2018
07.01

【INTERVIEW】ASA-CHANG エマーソン北村、ありそうでなかった共作「Debut」でデビュウ!

ARTIST, INTERVIEW, NEWS, RELEASE

ASA-CHANGとエマソロ(エマーソン北村)について、皆さんはどんな印象をお持ちですか?

私はお二人のことを メロディでリズムを生み出し、リズムでメロディを生み出す 魔術師のようでもあり、最も人間の“素”を極めた(愛する)音楽家なのだと思っています。そのお二人が揃って作品を作られるのですから、こんなに興味深いことってあるのでしょうか。

当のお二人にとっては、随分と遠回りしたのかもしれません。でも今、人生の丘を越えて出会えて、本当に良かったですね。

今年最も新しいグルーヴを聴かせてくれる作品「Debut」をどうぞお聴きください。

 

取材・文・撮影=田中サユカ

 

——まずお二人の共通点の一つとしては、パーカッション二ストとして、またはキーボード奏者として誰かの作品に関わることが多いことですね。

 

北村 でもASA-CHANGはね、プロデューサーもやっているからね。

 

ASA-CHANG  確かに二人の共通点としては、サポートミュージシャンとして呼ばれることはあるんですが、その中でも僕は極めてクセ者なのでね。(苦笑)北村さんのことをそう言う風に言うのは…

 

一同笑

 

北村 いえ、その通りです(笑)。

 

ASA-CHANG  キャパを広げてノーマルな演奏家になろうと徹していても、クセが強いから、多分僕らは二人ともそう言う人種なんだと思うんですよね。

 

——お二人の音楽家としての関係性における出発点は何処だったのですか?

 

ASA-CHANG  90年代の頭に“ナツメグ”っていう名前のレーベルがあったんですけど、そこには小さいながらもコアな活動をしているアーティストが何人かいたんです。そこに北村さんも関係していたし、ASA-CHANG名義でのCDは出していないものの、僕もその中に関わっていたんですよ。

 

北村 そうですね、そこが出発点ですね。90年代の頭ですね。

 

ASA-CHANG  ナツメグっていうのは当時、東京アンダーグラウンドの濃い作品をアナログでもどんどん出していたんだよね。北村さんはそこでエンジニアもしていたし、”MUTE BEAT”や”じゃがたら “で活躍されていて、僕はお客の立場から北村さんのことを見ていましたね。

 

北村 そうなるとこの話は80年代の話からですね。実は蓋を開けてみると、僕達の年齢はかなり近かったんですよ。当時は「東京ソイソース」っていう、じゃがたら、MUET BEAT 、S—KENっていう面々が出演するクラブミュージックのイベントがあったんです。

 

ASA-CHANG  芝浦インクスティックでね。放送作家の町山広美さんもそうだもんね。今業界で活躍しているような人が沢山遊びにきていた。

 

北村 そうだね。たくさんいましたね。

 

ASA-CHANG  当時は東京で一番トンがったイベントだったんです。ニューウェーヴやテクノとかよりは有機的なノリで…あれはなんだったんでしょうね。

 

北村 パンク ニューウェーヴ ワールドミュージック レゲエ …後のクラブミュージックにつながる流れがごちゃ混ぜになっていたみたい。

その頃、僕はたまたま “じゃがたら” とか “MUTE BEAT” で相当年上の人たちと演奏をしていたんです。一方ASA-CHANGは、年上のバンドに参加しないで、スカパラ(東京スカパラダイスオーケストラ)とか、自分で何かを始めていたんですよね。だから同年代とはいえ、違う場所にはいた。でもそれぞれの立ち位置から「東京ソイソース」に影響を受けていたんです。

 

 

ASA-CHANG  そうですね。そういう時代があって、ナツメグっていうレーベルがあった。当時は、ナツメグがやっているクラブスタジオ「代々木チョコレートシティ」っていうところがあって、僕らは「代チョコ」って呼んでいたんです。そこでの話は本が一冊できるくらいありますね。(笑)

 

——そういった時代を経て、2018年に作品「Debut」をリリースするに至ったのは?

 

ASA-CHANG  僕が勝手に北村さんに声をかけたんです。

 

北村 2017年のお正月くらいにデュオのライブをやってみないか?っていうことで。

 

ASA-CHANG  そう、しかも渋谷にある「ミリバール」っていう小さなお店限定でね。だから企画モノっぽくみえるんですけど、ちゃんと段取りは踏んでいるんですよ(笑)!

 

一同笑

 

ASA-CHANG  お店は15人も入れるかなあ?ただ、僕らはわざわざそんな小さなお店で(ライブを)やらなくても良いとは思うんですけど、渋谷の一等地でずっと頑張って続けている店の空気が好きなんですよね。僕にとって「ミリバール」は入った瞬間に居心地が良くなる、そういう店ですね。

 

——ライブをしながら、作品を出すことは視野にありましたか?

 

ASA-CHANG  やっているうちに「これは良い感じになるかな?」っていう予感がありました。ただ、もういい歳なんでね、新しい音楽を作るというよりは僕らと店の記念として音源を残しても良いかなっていう感じはありましたね。

 

北村 うん、すごく自然な流れでしたね。ライブした、曲が貯まる、だから録ってみようか、結構な数になったから(アルバムを)出してみようか…っていう。

 

——そういったお二人がお互いに音楽としてどう見ているのかが気になりますね。ASA-CHANGが北村さんをお誘いした時、音楽家として作品に期待したことはどんなところですか?

 

ASA-CHANG  なんと、今まで一緒に演奏したことがなかったんですけど「こういう音になるんじゃないか?」っていう、イメージと期待はありました。僕はすごくせっかちで高血圧な感じがあるんですけど、北村さんは逆のムードを持っていると思うんですよね。

 

北村 ぼんやりムード(笑)。

 

ASA-CHANG  僕は言ってないですよ?北村さんのことをそんな風には!

 

一同笑

 

ASA-CHANG  でもそういうのも含めて考えていました。北村さんの音は名人落語家の域ですから、狙ってできるものではない。若い音楽家が北村さんみたいなことはできないんですね。狙ったとしてもそこには打算とコンセプトみたいなものが見えちゃう。そうではなくて、ずっと弾いていたらこうなっちゃったっていう…なんでこんな小さなシンセサイザーから滲み出るんだろうって、思いますよね、

それに、僕のトランペットとも相性がいいんじゃないかなって思って(笑)。僕はトランペットも歌うことも恥ずかしいんですけど(北村さんの演奏なら)成り立つかなって思った。

 

 

ASA-CHANG それに、僕には「(ASA-CHANG&)巡礼」とは別に、僕と北村さんが出会った頃の感じ活動をやっても別にいいんじゃないか?て、思ったんですよね。なんだか僕が過去を捨てたみたいに思われているみたいなんですけど、そんなことは全然ないんですよ。

 

一同笑

 

北村 そうなんですよ。分かりやすくいうと、僕たちは上手ければ良いって思っていないんですよ。バッキングする側で言えば、腹が据わっていて、何がやりたいかがはっきりしているフロントマンとの方がやりがいがあるんですよね。この作品はフロントマンとバッキングっていう関係性ではないにしろ、フロントマンのASA-CHANGが、それこそ上手ければ良い訳じゃない、何がやりたいかが明確に伝わってくるので、やりがいがありますよね。

 

ASA-CHANG  今回(北村さん)は全然バッキングじゃないですよね。すごいですよ?KinKi Kidsみたいなもんですから、僕の感覚ではね。

 

一同笑

 

——お二人のパブリックイメージとしては「北村さんはメロディの達人、ASA-CHANGはリズムの達人」だと思うんでけど、実は逆でもあって。北村さんはメロディでリズムを作る不思議な人っていうイメージ、ASA-CHANGはリズムでメロディを作る不思議な人っていうイメージなんです。今作「Debut」では、その二人が直に合わさったらこうなったらこうなったのか!て、いう感動があったんです。

 

北村 ASA-CHANGは「ASA-CHANG&巡礼」があって、僕も「エマソロ」っていうのがある。今おっしゃったことはまさに巡礼がやっていたし、それこそメロディは機械から出ているのに、パーカッションは生演奏しているっていうこともされている。2002年あたりから対バンするようになってから、僕は“巡礼”からすごく影響を受けていますね。僕にとってはそれがあっての、このデュオですね。

 

ASA-CHANG  巡礼が二人体制の頃ですね。ワンマンをやるとなった時、オープニングアクトを探していて…「そうだ!エマソロさんがある!」って、結構何度も共演しましたね。北村さんが、ひらひらのシャツと蝶ネクタイと言った、昔のフォーマルな衣装で、足ベースを弾きながら進める“様式美”が、ひとつのインスタレーションを見ているみたいで、僕は大好きでした。そういう関係が長くありましたね。

 

——制作する上での音楽的な“狙い”は?

 

ASA-CHANG  今更そんなもんないです(笑)。ただ、隙間だらけでしょ?この隙間を埋めないように気をつけましたね。隙間って、つい埋めちゃうんですよね。音には余韻があるんで、それを生かしたかったんです。トランペットがカタカタ言っているのも入れていいかなと。

僕は、格好つけているけどどこかヘッポコ、みたいなのじゃないと、カッコよく見えないんですよね。二の線を踏み過ぎているものは恥ずかしくなっちゃう。ジャマイカのSKAはまさにそうで。チューニングもろくにしてない楽器がセーノ!でおんなじフレーズを吹く、そのカッコ良さとカッコ悪さ。それも狙ってやれないっていうところがジャマイカのSKAにはあった。それと同じような魅力がパンクシーンやニューウェーヴシーン、東京ソイソースや“代チョコ”にも感じていました。

 

——そういうところですね。ゲストにチエコ・ビューティーさん。

 

ASA-CHANG  そうですね。チエコも暫く会ってないのに「チエコ、(ゲストボーカル)やってくんない?」って言ったら、音も聞いていないのに「いいよ!」って言ってくれた。そういうところもいいなって思います。ジャケットのヤギさんもそう。

 

北村 ヤギさんのジャケット、本当にすごいですよね。

 

 

 

ASA-CHANG  そうですね。ヤギさんの過去の作品を知っている人から「ヤギさんの最新作があるの?まだ絵を描くんだあ!」なんて思っている人だっている。

 

——描き下ろしですものね。この模様は板に描いているんですよね。印刷を見るとばらの模様にも見えて。

 

ASA-CHANG  そうなんですよ。ヤギさんは、その辺の板をキャンバス代わりに描くんですよ。細野晴臣さんの作品なんかにも描いているよね。

ミリバールにはヤギさんの絵が飾ってありますからね。だからこの作品は、そういう展開に全部着地していると思います。

新しい今の時代のことっていうと、新たなシステムや音像っていうことだけじゃなくて、僕らが新しいと思えるか。ヤギさんがこういう絵を描かれたことも僕らにとっては面白いし新しいし、ワクワクするんですよね。そういうものを提示したかった。

今この時代にエマーソン北村とチエコ・ビューティーとASA-CHANGが音を出したら面白いんじゃないかなって思っちゃった。

 

——カバー曲のラインナップもゆかり深いですね?

 

ASA-CHANG  「キャラバン」(#4)は僕がスカパラ時代にやっていた曲ですね。「丘を超えて」(#2)は完全にそうです。スカパラ初期に作ったもので、小泉今日子さんにプレゼントしたシングル曲。あとはジャッキー・ミットゥっていう北村さんに影響を与えているジャマイカン・キーボード奏者のアルバムから「恋は水色」(#5)を貰った。ミリバールのBGMから自然に決まった曲ですよね。

 

——オリジナル曲は1曲。それがお店の名前「ミリバールの歌」(#7)ですね。

 

ASA-CHANG  そういう個人的なものに焦点をあてても面白いと思ったんだよね。久住さんの漫画「孤独のグルメ」みたいなものだよね。そこでミリバールに焦点が当たっちゃった、っていう感じだよね。

 

——スピーカーからイヤホンから、私はこの作品を聞く場所を変えて聴いてみたい。例えば、電気のないような広大な場所で、発電機で。

 

北村  実は僕が巡礼を最初に見たのがそういう感じでしたね。フジロックで発電機だけでやっていた。

 

ASA-CHANG  そうでしたね。小さなソーラーパネルと発電機でライブをやってた。すぐ止まっちゃうからまたウィーンって発電機を回してね。そういうところもジャマイカの匂いがしますね。

今で言えば、タイニーデスクコンサートとか、あれはいいよね。ああいうミニマル感を俺らはメインでやっているっていうか、あれがマックス(笑)。

 

 

ASA-CHANG  あとは、ミリバールっていうお店でしかやっていないので、もっといろんな地域でライブをやりたいなって思いますけどね。DUBっていう形もありますし、このまま味付けせずに1000人の人に聴いて貰ってもいいと思っています。

 

北村 そういうのはありますね。この音楽はアンプ一個でもできるんですけど、それを超でかいシステムで鳴ってもおんなじ感じでできる自信はあるんですよ。

 

ASA-CHANG  そうですね。このまま野外の超でかいサウンドシステムで聴いて貰ってもいいと思いますよ。そういうのは想定して作っています。

 

北村 それに小さいラジカセで聴いても同じ。

 

ASA-CHANG  自動車を走らせながら、エンジン音と混じった時にどう聞こえるかっていうのは、僕らにとって大切なことなんですよ。機材車のなんでもない車のボロいデジカセで聞いたら、低音がぜんぜん聞こえないわけなんですよ。この作品は北村さんの低音がすごく入っているから、俺のピーっていうトランペットとシンセの高音だけ聞こえるんだけど、その妙な感じに返って「シメた!」って思いましたね。

 

北村 そうなんですよね。

 

ASA-CHANG  CDになっちゃうと、生音でないからいろんなもので化粧されて綺麗になっちゃうわけですよ。でも何をしようが北村さんや僕の“あの感じ”が残っちゃってるところがよかったですね。

 

北村 それはすごく大事かも!ASA-CHANGのビジョンによるものが大きいと思います。生っぽいけどいわゆるジャズのデュオとも違う。コンピューターを前にしてプロセスしているところもありますが、デスクトップの音楽とも違いますよね。そういうところって結局は、音楽に対して何が見えているかっていうところだと思うんですよ。そこは正直流石だと思いましたね。ザラッとしたものを残して何を見るかっていうのは、勉強になりますよ。

 

ASA-CHANG  タブラボンゴのワークショップである地方でのBGMで、北村さんのソロ作品を流してくれるんですよ。その時に「あれ、これすごく面白いな」って、合点が行ったんですよ。実はそれがデュオをミリバールで始めたちょっと後のことなんです。こういうタイミングって、一気にくるものなんですね。

北村さんの音は正直スーパーマーケットで流れるような音質なのに。(苦笑)これだけ“人物”が出るっていうのは達人でしかないわけで。

次の展望で言えば、ジャケットをもう少し人相の悪くないように描いて欲しいな(笑)。色んな人から「悪いところが出てるね〜!」って言われるんですよね。

 

一同笑

 

——これから先のことを伺ってもいいですか?次はどう変化されるのか。

 

ASA-CHANG  まあ、50を超えて激変したら気持ち悪いんですけどね(笑)。どんどん名曲、大曲のカバーに挑戦していきたいですね。

 

 

【リリース情報】

アーティスト:ASA-CHANG エマーソン北村

アルバム:Debut

リリース日:2018/07/27

価格:¥2,000+tax

レーベル:Airplane Label

ASA-CHANG twitter

エマーソン北村 twitter

 


ASA-CHANG エマーソン北村
CDリリースツアー『Debut』


11/28(水)小田原グッドトリップ
11/29(木)名古屋 to be anounced
11/30(金)和歌山 BRING BOOK STORE
12/1(土)大阪 HOPKEN
12/2(日)今治 ホホホ座
12/3(月)広島 nandi
12/4(火)姫路 to be anounced