2018
05.30

【INTERVIEW】Lamp「休憩をいかにとるか。それが作曲作業に於いてとても重要」

ARTIST, INTERVIEW, RELEASE

Lampが通算8枚目のフルアルバム「彼女の時計」を5月15日に発表しました。待っていた甲斐があった!という作品です。前作「ゆめ」に引き続きハーモニーとメロディを掘り下げながらもLampの原点のどこかに立ち返ったようなシンプルさが 例えば難解な展開が一層輝きを増したように感じました。早速お話を伺うと、ブラジルはミナス音楽のエッセンスが前作あたりからふんだんに盛り込まれているとのこと。ミナス音楽とはブラジルポップスの持つ情緒感に加えて特に複雑な構造を持つブラジリアン・ポピュラー・ミュージックで、それらの魅惑を引き寄せたように、なるほど特にアルバム中盤からこれまでにない味わい深さをハーモニーとの間で増幅させているように感じます。

ブラジルという国ついては大航海時代より文明に翻弄され、過酷な試練を余儀なくされた国だという印象が強いのですが、しかしその文明の土産物でもある宗教(キリスト教)音楽によって芸術的豊かさを得た——その血肉を私たちはトロピカルポップスから伸びゆく、愛すべき国産ポップスを経由して摂取していたと思えば、なんとも空を仰ぎたくなる心持ちになりませんか?それに気づかせてくれたのも「彼女の時計」の素晴らしさだと思っています。是非、お聴きください。

取材・文・撮影(一部)=田中サユカ

 

 

——Lampのみなさんは、音楽をどのように届けていこうという話はされるんですか?

 

染谷 音楽を作っている時はそういうことは全然考えないですね。リリース前になると、いざお客さんに届けるにはどうしたらいいかっていう話はしますよね。

 

——今作ではアナログを2パターン作られていますよね?私はアルバムを拝聴した時点でアナログを出すための曲順かと思いました。

 

染谷 そうですね。アナログを出すことが前提でこのアルバム『彼女の時計』を作りましたね。

それは僕が最近よくレコードプレーヤーで音楽を聴いていたっていう理由もあって…他にも理由があったと思うんだけど…でも、レコードで音楽を聴いたら素敵だなって思ったのがシンプルな理由ですかね。カラーのレコード盤にしたっていうのも、家にビートルズの「マジカルミステリーツアー」の赤いレコードがあって、子供の頃、それを見た時に物として魅力があったんですよね。ほら、子供の頃ってスケルトンのおもちゃとか好きじゃないですか?ああいう感じで、色のついたカラー盤をやりたいと思いましたね。

 

——先日のリキッドルームでのワンマンライブ(4月28日)ではアルバムの評判について感触は得られましたか?

 

染谷 あの日はまだ聴いてもらったわけではないので、分かりません。

その後は、確信はできていないんですけど、感触としては、思っていたより割とみんな受け入れてくれている感じがしています。実際はどうかわかりませんけどね(笑)。もともとは別に受け入れてもらえるかどうかとか、そういうことを考えて作っているわけではありませんし。

 

——今作ではどのような流れでアルバム制作に至りましたか?

 

染谷 前作『ゆめ』を出した時点でその時の持ち曲は大体出し切っていたので、ゼロから始める作業でした。永井の曲の内「Fantasy」「スローモーション」「1998」の本当に最初の段階のデモを一度だけ聴かせてもらっていたので、それらと自分の新しい曲を合わせて、ああでもないこうでもない等と構成を考えました。「ラブレター」も2015年のロフトで一度だけライブでやったことがあったので、曲は分かっていました。

音作りに関しては、80年代後半のブラジル音楽に強く影響を受けたと思います。

 

永井 僕らが活動を始めた頃は割と60〜70年代の音楽に影響を受けてきたし、好きだった。逆に80年代ってヤバイ時代の象徴に聞こえたし苦手だった。今、染谷さんが言ったように80年代でもブラジルの音楽を経由してから他の80年代の音楽を聴いてみると、すんなり受け入れられたんですよね。

 

染谷 80年代のブラジルの音楽の中でも“ミナス音楽”と言って、切なくてグッとくる音楽があるんですね。でも切ないからと言っても、ただ物悲しい音楽でもないんですよね。80年代のミナスの音楽は初めて聴いたはずなのに、どこかで聴いたことあるような切ない気持ちになるんです。

それは自分たちが小学生くらいの頃に聴いた、その時代の日本の音楽からも同じように感じることもあって、例えば、岡村孝子の「夢をあきらめないで」を今改めて聴いた時に「すごく切ない!」っていう、その感覚が新鮮だったりもします。

 

 

永井 ミナスの音楽が花開いたのが80年代前半で、個人的には80年代前半のミナス音楽が入り口になっていて、そこから入ったことによって、他の80年代の音楽がいい感じに響くようになりました。AORについても、割と80年代の物とかも聴けるようになってきましたね。だから今回はYAMAHAのDX7等、80年代のシンセも使っています。そういうところが、前作「ゆめ」とはまた違った作品に聴こえてると思います。

 

染谷 80年代のブラジル音楽自体は2006年くらいから聴いてはいたんですけど、その頃は自分たちでそれをやるところまではいってなくて、そういうものをやるってなったのは、前作あたりからですね。

ミナスの音楽は日本のポップスみたいにみんなが口ずさめるように作られていないし、音程が急に飛んだり、譜割もすごく難しい。コード進行も凝っていて、ちょっと複雑なんですけど、5回〜10回と繰り返し聴いているうちに、いつの間にかまた聴きたくなってるんですよね。いわゆる「スルメ」な音楽で、その辺はビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』に似ていると思います。そして、自分たちが目指している音楽も、何度聴いても飽きない音楽です。

 

——前半の4曲と後半の4曲では随分と表情が変わる気がします。曲順はどのように決めていますか?

 

染谷 僕が決めています。今回は永井が4曲、僕が4曲用意して決めたんですけど、こういう並びにすれば飽きずに聴けるんじゃないかとか。最初は「この8曲で作ったらいいんじゃないか」とか。

 

——原点回帰した印象も受けました。

 

染谷 実際そういう部分はあって、元々ビートルズが好きで、ビートルズのような音楽の作り方に原点回帰するっていうのはありましたね。アレンジで聴かせる音楽ではなく、メロディとハーモニーだけでいいなって思えるものを心がけて作りました。それは今回のアルバムの特徴だと思っています。ただ、これは実は後からこうして言葉にした時に気付いた部分が多くて、具体的に「ビートルズみたいな音楽を作ろう」などと話したわけではありませんでした。自分達はメロディをとても重要視していて、そこは自信があるというというか。そういうところで人が振り向いてくれたらいいなって思います。

 

——メロディは確かに人の心を掴みますが、それにも流行があるせいか、色褪せて感じるものと、それでも輝きを失わない普遍的なものがありますよね。Lampの曲は普遍性の高いものが多いと思っています。

 

染谷 さっき余談で作品を作っている時に間(休憩)を空けるのかっていう話がありましたけど、僕は空けるんですよ。休憩をとっている内に脳は作ったメロディを一旦忘れてくれますよね。それが作曲に於いてとても重要です。時間をおいて、改めて録音したものを聴いてみた時に、自分の琴線に響いたなら採用するし、響かなかったらまたやり直したりして。そんなふうに、曲作りの時は時間を空けることを強く意識していますね。

 

榊原 大陽のデモは、ギターと鼻歌をICレコーダで録っただけのすごく簡単なものなんですけど、永井のきちんと作ったデモ音源を聴いた時の感動とはまた違った、素朴な良さがあるんです。これを聴けるのは私たちとサポートメンバーだけなのですから、勿体ないですね。

 

 

——海外ツアーも行かれますね。なぜアジアに?

 

染谷 僕らは通常7人でライブをやっているのですが、そうすると宿泊代や交通費が馬鹿になりません。そうなると遠い国には余程収入が見込めない限りは中々行けないかなと思います。

アジア以外ですと、アメリカはファンが多いのですが、なにしろ広すぎて、アメリカのどこへ行ったらファンが待っていてくれるのかがわからないですからね。でも、ヨーロッパも含めて結構Lampを聴いてくれている人はいます。特に東南アジア。インドネシアやシンガポールは多い印象ですね。

 

——そのリサーチはBandCampで?

 

染谷 それもありますし、Facebookのインサイトは分かりやすいです。Instgramなんかにも、ツアーの告知をしたら「インドネシアに来てください!」っていう書き込みが必ずいくつも来ますね。

ツアーが実現している国、していない国の違いに関していえば、各地にプロモーターが一人でもいるかいないかっていうのが大きいです。自分たちだけで外国でライブをやろうとすると、まずはビザの問題がありますし、いざ行ってみて、実際に会場がブッキングされているかも分かりませんし。プロモーターがいない国での海外公演は色々と難しく現実的ではありません。

 

 

【リリース情報】

アーティスト:Lamp

アルバム:彼女の時計

リリース日:2018年5月15日

価格:2500円(税抜)

レーベル:Botanical House

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