第88回アカデミー作曲賞を受賞!エンニオ・モリコーネという巨匠

第88回アカデミー賞で大きく報道されたのは2つだろう。レオナルド・ディカプリオが主演男優賞をとった。「ギルバート・グレイプ」で助演男優賞にノミネートされたのが1993年。日本のレオ様ファンも喜んだはずだ。もうひとつは「マッドマックス」の6冠。何度も映画館へ足を運んだ人がいるぐらい「マッドマックス」にハマった人たちがいる。作品賞をもらってもおかしくなかった。しかし、もっと賞賛されていい作品がある。「ヘイトフル・エイト」だ。第73回ゴールデングローブ賞、第69回英国アカデミー賞、そして第88回アカデミー賞のすべてで作曲賞を受賞した。作曲家の名前はエンニオ・モリコーネ。 THE HATEFUL EIGHT – Official Teaser Trailer https://www.youtube.com/watch?v=gnRbXn4-Yis 「ヘイトフル・エイト」でメガホンをとったのはクエンティン・タランティーノ監督だ。言わずと知れた映画オタク(シネフィル)である。監督自身もそれを認めている。「ヘイトフル・エイト」の内容を一言で表現するなら西部劇だ。タランティーノ監督らしい題材を選んでいる。前作「ジャンゴ 繋がれざる者」も西部劇だった。 A Fistful of Dollars Official Trailer #1 – Clint Eastwood Movie (1964) HD アメリカの西部劇では善と悪がハッキリと分かれている。それは今もハリウッド映画の底辺に流れているはずだ。具体例を挙げるまでもなく、アメリカ先住民や黒色人種が悪で、白色人種が善の映画は腐るほどある。悪役は善にはなれない…いや、悪のままでいなくてはならないのが掟のようにあった。「ジャンゴ 繋がれざる者」でタランティーノ監督は、それを見事に裏切っている。 巨匠モリコーネとの仕事にタランティーノ感激!『ヘイトフル・エイト』特別映像 「ヘイトフル・エイト」で作曲をしたエンニオ・モリコーネはイタリアの巨匠である。映画界で名前が知られたのはスパゲッティ・ウェスタン(イタリアのウエスタン映画)だ。「荒野の用心棒」や「夕陽のガンマン」などの音楽で有名になった。シネフィルのタランティーノ監督が「ヘイトフル・エイト」の作曲をエンニオ・モリコーネに依頼したのは自然に感じる。そして、それは大成功を収めた。 映画「ニュー・シネマ・パラダイス完全オリジナル版」日本版劇場予告 エンニオ・モリコーネが曲を提供した映画は幅広い。マルキ・ド・サド原作で、ピエル・パオロ・パゾリーニが監督をしたカルト映画「ソドムの市」、ギャング映画の大傑作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」、映画愛に満ちた名作「ニュー・シネマ・パラダイス」など、まるで共通点がない。エンニオ・モリコーネの曲は優しく、時に大胆な展開をする。全作品に言えることはひとつだろう。決して音楽が映像のジャマをしない。映画を見終わった観客が家路についても、それぞれの耳にそっと残るようなメロディをつくる。 明確な善と悪はこの世に存在しない。エンニオ・モリコーネの映画音楽はそんな当たり前のことを具象化している。これまでエンニオ・モリコーネが作曲した音楽たちに最大の賛辞を、そして、アカデミー賞受賞に心からスタンディングオベーションを送る。