Artist Interview

Walkings初メディア「俺らにまつわるロックとかブルースとか」

何かの表紙である種のサウンドが跳ねると一月もしないうちにその手の音が”唯一無二”曰く市場へ溢れかえるような気がしてしまう。まるでそれが今の“正解”だと洗脳させるかのように。そう感じているのは恐らく私だけではないはず。それが果たして如何なものかはともかくとして、少なくとも“アーティスト”には“アートを創造する人”らしく、どうかしっかりと覚醒していてほしいと願う。

Walkingsは音楽シーンのホープでいながら芯を崩さないグルーヴを守れるスリーピースだ。そしてちょっとした”はっぴいえんどブーム”である昨今、誤解を恐れず言うならば”ここではないどこか”を探るスピリットや生きたロックの解釈の仕方について最もはっぴいえんどを継承していると言えるのではないかとも感じる。そんな彼らの初メディア登場ではバンドの音楽感についてどっぷりと語っていただいた。読めばわかるがとにかく“ロック”&“ロール”で、2次会まで縺れ込む盛り上がりぶりであった。本当にありがとう!しかしながらロックすぎて固有名詞達はまたしても問題形式処理の有様。しかし何はともあれ、Walkingsのような腕の確かなバンドこそナマで聴くべきであろうし何より他では絶対に読めないものになった。答えあわせがてら一度は必ずライヴへ足を運ぼう!と個人的にもすすめておきたい。

高田 風(Vo.Gt.) / 吉田 隼人(Ba.) / 井上 拓人(Dr.)

photo / Mami Otsuki

井上 ブルース根本はジャンルではない。

高田 ブルースとは“精神”?

井上 それもダセーんだけど!

高田 だって、ブルースってジャンルじゃねーの?

井上 ジャンルだけど。初期のデルタブルースはただの12小節でもない。うーん。やっぱリズムでしょう。

吉田 ブルースの話マジで参加できねー。

高田 別に古いもんをやりたいわけじゃないからな、俺たち。ただ「かっけエ」って思うものが60年代後半とかだったりする。

吉田 結成は確か2012年の2月だったと思う。で、井上が1年後くらい。

井上 そもそもこの2人は高校の時からバンドやってたんですよ。僕はずっと2人のことを知ってたんですけど。

吉田 ネット越しでずっと俺らのことを見てたらしい。

井上 そうそう。ネット越しで。高校生のバンド大会みたいな「ストファイ」っていうのがあって、所詮高校生バンドなんで取るに足らないやつばっかだったんですけど、その中でダントツ「やばいぜ!」って。Aしか弾かないめっちゃロック。

一同笑

井上 僕らくらいの世代の音楽好きは例えば僕らより年上の世代はその年代にクリーンヒットしちゃうヒーローみたいなアイコンは絶対いると思うんだけど、僕らの世代はそういうアイコンが途絶えてるんで、いくらでも情報があふれてるから、いくらでも自分のセンサーに触れた音楽を集められる。だからみんな共通して好きなアイコンがいるってことはあんまない。

高田 そうだね。僕もそんなに好きな音楽は共通してないもんね。ジミヘン(ジミ・ヘンドリクス)は共通してるけど。

井上 誰でも絶対とおってるだろうっていうところはあるけど。

高田 うん。あとビートルズ。オレ達の親父世代がたぶんドンピシャだったんですよ。その影響を受けてる息子達が多いんじゃないかな。

吉田 俺の親父はエイベックスしか聴かないから。

爆笑

井上 本当に好きっていう人はいなくない?まあ、知ってる程度でどっぷりっていう人はあったことないな。

高田 まあ確かにビートルズだって、好きって言ってもたいして曲知らない人は多いね。どの歌がビートルズのパクリだとか全然気づかない人は多い。まあ、その辺はわからないですけど。

今年のフジロック・ルーキーのラインナップみてもポップ全盛期という印象でしたがその中でも異彩を放っている存在ではありませんでした?

高田 超アウェーでしたね。でも、みんながやってることと違うことをやれてると思えたんで嬉しかったです

それで、Walkingsご自身の音づくりに関しても伺いたいのですが、1枚目よりも出すに連れてだいぶソリッドな方向に向かってないですか?

高田 全部一発録りなんすよ。

吉田 あれは井上の家で録ったんですよ。で、井上が編集して…

井上 そう。めっちゃ田舎に住んでるんですよ。埼玉の春日部ってところなんですけど、機材とかドラムとかあって。別に防音とかしてないんですけど、まわり田んぼしかないんで。あのソリッドな音は素人のミキシングの賜物というか。以前の音源は完全にプロの音なんです(笑)。ただそれしかできなかっただけなんです。

高田 (ジャケワークは)水彩絵具で俺が描いたんですよ。で、ああいう曲を書き出したのはNYCに行ってからなんすよ。最初はライヴハウスとか行ってたんですけど全然ピンとこなくて。なんた東京とあんまり変わらない感じがしたんすよ。ライヴハウス事情というか。「これ、あれのパクリだな〜」とか。ジャズとかゴスペル観に行ったほうが全然面白かったですね。

井上 もともとジャズとか全然聴いてなかったからNYCから帰ってきて「ゴスペルとジャズ、めちゃめちゃ聴いてきた!」とか言ってそういう曲とか書き出したんですけど理論的なことはあんまり学んでないから「コードとかよくわかんねー」とか言って…(笑)!

高田 最近はもう…飽きました(笑)。

井上 一瞬寄り道したけど、また戻った。

高田 「NIVEA」とかそんな感じで、〈一人でぐーだら…〉の所はめっちゃ三重奏でいきたかったんだよね。本当は。

吉田 今ならできんじゃね?

初期の頃のほうがエレキ初期のブルースロック感がでてましたよね。

井上 そう。思ったのが、入る前からこのバンドのことは勝手にチェックしてて、紆余曲折経て2012年くらいに「イッキーサンプス」って名前でトリオになってたんですよ。「まだやってんだなー」って見てて。リズムが自由な感じで。キメのところで譜面に書けないあの感じ(ジェスチャー)があって。下手なのかと思ってたら全部そうで。「これ、絶対わざとだ。ワザとやってるとしたらとんでもねえぞ!」って。ブルースなんですよ、それが。ブルースってリズムと自由さとピッチの危うさが一番肝だと思うから。もともと一人で生まれた音楽だからね。だから「イッキーサンプス」って名前が(イコール)ホワイトストライプス。それがギリだったわけ。アイコンタクトしてやるには。それをトリオで、ホワイトストライプスより多人数でやる…それはまずいぞ!って。

高田 この3人でやるといいんすよ。グルーヴが。自由自在だよね。井上のおかげかもしんないけど。

吉田 井上のおかげだね。井上がついてきてくれたからね。そもそも井上はドラムがいなくなって、ツィッターとかで募集したら、ね。

井上 俺はずっと引きこもってて「ドラム募集してるぞ?じゃあ…」って。なんかね、その募集要項がマジふざけてて(笑)!超大食いな奴、ゴリラみたいなやつ…

高田 “おしゃれ”とかね。

井上 そう!おしゃれ。カッコ明らかにおしゃれというよりは自分なりのおしゃれがある奴。

爆笑

井上 本当ね、10項目くらいあって俺は2項目くらいしかあてはまんなかったんすけど「まあ、いいか。」って。

高田 10個のうち5個当てはまればいいっていう感じ。

井上 俺は2個くらいしかあてはまんなかった(笑)。

高田 うん。ほぼ当てはまらなかった。でも“ギターが上手い”とかは合ってた。

吉田 ギターがめちゃめちゃ上手いんですよ、井上は。全部できるんです。ドラムですけど。僕は高校時代に(高田と)知り合って、高校は別だったんですけどコイツが組んでるバンドのギターと中学が一緒で「ベースがいねえ」ってことをきいて入ったんです。

高田 吉田はもともとギタリストでニルヴァーナとかレッチリとかのコピバンやってたよね。

井上 え?高校の段階で全然(ベースの経験ない)だったの?マジで?

高田 ストファイのときはベース始めて一年くらいだったよね、まだ。

井上 マジ?やばいっす。マジで。

吉田 気づいたら8年くらい弾いてた。

井上 やべえ!ベースマジでやべえ!ってなってた。

吉田 へーえ!びっくり。

井上 渋い!ルート(弾くマネ)!とにかくルート!みたいな。

吉田 風が始める前に「ホンモノの、ロック」って言ってはじめるんすよ(笑)。で、渋谷AXって場に感動したのかなんなのか泣いちゃって。

一同笑

井上 あの「ホンモノのロック」だけは寒かったなー(笑)。

爆笑

改めて、Walkingsにとってロックとは?

井上 考えたことある?

高田 何がロックとかはわからないんですけど、何がロックじゃないとかはわかります。例えば《 ① 》とかはロックじゃないっす。

吉田 《 ① 》はいい例えだ!

井上 ディスる方向でいくー?

吉田 例えば、すげー私服とかで演ったら誰もついてこないんじゃないか?っていうこと。あの格好だからロックに見えるんじゃん?

高田 なるほどね。昔の曲とかもきいたんだけど、ただ海外のマネをしてるだけって感じがする。

井上 「ああ、初期のストーンズとかすげー好きなんだねー。」みたいなね。

吉田 ただ遅れてきたストーンズとか。モンキーズとかね。

高田 あと《 ① 》みたいに精神的に「ロックだぜ!」っていうのはダセえって思ってて。音楽的に攻めてるかどうか。

井上 そんなにね、ロックかどうかはあんまり。

高田 日本ではそこまでロックが浸透してないわけじゃないすか。そうなると簡単な方法としてもろパクリして日本で発表すればいいっていう方法があるんですけど、なんか結局猿まね野郎で終わってかっこ悪い。だから俺らはアメリカの音楽が好きなんですけど、アメリカの文化そのものに憧れる訳ではなくただ全人類の一員として音楽を組み合わせたりなんなりして新しい音楽を作りたい。

井上 やっぱ、はっぴいえんどっしょ。はっぴいえんどは最高だよね。

高田 はっぴいえんどは“どロック”よ。うん例えば…《 ② 》はちょいロックじゃないかな(笑)。

井上 《 ② 》はシビアだなー。

井上 今急にはっぴいえんどが流行ってるじゃないすか。ロックってさ、語弊が生まれるかもしれないですけど今風さん(高田)が言った定義でいえばロックだよね。ロックが日本語に当てはまらないっていう話で、日本語にロックを当てはめた。大成功してるし、かっけー。

高田 俺の曲の作り方としてはまず『日本語』っていうのは大前提にある。日本語で歌うロックとして次の世界にいこうとしてる。あんまり自分の詩で何かを伝えたいと思ってはいないんで意味はなくていいと思ってる。

井上 音としての言葉の選び方がいいよね。意味はどうこうっていうのはこじつけみたいな話で。だから、はっぴいえんどとは逆のやり方だよね。はっぴいえんどは日本語に音楽を合わせたけど、俺たちはロックに日本語を当てはめる。

高田 簡単に言うと《 ③ 》流ってとこです。俺的に言えば《 ③ 》

っていうのはまあまあロックかな

一同笑

井上 《 ④ 》は?

高田 うーん、ロックじゃねえ(笑)。

吉田 もうやめろ。わかってて聞いただろ(笑)?

井上 いやいや、俺は《 ④ 》はすごいと思ってるけど。だってあいつら、ピストルズより先だぜ。

高田 ラモーンズのが早くなかったっけ?

井上 言ってたね。

吉田 やっぱ俺的に一番ロックはニルヴァーナだよ。一番馬鹿な小学生にニルヴァーナはガツンといかせる。

井上 俺、ツェッペリンに初めてガツンときた。

吉田 それ、いっつも言うんですよねー。

高田 俺、CMで流れてたジミヘンにガツンときた。「Crosstown traffic」。

井上 車のCM?

高田 そうそう!(CMのマネをする)ラップって、リズムかっこいいっすけど、俺的にはサウンドが一辺倒でつまんねえ。ちょっとだけキャッチー出してくることがある。

井上 フックでね。

高田 でもなんか入りづらいっていうのがあるんですけど、ジミ・ヘンドリクス聴いたときに歌っぽくてラップっぽい。まだなんにもわかんない頃にきいたんですけど、その中間をいってるような気がしてちょうどよかった。だから「コレ、俺がほしかったやつやん!」ってなったねー。

吉田 あージミヘンなんだあー。

爆笑

高田 カート・コバーンってさあ「売れるためにはなんでもします」っていうスタンスだったらしいじゃん。

吉田 そうなんすよ。

井上 メンヘラだから。完全に躁鬱。

高田 ニルヴァーナってバンド名、仏教的な名前なんだよな。で、適当につけたのかと思ってたんですけど、日本語訳をみてたら、自分が何を考えてるか見つめてる、っていう感じなんすよ。で、それって仏教なんすよ。

吉田 深いねえ!もうカッコ良さだけだよ。もう、今でも聞いたら泣きそうになる。「You know you’re right」。俺、ツタヤで借りてきてウィニングイレブンしながら聴いてたんすけど…置いちゃいましたもん、コントローラー。あの衝撃が始まりでしたね。

高田 死ぬ直前に録音したやつでしょ?

吉田 そう。もうどっぷりで、本当に死にそうだよね。

高田 「君が正しいよ」だからね。

吉田 そう。「ペイン」って叫んでるからね。「イターーーーーイ!」って。死ぬよね、もう。

井上 結果死んだ。

吉田 あと、アンプラグドあるじゃないですか。

井上 あれはいいね。

吉田 レッド・ベリーのカヴァー( Where Did You Sleep Last Night? )があって。思えばそれがブルースとの出会いですかね。そのブルースの曲をカート・コバーン流にやってるていうのがロックだよね。

ジミヘンもなんでも自分の曲にしちゃうもんね。

吉田 そう。いわゆるブルースっぽくやるんじゃなくて、あくまでも素材で自分のものにしちゃう。

井上 あくまでも素材。

吉田 完全に自分流に歌っちゃえる感じが、ブルースの良いところですよね。

高田 とりあえず叫びたいから1オクターブあげちゃう。でもあの曲すごくて、俺NYCで路上ライヴやって稼いでたんすけど、その曲やるとみんな盛り上がって叫ぶ。

吉田 カートのせいだよね。僕もアコギで自分の家で「マイガール!」って叫んでたら警察来ました。上の人から「下から叫び声が聞こえて、心配なので通報します」って警察が来た。…日本だと警察が来ます。

爆笑

井上 普通に心配されちゃった。でも、自由度が高いからブルースはいいんだよね。

高田 うん、なんとでもできる。

ブルース・ロック・フォーク・グランジ・ゴスペル…これらの“埃”を“誇り”にWalkings独自の“ユートピア”を描くような自由度は、例えば小柄な身体から叩き落とされるパワードラムや国境を完全無視した歌詞世界や歌い癖、例えば狂気を内に秘めたように静かにうねるベース、例えば気まぐれに見せたコラボレーション、例えば咳や会話の入り混じった力の抜けたイイ加減さ。…それらの全てから“もう一度聴きたいのかどうか”というシンプルな衝動をシンプルな手段で示してくれる非常に貴重な存在であり、依存傾向にある“価値観”にはうってつけの特効薬になってくれることだろうと思う。とにかく今、絶対にあり続けなければいけないバンド、それがWalkingsだと思っている。

【CD情報】

TITLE:michi

ARTIST:Walkings

DATE:5/31  2015

PRICE:¥1,000

1:NIVEA

2:Right my way disco

3:GutarSoro

4:あいり

5:いざ異国行こうか

6:台風

7:おはようSUN

【LIVE情報】

◼︎DATE:

Friday 10/30  2015

「夜が足りない EZYPTハロウィン」

PLACE:

“渋谷 Milkyway

TIME:

START 19:30

TICKETS:

ADV/ DAY ¥1,500 / ¥2,000(+2D¥1,000)

with

EZYPT / RUNE KNIGHTS / nakayoshi group

◼︎DATE:

Thusday 11/06  2015

「Right now! vol.1」

PLACE:

“下北沢 Music bar RPM

TICKETS:

ADV/¥3,000(飲み放題)

◼︎DATE:

Wednsday 11/11  2015

「trad vol.27」

PLACE:

“新宿MARZ

TIME:

START 19:30

TICKETS:

ADV/ DAY ¥1,500 / ¥2,000(+2D¥1,000)

with

Walkings / Group2 / Downtown Market / GABA …and more!!

その他ライヴ情報・詳細はwebSiteまで

http://walkings.wix.com/walkings

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