2017
09.10
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【INTERVIEW】秘密のミーニーズ、空白の3年間がもたらした“ゆらぎ”を前に語るもの。

ARTIST, BLOG, RELEASE

テン年代もクライマックスを迎えようとしている2017年9月13日、若手サイケ・フォーク・バンド「秘密のミーニーズ」が、デビュー作にして“最高傑作”との呼び声高いフルアルバム「イッツ・ノー・シークレット」を遂にリリースする。

12弦ギターやペダルスティール、そしてオープンハーモニー。CSN&Yなどウエストコート・ロックへの最上級の敬意を表しての1stEP「おはなフェスタ」を経ての今作「イッツ・ノー・シークレット」は、リズムセクションやハーモニー、構成や歌詞の力配分、生々しさまでも複雑に絡めながらも、それをシンプルに楽しませてくれたことがとにかく嬉しかった。今回のインタビューでは、本作品についてはもちろんのこと、2014年のフジロック・ルーキー以降、これほどのバンドが何故影を潜めていたのかという疑問についてもたっぷりと語っていただいている。

戦争を知らない僕らの時代のサイケやフォークも、今懸命に生きる僕らのドアを確実にノックしている。いつ何が起きてもおかしく無い今日、この傑作の誕生を祝おう。

取材 ・文・写真 / 田中 サユカ

 

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写真 / 渡辺たもつ(Vocal,Chorus,Guitar,Banjo,Pedal Steel,Mandolin)

菅野みち子(Vocal,Chorus,Guitar)

 

——前作から3年という月日が経ちましたが、色々とあったそうですね。

 

渡辺 そうですね。本来だったら月2回くらいでレコーディングができればよかったんですけど、レコーディングを始めた直後に自分が新潟に転勤することが決まって、新幹線代の捻出等に苦労してなかなかできなかったですね、それにベース(相本)も転勤になったり、プライベート面で色々重なった。

 

——それは2015年のことですか?

 

渡辺 そうですね。でもそれもCDを作り始めてからのことで、それまでもメンバーが辞めたりして、一悶着あった。曲は出来ていたので、そういった諸々の事情がなければもっと早く出せていましたね。

 

——存続するかしないか、にまで?

 

菅野 (渡辺)たもつさんが新潟に転勤になるくらいの時にありましたね。

 

渡辺 そうだね。それにもう一人のヴォーカル(淡路)のプライベートの関係で、これまで弾いていたベースを辞めてヴォーカルに専念することになった。彼が辞めちゃうと3声コーラスでなくなる。2声では立ち行かれない。

 

——(秘密の)ミーニーズといえば3声っていうイメージですからね。

 

渡辺 自分たちが勝手に思っているだけかもしれないですけどね(笑)。それに淡路はメインボーカルでもあるので、後任を入れるのも難しい。どうするかな…と悩みましたね。

 

——3年という時間はシーンもめまぐるしく変わっていくし、そんな中で個人の心境にも変化があったのではありませんか?

 

渡辺 これはお恥ずかしい話なんですけど、2014年にフジロックの“ROOKIE A GO GO”という大舞台に立てた時、これを足がかりにして飛躍していくつもりが、なかなか思うように発展できなかった。僕たちはフジロックが目標でもあったし、一度はシーンに認められたという感覚がスルッと抜けていって、メンバーのモチベーションをどこに持っていっていいかがわからなくなりました。地道に続けて行くのも良いと思うんですけど、そういったところでも意識のズレが生じたんです。

 

菅野 それでドラムの子も劇的にモチベーションが下がってしまって、そういう雰囲気が練習にも出てしまった。結局ドラムの子は辞めてしまって、新しくベース(相本)とドラム(高橋)が入ったんです。

 

渡辺 彼のラストが2014年の10月にあった池袋のライブ。その後すぐに新しいドラム(高橋)が入ってくれた。彼は慶応大学の「でらしね音楽企画」っていう、60、70年代ロック中心のサークルでドラムを叩いていて、共通の知り合いを通して知り合ったんですよね。すごく良いドラムを叩くヤツで、思い切って声をかけてみたら、思ったよりもずっとミーニーズの音にマッチした。

 

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渡辺 というのも、前のドラムは技術的にも多才なヤツだったので、内心は「前のようにはならないだろうな」と心配もあったんですけど、(彼のドラムで)また全然違う方向性を見いだすことができた。アイツ(高橋)がいなかったらバンドの存続は難しかっただろうな、というくらい助けられました。

 

菅野 以前はパワフルでロックテイストだったかな、と思うんですけど、彼(高橋)はすごく柔軟性があるというか…

 

渡辺 (高橋は)すごく歌に寄り添うプレイをしてくれる。特に 菅野の作る曲に合うドラムを叩いてくれるよね。以前はまとまらなくてお蔵入りする曲も多かったんですけど、今はそのままライブで演れるところまで持っていけることが多くなった。それはベースの相本に関しても同じで、だから、みっちゃん(菅野)の作る曲に関しては、結構相本・高橋両氏に助けられている部分があるんじゃないかな。

 

——「イッツ・ノー・シークレット」は、その新メンバーが加わって初のアルバムということでもありますね。今作の特徴としては、リズムセクションの幅広さは外せないと思うのですが、ゲストも招いたと?

 

渡辺 そうですね。今回はキーボードとパーカッションでお招きしました。パーカッションを演ってくれたのは僕の古い友人(高田慎平)で、ASA-CHANGにパーカッション(タブラ)を習ったり、リズム楽器にすごく造詣の深い人。彼に入ってもらったら面白くなるんじゃないかと思ってお願いしましたね。

キーボードの藤木(晃史)くんは、以前ライブで誘ってくれたバンド(芝居小屋)のピアニストで、彼の弾くピアノが好きだったし、昔の西海岸のロックってピアノが入ることが多い。そういう憧れもあって彼に弾いてもらいました。

 

——前作はその西海岸のテイスト、つまり皆さんの憧れやそれによって培ってきたものを完全密封された作品、が逆に新鮮に映りました。今作は自分たちのバンドの表現作品として、整理して緻密に組み立てられた完全なるオリジナル作品だと感じましたね。1stアルバムにして、またバンドの代表作として説得力のある作品だと思いました。

 

渡辺 そうですね。前作は西海岸っていうフォーマットがあって、その手習いの範疇を大きく超えるものではなかったかもしれない。こういう音楽をあんまりやっている人がいなかったこともあって、コンセプトが優先されていたこともあった。

今回は菅野の作る曲が増えたから、手習い的なところを大きく広げることができた。菅野のヴォーカルも4曲。僕らはコンセプトありきで考えちゃう節があるけど、菅野はちゃんと自分の曲を書くシンガーソングライターなので、菅野の力に随分助けられましたね。

 

菅野 このバンドに入って、60〜70年代の音楽の影響を自然と受けるようになって、作る曲もみんなの好みに合うような曲を書くようになりました。歌っている声もちょっと渋めになってきたのかな。自分でも気づかないうちにそういう変化がありましたね。

 

——今作の菅野さんのヴォーカルの引き出しが増えたのにもびっくりしますよね。無意識に変わっていったと言うけれど、自在に使い分けている?

 

菅野 Fairport Conventionとかをみんなで色々とカバーした時に、自然と影響されているのかな。

 

渡辺 今思えば、これまで菅野も窮屈だったと思うんですよね。知らずのうちに僕らが「こうあるべきだ」と言うところに押し込めようとしていた。でも菅野は自分のカラーを持っているから、菅野が僕らに合わせてくれていたんだと思うんです。さっきのFairport Conventionとかも、そう言うところからも自分の色として取り入れようとしてくれていたんですよね。

 

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渡辺 だんだん僕らの視野も広がっていって、ガッチガチの60~70年代よりは、例えばWILCOとかの2000年代オルタナカントリーも青木さんの紹介で聴くようになった。お互いのストライクゾーンがやっとうまく混ざり合ってきたんじゃないですかね。

 

——音楽的にしっかりと打ち解けたんですね。本来のスタート地点に立てた。

 

渡辺 それに、新しいメンバー(高橋と相本)は年下なので、菅野はイメージを伝えやすくなったんじゃないかな。前はみんな同期だし、すごく菅野は遠慮していた気がする。だから人間関係的にもより打ち解けた気がしますね。

 

菅野 (バンドを始めて)もう5年くらい経つんだね。確かに最初はお互いに言い合えない感じもあったんですけど、音楽関係のことに関してはあまり気にせず言えるようになりましたね。

 

——良いチームですよね。そして本当に素敵なリーダーだ。

 

渡辺 メンバーが増えたから一歩引かないとアンサンブルが過剰になっちゃうところある。それでみんな一歩引くことを覚えたね。昔はクリームのインプロ合戦みたいにガンガン演っていたけどね(笑)。

 

菅野 そうだね、みんながそれぞれバンドの一部として考えるようになったのかもね。足し算というよりは引き算ができるようになったね。

 

一同笑

 

渡辺 クリームのメンバーも解散後はエゴを剥き出しの時期を経て溶け込むのが楽しいっていう時期を迎える。そう考えると僕らもある意味ロックの歴史を辿っているのかな(笑)。

 

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——今まさに話題に出たクリームなどの60-70年代のロックファンには馴染み深いであろう、インプロビゼーションが今回はインストとして3曲も収録されていますね。作品として収録するのはバンドとしても初めての試みですね。

 

渡辺 今のバンドのグルーヴがすごく好きなので、今ならこういうことができるって、ふと思ったんですよね。歌ありきだとそっちに引きずられて演奏の良さが聴く人にはわかりづらくなっちゃうところがあるしね。

 

菅野 普段からスタジオで音合わせしている時でも自然とジャムセッションしているよね。

 

渡辺 そうだね。それがすごく良くてカタチにしたくなった。即興としてそのままレコーディングしているので、他の曲が割とシステマチックに作られているのに対して、インストは洗練されすぎない感じというか。そういう緩さみたいなところが良いし、そこが今のバンドの一番いいところなんじゃないかと思った。

 

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——ジャケットのオマージュ感にも触れていいですか?これはニール・ヤングの『On The Beach』ですよね?

 

渡辺 自分も今新潟の海辺に住んでいますし、近くに「西海岸公園」なんてあって、まさにウエストコースト・ロック…

 

——日本の西海岸!

 

渡辺 そうです(笑)。日本のウエストコーストと言えば…みたいな、色々引っ掛けてみたんです(笑)。

 

——車じゃなくて、自転車なんですね。

 

渡辺 元ジャケだと車が突っ込んでいるから、それを再現する案もあったんですけど、アメリカは車社会で日常の足として車があるけど、僕らはそこまでじゃないしお金もなし、あえて馴染みのあるものとして自分の自転車を突っ込んでみました(笑)。

 

 

——もう一つ思い切って伺いたいことがあります。今作を売り出す時に“独自のサウンドを展開する新しい日本語ロックのあり方を提示する”と言う文言で紹介されていますよね。読んでなるほどそうだな、と確かに思ったんですけど、一方で60年代感の漂うロックを見つける度に、必ずと言っていいほど「日本語ロック」について論じたくなってしまう、おじさん達の癖のようにも思えてしまうこともある。例えば、製造元であるお二人は実際に“日本語ロック”を追求されたりしているんでしょうか?

 

菅野 私に関して言えば、特に日本語ロックが云々…という感じではなくて、もともと日本語の響きが好きだし、日本語で曲を自然に書いていたから。あんまり「日本語ロック」と言われてピンとはこないですね。

 

渡辺 小さい頃からミスチルやサザンなどを通して日本語で普通に歌っているのにサウンドは海外の作品に近いものを自然に受け入れてきたから洋楽・邦楽っていう垣根が曖昧になっているのもあるし 「日本語を使ってやるぞ!」という気負いはないですね。気づいたらそうなっていた というか。

僕たちも 酔ったおじさん達に「懐古主義的だ!」とか、おしかりを受けることもあったり、ロックに革新性は無くてはならない要素なのはわかりますけどね。でも僕たちが生まれた頃は、ウエストコースト・ロックなんて全然なじみの有る音じゃなかったから、むしろ新譜みたいな感じで聴いている。フォーマットは昔からあるものかもしれないけど、あくまで僕たちの中の最新の音楽をやっているんじゃないか、と最近ふと思いましたね。

 

 

渡辺 それに、確かに1stアルバムの時は 「今、あまり聴かれていないこういう音楽をリバイバルさせるんだ!」っていうような使命感もあったような気がしますけど、そもそもそんなのおこがましいし、そういうのがだんだんなくなって出来たのが、今のアルバムなんでしょうね。

 

——フジロック前後と今とではモチベーションはどのように変化しましたか?

 

渡辺 そうですね。昔はシーンとしてまとめて紹介して欲しいと思っていたんですけど、結果として割と一匹オオカミ的なことが続いていた。でも、今はそうならなくてもいいのかな、と思いますね。60年代を感じさせる若いバンドって実際には結構いるけど、ファッションのコピーも評価の対象になってたり、そうなると(僕らのやりたい事とは)ちょっと違うし、だからといってシーケンサーを使ったりする最先端な人達ともちょっと違うし…立ち位置って難しいですよね(笑)。だから、僕らを60年代や70年代のリバイバルというのも一つの答えだとおもうし、聴いていいただいた人からどう評価されるかをこれから聞いてみたいですね。

 

菅野 今の若い人にもちゃんと「いいな!」って思ってもらえるようなものでありたい。それで反応を返してもらえたら嬉しい!

 

——そうですよね。例えば音の重ね方だけでもすごく難しいことをされていると思うんですよ。

 

渡辺 ちょっとやりすぎちゃったかな(笑)。

 

——最後は菅野さんでシメていますね。そこで一本突き抜けた気もしました。

 

渡辺 (菅野に)俺はこれが核だと思っているよ。

 

菅野 え?

 

渡辺 最後の曲は7曲目の「虹の架かる丘を超えて」っていう曲と同じなんですけど、7曲目の終わりでLPで言うA面が終わって、(B面の)最後にもう一度出てくるイメージ。だからそれが核だと言うつもりで配置したよ。

 

菅野 …そんなつもりじゃなかった(笑)。

 

渡辺 うん。俺はあの曲が一番いいと思うんだよね。

 

一同笑

 

菅野 そうそう、うちらの中ではA面とB面に分かれているんですよ。

 

渡辺 2年くらいアルバムを作っていると、どうしてもバラエティが豊かになってきたんで、ここはある程度色分けして収納しよう、と言う気持ちでね。

 

——なるほど!そして9月29日にはリリースライブがあるんですね。

 

渡辺 そもそもライブ自体がそんなにできていないバンドだったんで、今までもどちらかというと呼ばれた企画とかのカラーに合わせて、演奏曲を選んでたりしたんですが、今回は自分たちのリリースイベントなんで、思う存分 自分たちの表現したいようにやりたいと思いますね。

 

菅野 今回のアルバムだけじゃなくて、前のミニアルバム「おはなフェスタ」からも出して、全体的なバンドの一つの流れになるように構成してあるので、結構密度の濃いライブになると思います。

 

渡辺 大体はできているからね。あとは“レコ発”らしいライブにしたい!

 

——渡辺さんの考える「レコ発らしさ」とは?

 

渡辺 今、よく“アルバム再現ライブ”とかってあると思うんですけど、そんな感じ。このアルバムを記念した特別なものにできたらな。

 

 

【リリース情報】

アーティスト:秘密のミーニーズ

アルバム:イッツ・ノー・シークレット

リリース日:2017/09/13

価格:¥2,300+税

レーベル:なりすコンパクト・ディスク / ハヤブサ・ランディングス

【秘密のミーニーズ関連情報】

web:https://secretmeanies.jimdo.com/

twitter: https://twitter.com/secret_meanies