【INTERVIEW】KIRINJI、20周年—そして“航海”は続く。

KIRINJIの13枚目のアルバム『愛をあるだけ、すべて』が6月13日にリリースされます。メジャーデビュー20周年を飾るフルアルバムでもある本作。早速拝聴すると、心魂を傾けるような歌詞の重みにまずは どきり としました。例えば後悔や焦りの言葉で描かれたリリックワークは、これまでの歩みの中で蓄積された膿をじわりと吐き出すようで、これが不思議と救われる趣でもあります。伺えばそんな深い意味はないよ、と言わんばかりのラフにお答えいただきましたが、私はそれでも僭越ながら“ソングライター・堀込高樹”としての心根として有難く受け止めていたいと思ってしまうのです。 また今作はバンド・KIRINJI 5周年という節目の作品でもあります。バンド“KIRINJI”として、またポップミュージック作品としてどう録音物化するのか…なるほど本作には歴としたkIRINJIサウンドの“2018年の気風”がぎっしりと詰まっています。皆さんはどう感じましたか? 取材・文・写真=田中サユカ ——まずは本作のタイトル「愛をあるだけ、すべて」ですが、KIRINJIのアルバムとタイトルとしてはかなり風変わりな印象を受けました。 堀込 これまでは「11」とか「3」とか、割とあっさりしたタイトルが多かった。そういうのではなくて、今回は目先を変えたいと思ったんですよね。それで、曲のタイトルからアルバムをつけるって言う方法もありますけど、今回は曲(#4「時間がない」)の歌詞の印象が強かったので、それに決めました。「愛をあるだけ、すべて」という言葉自体にコンセプチュアルな意味があるわけではないんです。 ——KIRINJIファンからみたら20周年の記念作と受け取る人も多いかと思います。 堀込 20周年っていうのはあまり気にしていなくて、バンド編成になって5年、という方が大きいですね。でも、30周年は流石にあるかどうかわからない。そういう意味で20年っていうのはちょうどいいのかもしれませんね(笑)?もちろん長く続けるつもりではいますけど。 ——「バンド」という選択をされてから改めて振り返ってみていかがですか? 堀込 去年はライブ本数は少なかったけど、最近ようやく気持ちの上でもしっくりくるようになりました。みんなはどうかわからないけど(笑)。 一同笑 堀込 みんなそれぞれ、他の現場でも仕事をしているけれど、バンドを組むっていうのはまた違うと思うんです。だから、今思えば結成当初はまだまだだったと思う。でも今年3月のビルボードでのライブは、コトリンゴが抜けて初めてのライブでしたけど、誰が欠けても自然に埋められるグループになった実感がありましたし、むしろ前よりも強力になった部分もあるんじゃないかな。 楠 確かに最初は女性が二人居るっていう趣向の面白さを感じるバンドは初めてだったし、すごく新鮮な気持ちでした。それに元々キリンジのサポートをしていたので、当初はサポートの延長っていう感覚があったかもしれない。装いは変わっても人間はいきなり変われるわけじゃないですしね。でも今はバンドの一員としてやれている楽しさがあります。 田村 サポートとして違和感なくやってこられましたけど、今は責任も取らなきゃいけなくなって… 楠 ステージでユニフォームを着たっていうのは大きかったかもね。 田村 フリフリのやつね、勇気を出して着ましたね(笑)。 弓木 私はみんなについていくのに必死だったので、クビにならなくてよかった!って… 一同笑 弓木 5年もやれたから、これからもっと頑張ろうって感じです。ついていけるか不安でした。 堀込 当初は結構、右も左もわからない感じだったよね。 弓木 そうですね。5年も続けてこられて嬉しいのと、メンバーの間でいろんな話ができるようになって、楽しくもなってきましたね。 千ヶ崎 「11」を作っていた時は頑張ってバンドになろうとしていました。サポートからバンドの一員になったものだから「何が変化したらバンドなんだろう」っていう、疑問のようなものもありつつ。 千ヶ崎 昨年末にコトリちゃんが辞めましたが、やっぱりメンバーの脱退はバンドにとっては試練なんですよね。でも、何年かかけて作り上げたアンサンブルなどのバランスが崩れたのを埋めて乗り越えて、自然体でのバンドになっていったと感じました。だから、今回の作品では言いたいことがあれば言うし、そこで余計な駆け引きのようなものもない。それに対して反論があっても自然にやりとりができた印象です。それはライブのリハでもそうでしたね。 ——5年の間には、制作の現場でも変化はありましたか? 堀込 以前は、ベーシックを外部のスタジオで録音して、そのあと僕の家に来てもらってダビングをしていたんですよね。でも、今はみんなでスタジオに入ってみんなで顔付き合わせて作品を作らなくても良い時代になった。今回はタイトなスケジュールで制作したこともあって、メンバーそれぞれで録音したデータを僕に送ってもらってまとめました。対面して録音すると僕が「ああしてくれ、こうしてくれ」と注文を言っちゃうわけですよね。そうすると僕の意見は反映されるけど、そうじゃなくて、僕が投げかけて返って来たものを僕が整理する方が、それぞれの意思みたいなものが反映されて良いんですよ。だから、KIRINJIのような特殊なグループにとっては、この作り方の方がカラーが出て良いんじゃないかな、とも思いましたね。もちろんベーシックは一緒にやりましたけどね。 千ヶ崎 今回は特にそうでしたね。でも、打ち込みが多いのに出来上がった音はバンドっぽいんですよね。歌は(堀込)高樹さんのパーソナリティが出ているように僕は感じます。特に歌詞ですね。 ——それは私も感じました。歌の生々しさが増しているようです。 千ヶ崎 そうなんですよね。バンドっぽさとシンガーソングライターとしての高樹さんが共存していて面白い感じだと思います。 堀込 あまり意識はしていないんですけど、歌詞の書き方としては、凝った比喩とかを使い出すと“上手いことを言う合戦”みたいになってくるわけですよ(笑)。年齢のせいなのかもしれないけど、そう言うのがだんだん嫌になって来た。さっと聴いてさっとわかるものの方が今は楽しいのかなって思いながら書きましたね。 ——今作も「今聴ける音楽」は意識されていますか? 堀込 そうですね。ポップミュージックだからその時に聴けないとダメだと思う。10年後に良いと言われるのもダメだし、10年前の音楽だと思われるのもがっかりだし。世の中にいろんな音楽がある中でのKIRINJIの音楽ですが、埋没したくもないし、遅れを取りたくない気持ちもあるんです。だからリズムの面やアレンジの面では現代的な響きになるように意識してミックスしました。 ——とくに後半のインスト曲「ペーパープレーン」と最後の「silver girl」が堀込さんの描く未来性を感じましたが? 堀込 インストは「あったほうがいいや」くらいの本当に軽い気持ちで作りはじめたんです。普段僕らはどうしてもメロディを中心にものを考えがちなんですよね。でも、メロディがなくても音楽は成立するじゃないですか。そう考えて作った曲です。あれはメロディと呼べるものがなくて、アルペジオがあってビートがあるだけのもの。アルペジオを使ったもので聴ける限界として2分くらいの長さにしました。この曲に明快なメロディがついてしまうと、もしかしたらすごくつまらないものになってしまうような気がする。今となってはこれにラップが乗っていたら面白かったなって思ったりもしています。 ——ラップと言えば、Charisma.comのいつかさんがラップで参加されています。 堀込 彼女のスタイルは王道のヒップホップとはまた違うもので、最近は結構いるのかもしれないけど、少し前までは彼女くらいしかいなかったと思います。あんまりオラオラしてないところが良いな、と思ってお願いしたんですけど、今回は彼女にとって普段彼女がやっている「Charisma.com」とはまた違った感じだったかもしれませんね。いわゆるお話があって情景があって…って言う制作を彼女はやってこなかったのかもしれない。 堀込 今回一緒に作ることになって「こういう曲でこういう世界観でやりたいんだけど」と説明して、上がってきたものに対してもどんどんリクエストしたから、彼女としては大変だったんじゃないかな。でも彼女は「どんどん直しますよー!」っていう感じで受け入れてくれるから、こっちも「じゃあ…」って、どんどんいっちゃった(笑)。僕はやりやすかったけど、彼女はどうだったかな(笑)? 一同笑 ——ゲストにはSANABAGUN.からお二人を招いていますね。こういった若い世代のプレイヤーを起用したのは意図があってのことですか? 堀込 いわゆるスタジオミュージシャンを呼べば話が早いんですけど、バンドの中のブラス隊ってそういうのとは違うムードがあると思うんですよね。今回はそういうのが欲しかったのでお願いしました。 ——個人的にはシンセサイザーを始め80年代のムードも感じましたが、実際に意識されたのはどういった点ですか? 堀込 今回はアルバムを作るにあたってエレクトロニクスを使うだろうなって思ってはいたんですよね。「機械に聞こえる、でもこれはやっぱり生だよね」っていうところに落とし込みたかった。だからキックの感じは打ち込みっぽく聞こえるけど、ハイハットやスネアはすごく生々しい感じになっていると思います。そういう感じに作るとシーケンスともすごく相性が良くて。ただ80年代の音は意識していなかったです。今回使っているのは基本的にソフトウェアのシンセサイザーなんですよ。その中でビンテージっぽいものも使っていますし、自分の好みも70年代のものとかが好きだからそれっぽくなりがちですけどね。 ——改めて伺っていると、作品を聴いた時に感じた重みよりとても軽い印象です。特に「愛」について… 堀込 そうですね。ポップソングにおいて「愛」って全然重いものじゃない。すごくカジュアルなものでしょ?多分ね。 ——この後は全国ツアーも控えています。前回のライブからどういった手応えがありましたか? 千ヶ崎 コトリちゃんが抜けで再出発だ!っていうのはないですね。彼女がいなくなった分、やることは増えましたけど、その時のバンドで一番良いと思われるサウンドを目指した感じです。 弓木 同じコーラスラインを歌っている曲が多かったので、その時に「コトリさんの声がないなあ」って思うことはありますが、でも皆さんが思うように、これからも今できるベストを尽くします。後は、この前のライブで千ヶ崎さんがコトリさんの立ち位置に来ていて、すごく新鮮でした(笑)。 千ヶ崎 そうだ!席替えがあったんですよ。それは最初恥ずかしかったんですけどね(笑)。 【リリース情報】 アーティスト:KIRINJI アルバム:愛をあるだけ、すべて リリース日:2018/06/13 価格:初回限定盤¥3,996(TAX …

シティポップ元祖「Light Mellow」シリーズの初ライブ開催決定

シティポップ・ブームの仕掛け人でも知られる金澤寿和が監修する「Light Mellow」シリーズの初LIVE公演が決定した。 テレビ番組で大貫妙子や山下達郎など80’sシティポップのアナログを探しに来たアメリカ人が取り上げられ話題になるなど、日本のシティポップが世界的に大きな注目を集める中、音楽ファン待望の公演となる。 6月16日(土) に開催される第一弾では、伊藤銀次、杉真理、サーカス、庄野真代、SPARKING☆CHERRYの5組による競演が実現!チケット一般発売は本日 2月24日(土)より開始している。また「Light Mellow」に関して、企画監修の金澤寿和、出演の庄野真代からのコメントも到着した。詳細はこちら。 【金澤寿和 コメント】今また人気復活を遂げているシティ・ポップス。70〜80年代に誕生したそのサウンドを、決して懐メロではなく、世代を超えて楽しめる現在進行形のポップ・ミュージックとして育くみ、都市生活者のサウンドトラックとして次世代へ継承していく。そんな思いを発信していくのが、この LIVE Light Mellow です。音楽産業の危機的状況、将来が見えないことを嘆く前に、シーンの良き時代を知り抜いた者たちが、何を伝えていけるか。難しいことは要りません。自らの経験を、ただ語り継いでいけばイイのです。そんな気持ち、音楽から授かった「熱」を、思い出させてくれるイベントにしたいと思っています。 【庄野真代 コメント】耳に心地よく、メロディとサウンドに一体感があり、ちょっとワクワクする音楽。誰にでもある、優しい気持ちをLight Mellowが引き出してくれる。そういう一面が今でも私のなかにあるような気がする。そんな部分を呼び覚ましてくれます。時間の流れを忘れるような、絵本をめくるような、色鮮やかなシーンを作りたいです。

【特集】考察・ミムラス内藤彰子 「SQUAME」

「ミムラス内藤彰子さん、今晩は。新しいアルバムができたみたいですね!ずっと待っていましたよ、ずっと。」 真夜中に僕は心を躍らせていた。何しろ彼女のフルアルバムが完成したのだから。ミムラス内藤彰子名義のアルバムは2015年8月以来となるわけだが、今作「SQUAME(スクエイム)」では自主レーベル「kwaz label」からリリースされる。友達に手作りの贈り物をプレゼントするようなノリで送ってくれた本作「SQUAME(スクエイム)」を聴いてすぐに、音楽家としてのミムラス内藤彰子に劇的な“何か”が起きたことを受け取った。 “鱗”を意味する本作は、彼女自身の怯懦な心を意味しているそうだ。例えば長く居座っていたインナーチャイルドを癒すために、あるいは目配せしがちな音楽マーケットで逞しく在るために。 重ねてきた立派な鱗を少しずつ、但し一枚残らず剥がすために出来た“決意”の作品でもあるようだ。 だから前作の「Fragement&waves」に見られるような、整頓されたポップスはどこにも見当たらず、むしろ本作を聴けば聴くほど、持ち前のメロディとハーモニーを嬉しそうに汚す彼女の笑顔が想像されることが、泣けるほど嬉しかった。 「前作をリリースした後も色々ありましたよ。自分らしくやろうと思ったら、離れていく人もいっぱいいた。でも、こうやって続けていくと残った人もいますよね。」 本作は、盟友・立井幹也(Dr.)、山中勇哉(Gt.)と千葉県の潮風漂うスタジオに篭り「SQUAME」の輪郭が塗られるように生まれた。 「HOSONOVA」を源流に感じるような、DIYの歪さやノイズの残るサウンド、ヴォーカルに身近な音を重ねた 素朴な情景づくりが特に印象的で、1曲目「新しい春が呼んでるーA NEW SPRING IS CALLING」では、その場にあるホウキで踊るがまま、音と同時に“楽しさ”という感情を重ねる自然な“手法”から、ミムラス内藤彰子らしい思い切りの良さが伺えて微笑ましい。一体、ここに到るまでに何があったというのか。 ミムラス内藤彰子は、物質的な仕組みの今世で長らく苦しみながら、ある日オランダへ2度も旅立った。そこで多様性にあふれた生活を受け入れた人々を目の当たりにして、ミムラス内藤彰子の覚醒が起きた。 —「もっとこうだったら良いのに」という添削をやめる代わりに、自分の音楽をただ突き詰めていく。こうして丁寧に出来た作品だから、一つ取材をしてもらおう、とも思える。これが“私”なんですよね— 本作では、英語詞曲1曲の他にオランダに住むシンガーのティム・トレファーズをゲストに迎えたオランダ語詞の歌も1曲収録されている。これまで日本語で歌ってきた彼女が言葉を変える理由は一つ、友愛の“証”だという。 歌詞の話題が出れば、ソングライティング自体にも触れておきたい。いつもながらのマイルドなポップワークにエモい歌詞。その中に隠し入れた彼女の太い芯のとおった“ロック”たる詩想には、極めて個人的な思いから成り立っていると感じ取り、信服する。しかも、これだけのポピュラー性でありながら、あざとさも凡庸性も押し付けがましさも感じさせない作品が他にあるだろうか。相当漁っても見つかるまい。 -朝も昼も夜も 私はすでに幸せだった- 最後にご紹介するのは本作10曲目「ALREDY」の一説。ミムラス内藤彰子は、2017年にして遂にこの言葉を拾った。 僕は、音楽を嗜む一人のファンとして、彼女の最新アルバム「SQUAME(スクエイム)」が、現在における彼女の最高傑作であると言い切りたいし、2017年に誕生した良作として正式にご紹介したいと思います。 ポップスは、赤裸々かつファッショナブルであるほど麗しき。 取材・文・写真 =田中サユカ 【リリース情報】 タイトル:SQUAME アーティスト:ミムラス内藤彰子 リリース日:2017/10/25 価格:¥2,000+税 レーベル:kwaz label

【INTERVIEW】秘密のミーニーズ、空白の3年間がもたらした“ゆらぎ”を前に語るもの。

テン年代もクライマックスを迎えようとしている2017年9月13日、若手サイケ・フォーク・バンド「秘密のミーニーズ」が、デビュー作にして“最高傑作”との呼び声高いフルアルバム「イッツ・ノー・シークレット」を遂にリリースする。 12弦ギターやペダルスティール、そしてオープンハーモニー。CSN&Yなどウエストコート・ロックへの最上級の敬意を表しての1stEP「おはなフェスタ」を経ての今作「イッツ・ノー・シークレット」は、リズムセクションやハーモニー、構成や歌詞の力配分、生々しさまでも複雑に絡めながらも、それをシンプルに楽しませてくれたことがとにかく嬉しかった。今回のインタビューでは、本作品についてはもちろんのこと、2014年のフジロック・ルーキー以降、これほどのバンドが何故影を潜めていたのかという疑問についてもたっぷりと語っていただいている。 戦争を知らない僕らの時代のサイケやフォークも、今懸命に生きる僕らのドアを確実にノックしている。いつ何が起きてもおかしく無い今日、この傑作の誕生を祝おう。 取材 ・文・写真 / 田中 サユカ 写真 / 渡辺たもつ(Vocal,Chorus,Guitar,Banjo,Pedal Steel,Mandolin) 菅野みち子(Vocal,Chorus,Guitar) ——前作から3年という月日が経ちましたが、色々とあったそうですね。 渡辺 そうですね。本来だったら月2回くらいでレコーディングができればよかったんですけど、レコーディングを始めた直後に自分が新潟に転勤することが決まって、新幹線代の捻出等に苦労してなかなかできなかったですね、それにベース(相本)も転勤になったり、プライベート面で色々重なった。 ——それは2015年のことですか? 渡辺 そうですね。でもそれもCDを作り始めてからのことで、それまでもメンバーが辞めたりして、一悶着あった。曲は出来ていたので、そういった諸々の事情がなければもっと早く出せていましたね。 ——存続するかしないか、にまで? 菅野 (渡辺)たもつさんが新潟に転勤になるくらいの時にありましたね。 渡辺 そうだね。それにもう一人のヴォーカル(淡路)のプライベートの関係で、これまで弾いていたベースを辞めてヴォーカルに専念することになった。彼が辞めちゃうと3声コーラスでなくなる。2声では立ち行かれない。 ——(秘密の)ミーニーズといえば3声っていうイメージですからね。 渡辺 自分たちが勝手に思っているだけかもしれないですけどね(笑)。それに淡路はメインボーカルでもあるので、後任を入れるのも難しい。どうするかな…と悩みましたね。 ——3年という時間はシーンもめまぐるしく変わっていくし、そんな中で個人の心境にも変化があったのではありませんか? 渡辺 これはお恥ずかしい話なんですけど、2014年にフジロックの“ROOKIE A GO GO”という大舞台に立てた時、これを足がかりにして飛躍していくつもりが、なかなか思うように発展できなかった。僕たちはフジロックが目標でもあったし、一度はシーンに認められたという感覚がスルッと抜けていって、メンバーのモチベーションをどこに持っていっていいかがわからなくなりました。地道に続けて行くのも良いと思うんですけど、そういったところでも意識のズレが生じたんです。 菅野 それでドラムの子も劇的にモチベーションが下がってしまって、そういう雰囲気が練習にも出てしまった。結局ドラムの子は辞めてしまって、新しくベース(相本)とドラム(高橋)が入ったんです。 渡辺 彼のラストが2014年の10月にあった池袋のライブ。その後すぐに新しいドラム(高橋)が入ってくれた。彼は慶応大学の「でらしね音楽企画」っていう、60、70年代ロック中心のサークルでドラムを叩いていて、共通の知り合いを通して知り合ったんですよね。すごく良いドラムを叩くヤツで、思い切って声をかけてみたら、思ったよりもずっとミーニーズの音にマッチした。 渡辺 というのも、前のドラムは技術的にも多才なヤツだったので、内心は「前のようにはならないだろうな」と心配もあったんですけど、(彼のドラムで)また全然違う方向性を見いだすことができた。アイツ(高橋)がいなかったらバンドの存続は難しかっただろうな、というくらい助けられました。 菅野 以前はパワフルでロックテイストだったかな、と思うんですけど、彼(高橋)はすごく柔軟性があるというか… 渡辺 (高橋は)すごく歌に寄り添うプレイをしてくれる。特に 菅野の作る曲に合うドラムを叩いてくれるよね。以前はまとまらなくてお蔵入りする曲も多かったんですけど、今はそのままライブで演れるところまで持っていけることが多くなった。それはベースの相本に関しても同じで、だから、みっちゃん(菅野)の作る曲に関しては、結構相本・高橋両氏に助けられている部分があるんじゃないかな。 ——「イッツ・ノー・シークレット」は、その新メンバーが加わって初のアルバムということでもありますね。今作の特徴としては、リズムセクションの幅広さは外せないと思うのですが、ゲストも招いたと? 渡辺 そうですね。今回はキーボードとパーカッションでお招きしました。パーカッションを演ってくれたのは僕の古い友人(高田慎平)で、ASA-CHANGにパーカッション(タブラ)を習ったり、リズム楽器にすごく造詣の深い人。彼に入ってもらったら面白くなるんじゃないかと思ってお願いしましたね。 キーボードの藤木(晃史)くんは、以前ライブで誘ってくれたバンド(芝居小屋)のピアニストで、彼の弾くピアノが好きだったし、昔の西海岸のロックってピアノが入ることが多い。そういう憧れもあって彼に弾いてもらいました。 ——前作はその西海岸のテイスト、つまり皆さんの憧れやそれによって培ってきたものを完全密封された作品、が逆に新鮮に映りました。今作は自分たちのバンドの表現作品として、整理して緻密に組み立てられた完全なるオリジナル作品だと感じましたね。1stアルバムにして、またバンドの代表作として説得力のある作品だと思いました。 渡辺 そうですね。前作は西海岸っていうフォーマットがあって、その手習いの範疇を大きく超えるものではなかったかもしれない。こういう音楽をあんまりやっている人がいなかったこともあって、コンセプトが優先されていたこともあった。 今回は菅野の作る曲が増えたから、手習い的なところを大きく広げることができた。菅野のヴォーカルも4曲。僕らはコンセプトありきで考えちゃう節があるけど、菅野はちゃんと自分の曲を書くシンガーソングライターなので、菅野の力に随分助けられましたね。 菅野 このバンドに入って、60〜70年代の音楽の影響を自然と受けるようになって、作る曲もみんなの好みに合うような曲を書くようになりました。歌っている声もちょっと渋めになってきたのかな。自分でも気づかないうちにそういう変化がありましたね。 ——今作の菅野さんのヴォーカルの引き出しが増えたのにもびっくりしますよね。無意識に変わっていったと言うけれど、自在に使い分けている? 菅野 Fairport Conventionとかをみんなで色々とカバーした時に、自然と影響されているのかな。 渡辺 今思えば、これまで菅野も窮屈だったと思うんですよね。知らずのうちに僕らが「こうあるべきだ」と言うところに押し込めようとしていた。でも菅野は自分のカラーを持っているから、菅野が僕らに合わせてくれていたんだと思うんです。さっきのFairport Conventionとかも、そう言うところからも自分の色として取り入れようとしてくれていたんですよね。 渡辺 だんだん僕らの視野も広がっていって、ガッチガチの60~70年代よりは、例えばWILCOとかの2000年代オルタナカントリーも青木さんの紹介で聴くようになった。お互いのストライクゾーンがやっとうまく混ざり合ってきたんじゃないですかね。 ——音楽的にしっかりと打ち解けたんですね。本来のスタート地点に立てた。 渡辺 それに、新しいメンバー(高橋と相本)は年下なので、菅野はイメージを伝えやすくなったんじゃないかな。前はみんな同期だし、すごく菅野は遠慮していた気がする。だから人間関係的にもより打ち解けた気がしますね。 菅野 (バンドを始めて)もう5年くらい経つんだね。確かに最初はお互いに言い合えない感じもあったんですけど、音楽関係のことに関してはあまり気にせず言えるようになりましたね。 ——良いチームですよね。そして本当に素敵なリーダーだ。 渡辺 メンバーが増えたから一歩引かないとアンサンブルが過剰になっちゃうところある。それでみんな一歩引くことを覚えたね。昔はクリームのインプロ合戦みたいにガンガン演っていたけどね(笑)。 菅野 そうだね、みんながそれぞれバンドの一部として考えるようになったのかもね。足し算というよりは引き算ができるようになったね。 一同笑 渡辺 クリームのメンバーも解散後はエゴを剥き出しの時期を経て溶け込むのが楽しいっていう時期を迎える。そう考えると僕らもある意味ロックの歴史を辿っているのかな(笑)。 ——今まさに話題に出たクリームなどの60-70年代のロックファンには馴染み深いであろう、インプロビゼーションが今回はインストとして3曲も収録されていますね。作品として収録するのはバンドとしても初めての試みですね。 …

日食なつこ「あのデパート」MV、感涙の大反響

ピアノ弾き語りアーティスト日食なつこが先日公開した「あのデパート」のMV。 彼女の出身地である岩手県・花巻市にある有名百貨店の“マルカン百貨店※”が43年の歴史に幕を閉じたタイミング発表となった。 日食なつこ自身の思い入れも強く、なくなってしまう前に何とか“マルカン百貨店”という存在を残したいという想いからMV撮影に至ったという。 その「あのデパート」のMVが公開から1ヶ月を過ぎ、全国から感動の声が届いているという。 YouTubeには下記のようなコメントが寄せられている。 「母と泣きながら見てました; 見るほどに染みます… 素晴らしい曲をありがとうございます」 「聴きながら、PV見たら涙が止まりません。 思い出を詩と映像に残してくれて、ありがとう!」 「マルカンありがとう。 そしてみんなの思いを代弁してくれた日食さんにも感謝です。」 「ひどく大切なモノが有ったようで、 そんなたいそうなモノは無いのだけど、子供用の器にラーメンを移す母の表情と、上手く割り箸を割れずに泣きだした幼い頃の自分、他愛も無い記憶ばかりが溢れてる場所でした。」 ※マルカン百貨店 岩手県花巻市の中心地に43年に渡って営業を続けたデパート。 レトロな内装や箸で食べる10段巻ソフトクリームを出す大食堂で有名な、地元民なら誰もが足を運んだ場所。 老朽化による耐震問題で2016年6月7日に惜しまれつつ閉店となった。 マルカン百貨店HP http://www.marukan-group.jp/shop/department.html

突如現れた謎のバンド Nulbarich(ナルバリッチ)、6.22デビュー

今、あるバンドが日本の音楽シーンに新たな才能の登場として、各方面から大きな注目を集めている。 突如シーンに登場した謎多きバンド。ソウル、アシッド・ジャズなどをマナーに唯一無二のグルーヴを奏でるポップ・ロック・バンド“Nulbarich(ナルバリッチ)”。 6月22日に発売されるシングル『Hometown』のリリース前に、18日に行われたYATSUI FESTIVAL! 2016に出演し、駆け付けた耳早リスナーの前で、『Hometown』に収録されている「Hometown」、「Fallin’」など計6曲を披露し、大盛況のうちに終幕した。 7月には、韻シストBANDとの対バン・イベントが決定する等、各方面からイベントオファーが殺到中のNulbarich。全国各地にその名を轟かせるのも時間の問題で、2016年最も注目を集める新人になるといっても過言ではない彼らの動向にぜひ注目してもらいたい。 【リリース情報】 タワーレコード限定シングル『Hometown』 リリース日:6/22 価格:¥1,000(税別) ライヴ情報等はこちらから Nulbarich オフィシャルサイト http://nulbarich.com/

第88回アカデミー作曲賞を受賞!エンニオ・モリコーネという巨匠

第88回アカデミー賞で大きく報道されたのは2つだろう。レオナルド・ディカプリオが主演男優賞をとった。「ギルバート・グレイプ」で助演男優賞にノミネートされたのが1993年。日本のレオ様ファンも喜んだはずだ。もうひとつは「マッドマックス」の6冠。何度も映画館へ足を運んだ人がいるぐらい「マッドマックス」にハマった人たちがいる。作品賞をもらってもおかしくなかった。しかし、もっと賞賛されていい作品がある。「ヘイトフル・エイト」だ。第73回ゴールデングローブ賞、第69回英国アカデミー賞、そして第88回アカデミー賞のすべてで作曲賞を受賞した。作曲家の名前はエンニオ・モリコーネ。 THE HATEFUL EIGHT – Official Teaser Trailer https://www.youtube.com/watch?v=gnRbXn4-Yis 「ヘイトフル・エイト」でメガホンをとったのはクエンティン・タランティーノ監督だ。言わずと知れた映画オタク(シネフィル)である。監督自身もそれを認めている。「ヘイトフル・エイト」の内容を一言で表現するなら西部劇だ。タランティーノ監督らしい題材を選んでいる。前作「ジャンゴ 繋がれざる者」も西部劇だった。 A Fistful of Dollars Official Trailer #1 – Clint Eastwood Movie (1964) HD アメリカの西部劇では善と悪がハッキリと分かれている。それは今もハリウッド映画の底辺に流れているはずだ。具体例を挙げるまでもなく、アメリカ先住民や黒色人種が悪で、白色人種が善の映画は腐るほどある。悪役は善にはなれない…いや、悪のままでいなくてはならないのが掟のようにあった。「ジャンゴ 繋がれざる者」でタランティーノ監督は、それを見事に裏切っている。 巨匠モリコーネとの仕事にタランティーノ感激!『ヘイトフル・エイト』特別映像 「ヘイトフル・エイト」で作曲をしたエンニオ・モリコーネはイタリアの巨匠である。映画界で名前が知られたのはスパゲッティ・ウェスタン(イタリアのウエスタン映画)だ。「荒野の用心棒」や「夕陽のガンマン」などの音楽で有名になった。シネフィルのタランティーノ監督が「ヘイトフル・エイト」の作曲をエンニオ・モリコーネに依頼したのは自然に感じる。そして、それは大成功を収めた。 映画「ニュー・シネマ・パラダイス完全オリジナル版」日本版劇場予告 エンニオ・モリコーネが曲を提供した映画は幅広い。マルキ・ド・サド原作で、ピエル・パオロ・パゾリーニが監督をしたカルト映画「ソドムの市」、ギャング映画の大傑作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」、映画愛に満ちた名作「ニュー・シネマ・パラダイス」など、まるで共通点がない。エンニオ・モリコーネの曲は優しく、時に大胆な展開をする。全作品に言えることはひとつだろう。決して音楽が映像のジャマをしない。映画を見終わった観客が家路についても、それぞれの耳にそっと残るようなメロディをつくる。 明確な善と悪はこの世に存在しない。エンニオ・モリコーネの映画音楽はそんな当たり前のことを具象化している。これまでエンニオ・モリコーネが作曲した音楽たちに最大の賛辞を、そして、アカデミー賞受賞に心からスタンディングオベーションを送る。

6年ぶりのアルバム『K 2.0』 クーラ・シェイカーの挑戦状

クーラシェイカーはデビュー・アルバム『K』でイギリスのアルバム・チャート1位を取った。華々しい登場だ。ギターボーカル&のクリスピアン・ミルズがルックス、家系も含めて人気の原因だったこともある。ただ、その後の売れ行きは今ひとつだった。 Kula Shaker – Infinite Sun 2016年、2月末に新譜が発売される。タイトルは『K 2.0』。収録されている「Infinite Sun」のミュージックビデオを、クーラシェイカーは出してきた。イギリスの、しかもロンドン出身のバンドとは考えられない。イントロからインドに影響された『K』をさらに進めたような音が鳴っている。これが彼らの『K 2.0』なのだろう。 Kula Shaker – Tattva デビュー・アルバムからインド音楽への傾倒は濃かった。ビートルズやローリング・ストーンズとの大きな違いは、音の取り込み方だ。クーラシェイカーは良い意味で言えば「そのままの生食」を混ぜ込んでいた。食べた瞬間にインド料理と分かるような感じだ。ビートルズなどはスパイスとして利用した。隠し味ではない。ハッキリと風味は口に残る。しかし、もっと複雑な口当たりがした。それがセンスと呼ぶなら、それで終わりだ。 Kula Shaker – Hey Dude 「Hey Dude」。デビュー・アルバムは、この曲から始まる。1996年、シングルカットされた。全英2位である。アメリカではスマッシュ・ヒット程度の扱いだ。「1発屋」という言葉がある。音楽シーンにも数々の「1発屋」がいた。ほとんどがシングル曲の「1発屋」だ。時代のせいもある。昔はシングル曲がメインの音楽界だった。クーラシェイカーのイメージとしてアルバム「K」だけの「1発屋」。その印象は拭い取れないだろう。 Kula Shaker – Hush もう1曲、全英2位を取ったシングル曲がある。カバー曲だ。元はジョー・サウスの曲だった。日本では、ディープ・パープルのカバー曲の方が有名かもしれない。「Hush」だ。センスの話をしよう。カバー曲のカッコ良さならディープ・パープルよりクーラシェイカーの上だ。インドの味はしない。正統派である。クーラシェイカーは実力派だった。あまりにも過小評価されていないだろうかと、そんな気がしてならない。 1996年のデビュー・アルバム『K』。2016年に発売される『K 2.0』。「Infinite Sun」を聴く限り、こんなことを感じる。 進化ではない。深化だ。 デビューから20年が経った。あえて、『K 2.0』というタイトルを付けたことは、クーラシェイカーとしてリスナーへの挑戦かもしれない。「ほら、聴いてみなよ」とクリスピアン・ミルズが語りかけているようだ。

【INTERVIEW】アブナイSSW北村早樹子「愛って言葉がいけないんです。」

北村早樹子の作品を初めて聞いた時、真っ先に戸川純さんの「蛹化(ムシ)の女」を思い出して喜んだ。そして彼女の新作『わたしのライオン』を始めて聞いた時、真っ先に「遂に目に見えるカタチになったぞ!」と喜んだ。本作は誰が聞いてもまず音が決定的に違う。レトロな構造を崩さずに音の透明感をそして厚みをプラスした難技には拍手を送る他ない。それにより浮き彫りにされるエロス。このエロスの定義が時代によって移りゆく中で「今」を皮肉るような質感こそが彼女の無意識な秘技であり、それらは「女性の悪と性が正常に納められた魅惑の現実」とも言えようか。 インタビューでの彼女はお馴染み「アウト×デラックス(フジ系列テレビ番組)」どおりの「変わった雰囲気」調でゆっくりと語ってくれたのだが、その眼差しは作品どおりの「シミだらけの人生」調に静かに現在を見据えていた。そして、興奮すると可愛い。 彼女をまだ「異色」で片付けるか?僕はそうは思わない。大多数を占める女子に潜む悪と性をデザインするマルチ女子クリエイター、そう映っている。 ▷大阪にお住まいで? 北村 いえ…もうこう、こっちに住んで7年目とかです。関西弁が抜けないだけで。 ▷どうですか?大阪と東京って。 北村 もう全然!東京の方が馴染んでるというか…。東京大好きなので、むしろ大阪は帰りたくもないみたいな感じなので(笑)。 ▷(笑)どうですか? 北村 やっぱりね、人の感じとかが全然違う。 ▷大阪の方とお話しする機会があったんですけれど、東京ではみんなが信号を守っていてびっくりするって。 北村 そうそう、そうですね。大阪人は反対側の信号がピカピカしてるときは行ってもいいっていうことになっていて。本当は良くないんですけど(笑)。 ▷今日は、アルバムについてのお話しと北村さんについてのお話を少し伺いたいと思っています。 北村 よろしくお願いします。 ▷まずはおめでとうございます! 北村 ありがとうございます。 ▷10周年にリリースされた『グレイテスト・ヒッツ』以来ですよね。 北村 いつもはソロだから自分の采配のみで作っていたんですけど、今回はプロデューサーさんがいて、その方に編曲ごとお任せするっていう形だったので、人と何かをしっかり作るっていうのを初めてやったので… ▷難しかった、ですか? 北村 いや、それがレコーディングもすっごく楽しかったです。一人でやっていると、どうしても自分で自分を追い詰めてしまっている感じなんですけど、プロデューサーがいることによって「ああして・こうして」って言われるのに乗っかっていけば良い感じだったので、すごく楽しくレコーディングできましたね。 ▷まず、音が格段にクリアになった印象を受けたのですが。サウンドプロデューサーが中村宗一郎さんですね。 北村 最初は「すごく気難しいオッサンだろう」と思ってビビっていたんですけど、いざご一緒してみると、本当に「面倒見のいいオッサン」って感じでお世話になっておりますね、いろんな面で。 ▷北村さんの楽曲っていうとまずは“個性的な歌詞”だと思うんですけど、音質がクリアになった分、音数が増えても歌詞が入ってくる、入ってくる!一曲目が「本日の悲報」。出だしが「日本でいちばん臭いらしい…」。かなり衝撃的です。 北村 いきなりそれですもんね(笑)。 ▷しかも三拍子ってわりとポップでは扱われないようなリズム。でも北村さんは躊躇なくよく使いこなされていますよね。 北村 私、好きなんですよ、三拍子。四拍子よりも三拍子の方が出て来やすいんです。「ずんちゃっちゃ、ずんちゃっちゃ…」みたいなノリが好きなのか、私の曲にはわりと曲が多い。 ▷アルバムタイトルもすごい。『わたしのライオン』は曲にもありますが、曲から作れらたのですか? 北村 はい。「わたしのライオン」っていう曲がそのままアルバムタイトルになりました。 ▷リード曲になるわけですが、これもかなり歌詞が…スゴくないですか? 北村 ちょっとエロいというか… ▷エロいって言うか…エロい、ですよね(笑)。 北村 そうなんですよ(笑)。 ▷すごいですよね。「ようこそ待っていました 狭いところですけど…」って。例えばこれをカヴァーで歌える人がいたら紹介してほしいくらい。誰も歌いこなせないでしょう? 北村 なんですか、それ(笑)!誰でも歌えませんか? ▷この世界を表現できる人ってなかなかいないでしょう。 北村 ヤラしい歌ですよねえ、本当に! ▷別の方が歌ったら、変にいやらしくなったり奇をてらう感じになったりしちゃう。これは北村さんの天性としか言いようがないから、ちょっとズルい!なんて(笑)。 北村 私はおっぱいも全然ないんですけど、エロさみたいなのが人より少ないからちょっとギョッとするくらいのことを言っても許してもらえているんちゃうかな?って。多分、本当にグラマラスでヤラしい感じの人がエロいヴォイスで歌うと、ちょっとやりすぎな感じになるかもしれないんですけど、私は残念ながらあんまりないんで、なんとか許してもらえているんだと思います。もう三十路なんですけど(笑)。 ▷いやね、私はこれが北村さんの最強の武器の一つなんじゃないかって思っているんですよ。例えば私はこの作品を通して「エロスとは何か」と考えるわけですよね。或いは「色気とは何か」。叶姉妹のように直接的なものだけがエロスじゃない。誰が操作するのか、そうなりがちですけどもね。このサウンドになってから余計に北村さんの考えるエロスが浮き出てきた。 北村 あら! ▷それに加えて最小限のノイズやエレキの男臭さや汚さで“エロ”がさらに引き立つんですよ。これを読んでから作品を聴いてくれた方は「エロくねえじゃん!」っていう人もいるかもしれない。でも、きっと頷く方も多いと思うんですよね。 北村 私は意外とエロスとは無縁の人間と思われがち。それこそ「アウト×デラックス」という番組を観た人が「バツイチなんです〜」っていう私の発言に対して「絶対バツイチなワケないだろ〜!コイツ処女だろ〜!」ってつぶやかれたりしていて。 北村 それを見て「処女って思われるんや〜あ…。」みたいな感じがあったんです。「普通に30代女子が起きるくらいの…それくらいのことはやってるぜ?」みたいな(笑)。そんなに経験豊富なワケじゃないですけど、(私の作品は)女の人なら誰しも思うようなことなんじゃないかって。 ▷むしろ女性の世界をそんなに知らない男性がそういうのかも!あんまり良い例えが思いつかないんですけれど…例えばE-Girlsみたいな女子はほんの極一部で、大多数は“ただの女子”。男子がゲームやスニーカーに対し夢中になるように、女子も何かに夢中になったりするわけで。因みに、いちばんお気に入りの曲はどれですか? 北村 やっぱりリード曲になった「わたしのライオン」。こういうアレンジになって、すごく気に入っていますね。あとは、森下くるみさんが歌詞を書いてくださった「みずいろ」っていう曲があるんですけど、自分では書けないような言葉。くるみさんはわたしのパーソナルな部分をわかってくださっている方なので、すごく当て書きをしてくださっていて…「泣いちゃう!」みたいな。 この「いろんなことがあったけどもね この染みだらけの 人生がとても だいすき」ってい言うところがすごくないですか? ▷うん…ああ、いいですね!染みだらけの人生。ぐっときますね。 北村 みなさん自分に当てはまる方もいらっしゃると思いますね。 ▷森下くるみさんは北村さんのお友達ですか? 北村  くるみさんの『すべては「裸になる」から始まって』という本を読んですごく感動して、ファンになったんです。 3年くらい前に私が出た映画と同時上映されていたのが森下くるみさんが脚本を手がけた映画で、その時に配給の人に「ファンなんで、チョット紹介してもらえませんかね?」とかいって近寄って(笑)。 北村 当時は家が近所だった時もあったのでくるみさんが「遊ぼうよ!」って言ってくださったんです。そこから色々ご飯を食べに行ったり家にお邪魔したりして仲良くさせていただいています。だから私の卑屈な部分や暗い部分をわかってくださっているので、良い曲を書いていただけたんだと思います。 ▷では、今回北村さんが作詞をオファーされたんですか? 北村 そうですね。多分作詞をお願いしたのは初めてだと思いますね。そういうことを誰かに…。 ▷そうですよね。北村さんといえばシンガーソングライター。それから劇団もされていますよね。 北村 いえ、客演で呼んでいただいてちょっと出していただいてる程度ですけど。お芝居はご覧になりませんか? …

Walkings初メディア「俺らにまつわるロックとかブルースとか」

何かの表紙である種のサウンドが跳ねると一月もしないうちにその手の音が”唯一無二”曰く市場へ溢れかえるような気がしてしまう。まるでそれが今の“正解”だと洗脳させるかのように。そう感じているのは恐らく私だけではないはず。それが果たして如何なものかはともかくとして、少なくとも“アーティスト”には“アートを創造する人”らしく、どうかしっかりと覚醒していてほしいと願う。 Walkingsは音楽シーンのホープでいながら芯を崩さないグルーヴを守れるスリーピースだ。そしてちょっとした”はっぴいえんどブーム”である昨今、誤解を恐れず言うならば”ここではないどこか”を探るスピリットや生きたロックの解釈の仕方について最もはっぴいえんどを継承していると言えるのではないかとも感じる。そんな彼らの初メディア登場ではバンドの音楽感についてどっぷりと語っていただいた。読めばわかるがとにかく“ロック”&“ロール”で、2次会まで縺れ込む盛り上がりぶりであった。本当にありがとう!しかしながらロックすぎて固有名詞達はまたしても問題形式処理の有様。しかし何はともあれ、Walkingsのような腕の確かなバンドこそナマで聴くべきであろうし何より他では絶対に読めないものになった。答えあわせがてら一度は必ずライヴへ足を運ぼう!と個人的にもすすめておきたい。 高田 風(Vo.Gt.) / 吉田 隼人(Ba.) / 井上 拓人(Dr.) photo / Mami Otsuki 井上 ブルース根本はジャンルではない。 高田 ブルースとは“精神”? 井上 それもダセーんだけど! 高田 だって、ブルースってジャンルじゃねーの? 井上 ジャンルだけど。初期のデルタブルースはただの12小節でもない。うーん。やっぱリズムでしょう。 吉田 ブルースの話マジで参加できねー。 高田 別に古いもんをやりたいわけじゃないからな、俺たち。ただ「かっけエ」って思うものが60年代後半とかだったりする。 吉田 結成は確か2012年の2月だったと思う。で、井上が1年後くらい。 井上 そもそもこの2人は高校の時からバンドやってたんですよ。僕はずっと2人のことを知ってたんですけど。 吉田 ネット越しでずっと俺らのことを見てたらしい。 井上 そうそう。ネット越しで。高校生のバンド大会みたいな「ストファイ」っていうのがあって、所詮高校生バンドなんで取るに足らないやつばっかだったんですけど、その中でダントツ「やばいぜ!」って。Aしか弾かないめっちゃロック。 一同笑 井上 僕らくらいの世代の音楽好きは例えば僕らより年上の世代はその年代にクリーンヒットしちゃうヒーローみたいなアイコンは絶対いると思うんだけど、僕らの世代はそういうアイコンが途絶えてるんで、いくらでも情報があふれてるから、いくらでも自分のセンサーに触れた音楽を集められる。だからみんな共通して好きなアイコンがいるってことはあんまない。 高田 そうだね。僕もそんなに好きな音楽は共通してないもんね。ジミヘン(ジミ・ヘンドリクス)は共通してるけど。 井上 誰でも絶対とおってるだろうっていうところはあるけど。 高田 うん。あとビートルズ。オレ達の親父世代がたぶんドンピシャだったんですよ。その影響を受けてる息子達が多いんじゃないかな。 吉田 俺の親父はエイベックスしか聴かないから。 爆笑 井上 本当に好きっていう人はいなくない?まあ、知ってる程度でどっぷりっていう人はあったことないな。 高田 まあ確かにビートルズだって、好きって言ってもたいして曲知らない人は多いね。どの歌がビートルズのパクリだとか全然気づかない人は多い。まあ、その辺はわからないですけど。 今年のフジロック・ルーキーのラインナップみてもポップ全盛期という印象でしたがその中でも異彩を放っている存在ではありませんでした? 高田 超アウェーでしたね。でも、みんながやってることと違うことをやれてると思えたんで嬉しかったです それで、Walkingsご自身の音づくりに関しても伺いたいのですが、1枚目よりも出すに連れてだいぶソリッドな方向に向かってないですか? 高田 全部一発録りなんすよ。 吉田 あれは井上の家で録ったんですよ。で、井上が編集して… 井上 そう。めっちゃ田舎に住んでるんですよ。埼玉の春日部ってところなんですけど、機材とかドラムとかあって。別に防音とかしてないんですけど、まわり田んぼしかないんで。あのソリッドな音は素人のミキシングの賜物というか。以前の音源は完全にプロの音なんです(笑)。ただそれしかできなかっただけなんです。 高田 (ジャケワークは)水彩絵具で俺が描いたんですよ。で、ああいう曲を書き出したのはNYCに行ってからなんすよ。最初はライヴハウスとか行ってたんですけど全然ピンとこなくて。なんた東京とあんまり変わらない感じがしたんすよ。ライヴハウス事情というか。「これ、あれのパクリだな〜」とか。ジャズとかゴスペル観に行ったほうが全然面白かったですね。 井上 もともとジャズとか全然聴いてなかったからNYCから帰ってきて「ゴスペルとジャズ、めちゃめちゃ聴いてきた!」とか言ってそういう曲とか書き出したんですけど理論的なことはあんまり学んでないから「コードとかよくわかんねー」とか言って…(笑)! 高田 最近はもう…飽きました(笑)。 井上 一瞬寄り道したけど、また戻った。 高田 「NIVEA」とかそんな感じで、〈一人でぐーだら…〉の所はめっちゃ三重奏でいきたかったんだよね。本当は。 吉田 今ならできんじゃね? 初期の頃のほうがエレキ初期のブルースロック感がでてましたよね。 井上 そう。思ったのが、入る前からこのバンドのことは勝手にチェックしてて、紆余曲折経て2012年くらいに「イッキーサンプス」って名前でトリオになってたんですよ。「まだやってんだなー」って見てて。リズムが自由な感じで。キメのところで譜面に書けないあの感じ(ジェスチャー)があって。下手なのかと思ってたら全部そうで。「これ、絶対わざとだ。ワザとやってるとしたらとんでもねえぞ!」って。ブルースなんですよ、それが。ブルースってリズムと自由さとピッチの危うさが一番肝だと思うから。もともと一人で生まれた音楽だからね。だから「イッキーサンプス」って名前が(イコール)ホワイトストライプス。それがギリだったわけ。アイコンタクトしてやるには。それをトリオで、ホワイトストライプスより多人数でやる…それはまずいぞ!って。 高田 この3人でやるといいんすよ。グルーヴが。自由自在だよね。井上のおかげかもしんないけど。 吉田 井上のおかげだね。井上がついてきてくれたからね。そもそも井上はドラムがいなくなって、ツィッターとかで募集したら、ね。 井上 俺はずっと引きこもってて「ドラム募集してるぞ?じゃあ…」って。なんかね、その募集要項がマジふざけてて(笑)!超大食いな奴、ゴリラみたいなやつ… 高田 “おしゃれ”とかね。 井上 そう!おしゃれ。カッコ明らかにおしゃれというよりは自分なりのおしゃれがある奴。 爆笑 井上 本当ね、10項目くらいあって俺は2項目くらいしかあてはまんなかったんすけど「まあ、いいか。」って。 …