2018
05.22

【INTERVIEW】王舟とBIOMAN。新しい相手、新しい場所、新しいレーベル —あえて選んだから見えたこと。

ARTIST, INTERVIEW, NEWS, RELEASE, 未分類

BIOMANと王舟が、イタリア中部に住む音楽仲間、マッティア・コレッティのアトリエで、インストアルバム「Villa Tereze」を完成させて帰国しました。その作品を聴いて、多くの人が「こう交わったのか!」と新しい発見をするかもしれませんよ。

私自身も大変勉強になりました。これまでの作品上では全く異なる風味(音色)と鼓動(ビート)を持っているはずの二人が、実はより高い次元でほぼ同じ空気量で同じリズムで呼吸をしていたことに気づけたからです。

それがより明確に映った最大のスパイスは、確かにイタリアという、気質的にも異なる空間で音作りをしたことなのかもしれません。これは感覚を信頼した二人ならではの、深い深い発見でありましょう。私はあえて、これこそを「ニューエイジ」と呼びたい!

さて、今作でも香る欧州独特の冷たい温度感の源泉はどこなのか。その謎をさらに深めながら、今作を羽ばたかせるべく奔放なインタビューを敢行しましたので、どうぞ楽しくご一読ください。

 

取材・写真・文=田中サユカ

 

 

——以前、王舟さんには個人的な案件でフランスのジャン・ガブリエル監督の映画作品に使用する音楽で協力していただいたんですけど、その後の上映情報などをリクエストしたものの、その連絡が来なくて本当に困りました。…海外の方とのやりとりする際のポイントって何かありますか。

 

BIOMAN   やってほしいことがあったら言わなあきませんね。

 

王舟 多分、相手の出方を待つっていうのが、きっとあまりないんだと思う。。そういえば、この間テレビでイタリアについてやっていたんだけど、イタリア人は、不安なことがあると鉄(無機物)を触るんだって。…そういえば、マッティアが結構(鉄を)触ってたなあって(笑)。

 

BIOMAN    ええっ!案外俺らはマッティアのサインを見逃していたって訳?それはちょっと申し訳なかったね(笑)。

 

——今回の制作は、どういった経緯で実現したのですか?

 

王舟 マッティアは昔からの友人で、一昨年に一緒に「6Songs」っていうアルバムを作って、日本とイタリアでツアーをしたんです。イタリアでのライブは、タイムテーブルとかもめちゃくちゃで、3時間くらい待たされるのは当たり前。しまいにはライブをしないで終わることもあって、ライブでイタリアに行きたくないって思った。でも、環境はすごく気に入ったんですよね。マッティアの本業はエンジニアなので、「今度は曲を作りに行くよ〜」ってその時口約束をしたんです。そしたらマッティアから帰国後に「いつ来るんだ?」って連絡があって。

 

 

王舟 ちょうどfelicityから「今度新しくインストのレーベルを立ち上げるから、そこからリリースするアンビエントとかインストの曲を作らないか」っていう話をもらっていて。それならイタリアでやったらいいんじゃないかって思った。

それで、イタリアって言ったらBIOMANのDJを思い出したし、前にBIOMANとマッティアが話しているのを見たことがあるから、軽い気持ちでBIOMANを誘ったのが(この作品の)始まりだよね。

 

BIOMAN   お互いが知っていて、ミュージシャンで、且つ俺がパスタが好きっていう…

 

王舟 そうだそうだ!BIOMANの働いているお店にマッティアと行ったんだけど、その時にBIOMANがアーリオオーリオを作ってくれたんだよね。

 

BIOMAN   鳥軟骨のアーリオオーリオ。

 

王舟 それが俺の好物だから、イタリアって考えたときに…BIOMAN!

 

 

BIOMAN 今回はコンセプト先行ではあるけど、僕自身は自分の知らん土地で尚且つ知らん人とやることで生まれるアイディアをまとめられたらいいなっていう思いを抱いてイタリアに行きましたね。

 

王舟 俺もそんな感じですね。

 

——王舟さんは1stアルバムはバンドで、2ndアルバムでは逆に1人で制作されましたよね。その流れから今度はまたあえて誰かと作るに至ったには何があったのか?と、非常に興味が湧きました。

 

王舟 まず単純にイタリアから帰った時にイタリアの風景の良さや食べ物の美味しさに賛同してくれる仲間が欲しかったんだよね(笑)。今回レコーディングだったからあんまり風景を見て回れなかったけど、BIOMANは飯の反応がめちゃめちゃ良かったから、連れてきた甲斐があったなあって思った。俺が食えない臭いチーズとか肉とかもBIOMANは気に入ってたし。

 

一同笑

 

BIOMAN 確かに今回、どちらか一人だけがイタリアに行ってたら、言葉とか文化とかにあてられて…多分やられてたかもね。

 

——そのイタリア滞在記をBIOMANが公開していますね。読み物としてとっても面白いのでご紹介させてください。

http://hakobechou.blogspot.jp/2018/01/blog-post.html?spref=tw

 

BIOMAN ロッヂが禁煙だし、マッティアはタバコを吸わないから、外で王舟とタバコを吸いに出るんですけど、その時だけが心安らぎましたね。考え方が根本的に違うから戸惑うことも多かったんだよね。もしかしたらイタリア人の中でもマッティアは特殊な人なのかもしれないし。

 

——例えばどういった部分で?

 

BIOMAN 例えば、王舟のギターを録音している時、王舟が「ちょっとやり直して」って言っても、RECボタンを押したらマッティアはブースにおらんくて…

 

王舟 料理してる。

 

一同笑

 

王舟 作業がいきなり終わるんですよね。プレイバックとかも特になく、作業スピードがとにかく速くて、すごく揉まれてる感じがありましたね。

 

 

王舟  あとは「こうした方がいいよね」って、こっちの意見をまとめると「なるほど、わかった!」って即答で返ってくるんですけど、ワンツースパイスか何かを盛って、全然違うことになってることもある。だけど…それはそれでいいね!っていう。

 

BIOMAN    自分発信で曲を作るっていうそもそもの手法から、そういう点でも離れていた。他人の中で音楽を作る感覚があったね。

 

王舟 そうだね。実は、イタリアに行く前にBIOMANのおじいちゃんの家で、曲名にもなっている奈良の「東吉野」っていう山奥で曲を作って、それを(保険のつもりで)イタリアに持って行ったんです。イタリアで2週間も滞在期間があるから、現地でも新しい曲をバンバン作るつもりで行って、マッティアにも説明した。そしたら「まずデモを聴こうか」って言って、早送りで聴くんですよ。3分ある曲を20秒くらいで聴いちゃう。どうやらこのデモを元にアルバムを進めるようになっていた。こっちも頑張って説明したけど「わかってる」とはいうからとりあえずマッティアの進行に従って録音を始めた。

あとは、基本的に「聞かせてくれ」って言わないと、聞かせてもらえない。だから、だんだんどういう風に進行しているのかがわからなくなる。でも、マッティアの作業的にはバランスとか世界観が崩れてなくて、あるタイミングでデモを全部聞かせてもらったときには「これいいな!」って思った。

 

BIOMAN    紆余曲折したけど、結果は良かったよね。

 

王舟 想像していたアルバムでは全然なかったですけどね。

 

BIOMAN    でも、自分を投げ出すっていう点では成功していたのかもしれない。「neco眠る」だったら、ドラムのオカズや音量やリムショットかそうでないかまで完全に作って渡すから、そういう癖がついていたんですけど、それを別の環境で他人に任せてみたいっていうのも自分の中でのミッションでもあったから、その点ではクリアできたなって思った。“架空のサウンドトラック”とかって、よく言うじゃないですか。自分を出すって言うより、周りの環境のインスピレーションでアルバムを作るやり方…甘っちょろいなって思いましたね(笑)。自分のエゴを捨ててしまうには、これくらいやらなあかんねん(笑)!

 

一同笑

 

王舟 確かにね。当初は架空の民族音楽のアルバムとかを例にあげて、こんな感じもいいんじゃないかって話し合って、実際に架空のイタリアの曲として東吉野でデモを作ったんですけど、実際にイタリアに行ってから“架空のイタリア”がさらに勝手に動き出す感じがすごかった。

 

——もう一つ触れておきたいのは、この作品が新レーベルから出ること。

 

王舟 アンビエントのレーベルを立ち上げるからそのつもりでアルバムを作ろうと思ったけど、作品が普通のインストになったから、いつも通りfelicityから出ると思ってた。そしたら、ここから出ますって。。

 

BIOMAN   俺はイタリアに行くときにこのレーベルの話を聞いて、作ろうとしているアルバムに合っていると思ったし、俺の中のトレンドがこのレーベルのコンセプトと合っていた感じもしたから「いいじゃん!やりましょう!」って乗りました。今は重たい部分を敢えて漂白したようなニューエイジっぽいものが世界的にちょこちょこ取り沙汰されてて、そういうのは僕も好きです。

 

BIOMAN   それにしてもこの作品は、他人のアルバムっぽく聴こえる。それくらいエゴを出す余地がなかったですね。俺は王舟みたいに英語を喋れなかったっていうのもあるんですけど。

 

王舟 俺はBIOMANと自分の意見をまとめて言う役割でもあったから、ハキハキしなきゃって言う(プレッシャー)もあったね。

 

BIOMAN     王舟は作品を聴いてみて、どうだった?

 

王舟 東吉野に行った段階で「コード感的にあんまり安心できないやつがつくりたい」ってBIOMANが言っていて…

 

——変なコードの使い方は、BIOMAN作品の魅力の一つでもありませんか?

 

BIOMAN     そうかも。「Terni」は俺がコードをつけて王舟に弾いてもらったんですけど、全然わからんって言われた。

 

王舟 わからなかった。だから、俺もそのBIOMANのアイデアに乗って東吉野で普段使わないようなコード進行を使い出したあたりで、自分的には新しい体験だったのかも。共作も初めてだしね。それで、一旦家に戻って改めて設計を立てて、イタリアに行ったら更に崩れたけどね(笑)

 

一同笑

 

BIOMAN  王舟はズレをあえて作りはるんですけど、僕はそういうことをあんまりしないから、見ていてすごいなって思った。neco(眠る)のデモは完全にジャストに合わせていたから。イタリア以前に学びました。

 

王舟 なんだかんだ言っても、イタリアに行って「シンプルでいいんだな」って思えた。余計な展開するをつけたりするのはいらないな。

 

BIOMAN  王舟もどっちかといったら、作り込んでしまうタイプなんじゃないかな。

 

王舟 そうだね。

 

BIOMAN  その点は俺と似てるよね。俺も行ってから「やっぱ、いらんな」って思った。

 

王舟 マッティアは機材もシンプルだし、マイクの立て方とかドラムの立て方も4本しかなくてもかなりいい立て方をしていると思う。適当に見えるんだけど、余計なものを全部削いだシンプルさをマッティアが持っていた。

 

BIOMAN  そうだね。結果的にそれでいいと思えたからね。

 

王舟 ドラムだけ一人ゲストで入った。機材もマイクの他にはギターとギターアンプ、パソコンとキーボードくらい。デモのオーバーダブの作業的にもBIOMANがキーボードを弾いただけで、あとは何もしてない。

 

 

——生活音をかなりとりこんでいましたね。

 

王舟 あれはBIOMANが歩きながらiPhoneで録った。

 

BIOMAN  俺だけ早起きすることが多くて、散歩しながら録った。あとはパーティーをしている時の音を録ったね。

 

王舟 3曲目「Fano」の最後だね。その録音のタイミングも、ちょっとよくわからないマッティアの感覚があったね。「みんな今盛り上がってるし、騒いでるから録って!」って言っても「いや、まだだ。」って(笑)。

 

BIOMAN  このアルバムのまとまり感はそういうマッティアの変わった判断基準がもたらしているのかもなあ、と思ったよね。

 

王舟 そうそう。それに、マッティアは事務的な感じが全然ないんだよ。日本のエンジニアさんはプロトゥールスを使って、その場で編集したりとかしてすごいんだけど、マッティアは既存のトラックをリアンプしてるだけなのに…良くなってる。

 

BIOMAN  なんなんだろうね、あれは。そもそも人間性がアンビエンスしてるんじゃないかって。リヴァーヴとかの空気を満たすような音が、マッティアの人間性からもたらされている。

 

王舟 他には、曲のデータをマッティアのパソコンに取り込んだ時点で全部のトラックをゼロ秒に揃えば全部スタート地点が揃うのにマッティアはその機能も一切使わない。なぜか出だしの無音になってるトラックはその無音部分を全部削って一つ一つ目と耳で合わせるんですよ。

打ち込みで作った音楽を普通はそんな風にやらないはずなのに、全部目と耳で合わせるから、トラック同士のスタート地点が少しズレる。最初は「なんでそんな回りくどいなことをするのかな」って思ったけど、慣れると気にすることでもなかった。最後にはむしろそれが良かったのかもしれないなって思いましたね。

 

BIOMAN  トラック数を増やすとめっちゃ嫌がったよね。

 

王舟 40トラックの曲を渡したら「これは多いな」って文句言ってた。まあ、ちゃんとやってくれましたけどね(笑)。

 

——機材やエンジニア目当てで海外に行くと思いきや、感覚や縁で決めたって言うところがまた面白い。

 

BIOMAN  あんま予測せずに行きましたね。自分を変えて欲しい!って言う。

 

——もしかしたら心のどこかでこう言う展開も望んでいたのかも?

 

BIOMAN  まあね、求めてはいたけど、それが度を過ぎていた。ここまでか(笑)!

 

——これだけの大きな体験を経て、今後の活動にも生かされそうですね。もしかしたらまた海外制作もあり…?

 

王舟 俺は飛行機があんまり好きじゃないからな…。

 

BIOMAN  僕は、海外に行くっていう体験に限らず。何かに揉まれるって言う体験はまたしてみたいって思いますね。まずは、今回体験したことを整理したい。自分の曲で咀嚼したい。

 

 

【リリース情報】

アーティスト:王舟& BIOMAN

アルバム:Villa Tereze

リリース日:2018/05/23

価格:2,300+税

レーベル: NEWHERE MUSIC