僕がソロ活動をして来た中で、従来の形で同じアルバムを作るっていうイメージが沸かなかったんです。何か新しいことをしたかったんです。

今のファン層から普通の中学生とかもっと広い世代に拡げたかった。そのタイミングで「こいつ(デシベル)と演ると面白いかも!?って思ったのと同時に(デシベルに)「ユニットやるぞ!」て、許可も取らずに、ね(笑)。

 

——シンガーソングライターとして准教授の音っていうのは、オールドロックからジャズロックの中で育った、メロディの美しいものを中心に練られた曲が多かったですね。

 

准教授 そうですね、テンションも結構使ってますしね。

 

——しかし今回の作品は全く別物として受け入れられたっていうのは、カプセルが出現した2000年以降あたりのアプリケーションを網羅してスーパーサイヤ人化した准教授(柴山一幸)っていう衝撃でした。でもこれまでを封印したわけでもない絶妙なバランス感覚が、この作品を素通りさせない最大の魅力でもあると思うんです。

国内のあるシーンでは60年代日本語ロックから80年代フュージョンポップあたりまでが若い世代によって再び見直されてきた中で、ルーツを辿った上で作られた音や響きを持った現代ポップ、と言うのも印象的でした。

 

 

准教授 僕がソロでやっていた頃は“ルーツ”しかなかったから、人によってはマニアック過ぎて入って来れなかったのかもしれない。それが師弟TUNEのポップなサウンドによって間口が広がったのかな。

今のシティポップって言うのは僕の年代から聴いたらうわべだけの感じがすることもある。でもその雰囲気ってのが大切で、師弟TUNEの音がそんな風に聴かれるなら、それは悪いことじゃないよね。

 

——それに師弟アルバムみたいなのってたまにあるじゃないですか。でもそれのどれもが師匠に合わせた感があるのは当然といえば当然で、でもこの姉弟アルバム(TUNE)は、常に対等である、というところも、(准教授の)素晴らしさだと思うのです。これって師のマインドが相当開けてないとできない。

 

准教授 だって、デシベル、全然俺のこと尊敬してないもんね(笑)。

 

一同笑

 

准教授 でも、オープンはオープンだよね。確かに僕は、ガチガチに「こういうことをやるからお前はこういうことをやれ!」っていうようなタイプではない。僕が選んだ時点でそいつをアーティストとして認めているわけだから、彼らから自然に出たものが欲しい。ただ、若い頃はメンバーにフレーズ一つで無茶苦茶指図をしていた(笑)!でもそれって疲れちゃうし、良い結果にはならなかった。ある時から自由にやってもらった方が良いって気づいたんだよね。

だから、今回のレコーディングでもデシベルが信じて良いと思っているものを受け入れてやろうっていう考えで作ったんだよ。

 

——この作品は一貫して准教授が歌われていますよね。それにこれまでのスピリッツも(特に後半にかけて)しっかり乗っている。「シンガーソングライター柴山一幸」をデシベルさんが全面プロヂュースした、という受け取り方もできると思います。

 

デシベル これまでの(准教授の)作品も聴いていますし、いざ一緒にやろうっていうことになって、正直どうしようかなって思いましたね。

僕が一人で作るのとは違うから、どう合わせようかなとか、アイディアをもらって「ここでこう来るんだ…!」って、困ったこともありました。でも、僕はそこでいつも准教授の意図が読めたから、それを僕らの世代にもわかりやすく新しいものとして伝えるようにベクトルを変えて作ることができたんです。

 

准教授 通訳してくれているんだよね。

 

 

——実際に実曲作りはどのような工程で作られましたか?

 

准教授 まずはイメージの元となる曲を用意して「こういう感じに作ってくれる?」って、トラックのオーダーをする。それに僕がメロディを加えたり、展開部分を作ってデシベルに渡す。そしたらデシベルがちょっとずつデシベル流に変えて渡す。そういうキャッチボールみたいな作り方だったよね。

 

——1曲めはクラブ世代のダンスチューンから始まり、ラストの90年代ポップ調まで、様々な音楽性がバラエティ豊かに盛り込まれていますね。アルバム作品としては一曲一曲単体で作ったものをまとめたようにも受け取れますし…。

 

准教授 そう、一曲一曲単体で作っていった。これには理由があって、最初はジャンルを絞って狙おうと思って作っていたんですけど、途中で「自分たちが本当に好きな音楽はなんだ?」って改めて考えた時、よくわからなくなった(笑)じゃあ、楽曲は色々混ざっていても准教授とデシベルというキャラクターがブレなければいいよねっ、てことに最終的に気づいたんだ。これについてはすごくよく話した。

 

 

准教授 例えば「恋のQ&A」とかに象徴されるような学園モノなんかを最初に作っていって、流石にそればっかりじゃあ…って、少しずつ違うのも作るようになったんだ。

 

——例えば、3曲目「教訓」は80年代後半に聴かれたようなビートやギター。

 

准教授 これはデシベルのオケだよね。確かに新鮮だよね。

 

デシベル もともと僕はギターリフが好きなんですよ。でも出て来るものは昔のものばかり出てきちゃう。それをいまの音楽に合わせたらどうなるのかっていうのがこの作品だった。ドクターフィールグッドなどのパブロックをベースに、パブロックを知っている大人にはシンセを加え新鮮な感じに受け取ってもらって、若い世代には今は珍しいギターリフで新鮮に受け取ってもらうっていう、掛け合わせですね。

 

——准教授のこれまでのファンは柴山一幸の美しいメロディや艶のあるヴォーカル、芯の通った歌詞も好きだったと思うんです。しかし歌詞や歌い方、メロディの役割や受け止め方も随分と多様化してきた中で今作ができ上がったような気がします。サウンド化された歌詞、分裂化したメロティについて、准教授はどう受け止めて来られたんですか?

 

准教授 確かに最初は違和感があったけれど、最終的にはメロディや歌詞が乗せやすいと思えるようになりましたね。 シンプルだからこそ乗せやすいんだって思えました。究極、音楽がどんなだろうと自分を表現するというのが目的なわけだから、デシベルもそうだと思うんだけど…それに関してはうまくいったと思います。

 

 

——そしてこの「師弟TUNE」についてですが、これは完全に企画として割り切っておられるのか否か。この際、この傑作を目の前にしてどうでも良いことではありますが、この際、はっきりご当人達の自覚を伺っておきたい。

 

准教授 それはもう最初から「いつかソロに戻るにしても、僕は本気でやるから。」って、デシベルに言ったよな。僕にとってこれ(師弟TUNE)はあくまでも柴山一幸の延長でデシベルがいないと今の柴山一幸が成り立たない。そういう考え方です。

 

デシベル はい、人間的にはどうかと思いますが、音楽家としては尊敬していますので今のところ准教授について行きたいと思います(笑)

 

一同笑

 

【リリース情報】

アーティスト・師弟TUNE

アルバム:卒業

リリース日:2/21/2018

価格:¥2500(税抜き)

発売:NICO MUSIC

販売:ULTRA-VYBE, INC

品番:NICO-6

 

師弟TUNE

Web