2018
06.11

【INTERVIEW】KIRINJI、20周年—そして“航海”は続く。

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KIRINJIの13枚目のアルバム『愛をあるだけ、すべて』が6月13日にリリースされます。メジャーデビュー20周年を飾るフルアルバムでもある本作。早速拝聴すると、心魂を傾けるような歌詞の重みにまずは どきり としました。例えば後悔や焦りの言葉で描かれたリリックワークは、これまでの歩みの中で蓄積された膿をじわりと吐き出すようで、これが不思議と救われる趣でもあります。伺えばそんな深い意味はないよ、と言わんばかりのラフにお答えいただきましたが、私はそれでも僭越ながら“ソングライター・堀込高樹”としての心根として有難く受け止めていたいと思ってしまうのです。

また今作はバンド・KIRINJI 5周年という節目の作品でもあります。バンド“KIRINJI”として、またポップミュージック作品としてどう録音物化するのか…なるほど本作には歴としたkIRINJIサウンドの“2018年の気風”がぎっしりと詰まっています。皆さんはどう感じましたか?

 

取材・文・写真=田中サユカ

 

——まずは本作のタイトル「愛をあるだけ、すべて」ですが、KIRINJIのアルバムとタイトルとしてはかなり風変わりな印象を受けました。

 

堀込 これまでは「11」とか「3」とか、割とあっさりしたタイトルが多かった。そういうのではなくて、今回は目先を変えたいと思ったんですよね。それで、曲のタイトルからアルバムをつけるって言う方法もありますけど、今回は曲(#4「時間がない」)の歌詞の印象が強かったので、それに決めました。「愛をあるだけ、すべて」という言葉自体にコンセプチュアルな意味があるわけではないんです。

 

——KIRINJIファンからみたら20周年の記念作と受け取る人も多いかと思います。

 

堀込 20周年っていうのはあまり気にしていなくて、バンド編成になって5年、という方が大きいですね。でも、30周年は流石にあるかどうかわからない。そういう意味で20年っていうのはちょうどいいのかもしれませんね(笑)?もちろん長く続けるつもりではいますけど。

 

——「バンド」という選択をされてから改めて振り返ってみていかがですか?

 

堀込 去年はライブ本数は少なかったけど、最近ようやく気持ちの上でもしっくりくるようになりました。みんなはどうかわからないけど(笑)。

 

一同笑

 

堀込 みんなそれぞれ、他の現場でも仕事をしているけれど、バンドを組むっていうのはまた違うと思うんです。だから、今思えば結成当初はまだまだだったと思う。でも今年3月のビルボードでのライブは、コトリンゴが抜けて初めてのライブでしたけど、誰が欠けても自然に埋められるグループになった実感がありましたし、むしろ前よりも強力になった部分もあるんじゃないかな。

 

 

楠 確かに最初は女性が二人居るっていう趣向の面白さを感じるバンドは初めてだったし、すごく新鮮な気持ちでした。それに元々キリンジのサポートをしていたので、当初はサポートの延長っていう感覚があったかもしれない。装いは変わっても人間はいきなり変われるわけじゃないですしね。でも今はバンドの一員としてやれている楽しさがあります。

 

田村 サポートとして違和感なくやってこられましたけど、今は責任も取らなきゃいけなくなって…

 

楠 ステージでユニフォームを着たっていうのは大きかったかもね。

 

田村 フリフリのやつね、勇気を出して着ましたね(笑)。

 

弓木 私はみんなについていくのに必死だったので、クビにならなくてよかった!って…

 

一同笑

 

弓木 5年もやれたから、これからもっと頑張ろうって感じです。ついていけるか不安でした。

 

堀込 当初は結構、右も左もわからない感じだったよね。

 

弓木 そうですね。5年も続けてこられて嬉しいのと、メンバーの間でいろんな話ができるようになって、楽しくもなってきましたね。

 

千ヶ崎 「11」を作っていた時は頑張ってバンドになろうとしていました。サポートからバンドの一員になったものだから「何が変化したらバンドなんだろう」っていう、疑問のようなものもありつつ。

 

 

千ヶ崎 昨年末にコトリちゃんが辞めましたが、やっぱりメンバーの脱退はバンドにとっては試練なんですよね。でも、何年かかけて作り上げたアンサンブルなどのバランスが崩れたのを埋めて乗り越えて、自然体でのバンドになっていったと感じました。だから、今回の作品では言いたいことがあれば言うし、そこで余計な駆け引きのようなものもない。それに対して反論があっても自然にやりとりができた印象です。それはライブのリハでもそうでしたね。

 

——5年の間には、制作の現場でも変化はありましたか?

 

堀込 以前は、ベーシックを外部のスタジオで録音して、そのあと僕の家に来てもらってダビングをしていたんですよね。でも、今はみんなでスタジオに入ってみんなで顔付き合わせて作品を作らなくても良い時代になった。今回はタイトなスケジュールで制作したこともあって、メンバーそれぞれで録音したデータを僕に送ってもらってまとめました。対面して録音すると僕が「ああしてくれ、こうしてくれ」と注文を言っちゃうわけですよね。そうすると僕の意見は反映されるけど、そうじゃなくて、僕が投げかけて返って来たものを僕が整理する方が、それぞれの意思みたいなものが反映されて良いんですよ。だから、KIRINJIのような特殊なグループにとっては、この作り方の方がカラーが出て良いんじゃないかな、とも思いましたね。もちろんベーシックは一緒にやりましたけどね。

 

千ヶ崎 今回は特にそうでしたね。でも、打ち込みが多いのに出来上がった音はバンドっぽいんですよね。歌は(堀込)高樹さんのパーソナリティが出ているように僕は感じます。特に歌詞ですね。

 

——それは私も感じました。歌の生々しさが増しているようです。

 

千ヶ崎 そうなんですよね。バンドっぽさとシンガーソングライターとしての高樹さんが共存していて面白い感じだと思います。

 

堀込 あまり意識はしていないんですけど、歌詞の書き方としては、凝った比喩とかを使い出すと“上手いことを言う合戦”みたいになってくるわけですよ(笑)。年齢のせいなのかもしれないけど、そう言うのがだんだん嫌になって来た。さっと聴いてさっとわかるものの方が今は楽しいのかなって思いながら書きましたね。

 

 

——今作も「今聴ける音楽」は意識されていますか?

 

堀込 そうですね。ポップミュージックだからその時に聴けないとダメだと思う。10年後に良いと言われるのもダメだし、10年前の音楽だと思われるのもがっかりだし。世の中にいろんな音楽がある中でのKIRINJIの音楽ですが、埋没したくもないし、遅れを取りたくない気持ちもあるんです。だからリズムの面やアレンジの面では現代的な響きになるように意識してミックスしました。

 

——とくに後半のインスト曲「ペーパープレーン」と最後の「silver girl」が堀込さんの描く未来性を感じましたが?

 

堀込 インストは「あったほうがいいや」くらいの本当に軽い気持ちで作りはじめたんです。普段僕らはどうしてもメロディを中心にものを考えがちなんですよね。でも、メロディがなくても音楽は成立するじゃないですか。そう考えて作った曲です。あれはメロディと呼べるものがなくて、アルペジオがあってビートがあるだけのもの。アルペジオを使ったもので聴ける限界として2分くらいの長さにしました。この曲に明快なメロディがついてしまうと、もしかしたらすごくつまらないものになってしまうような気がする。今となってはこれにラップが乗っていたら面白かったなって思ったりもしています。

 

——ラップと言えば、Charisma.comのいつかさんがラップで参加されています。

 

堀込 彼女のスタイルは王道のヒップホップとはまた違うもので、最近は結構いるのかもしれないけど、少し前までは彼女くらいしかいなかったと思います。あんまりオラオラしてないところが良いな、と思ってお願いしたんですけど、今回は彼女にとって普段彼女がやっている「Charisma.com」とはまた違った感じだったかもしれませんね。いわゆるお話があって情景があって…って言う制作を彼女はやってこなかったのかもしれない。

 

 

堀込 今回一緒に作ることになって「こういう曲でこういう世界観でやりたいんだけど」と説明して、上がってきたものに対してもどんどんリクエストしたから、彼女としては大変だったんじゃないかな。でも彼女は「どんどん直しますよー!」っていう感じで受け入れてくれるから、こっちも「じゃあ…」って、どんどんいっちゃった(笑)。僕はやりやすかったけど、彼女はどうだったかな(笑)?

 

一同笑

 

——ゲストにはSANABAGUN.からお二人を招いていますね。こういった若い世代のプレイヤーを起用したのは意図があってのことですか?

 

堀込 いわゆるスタジオミュージシャンを呼べば話が早いんですけど、バンドの中のブラス隊ってそういうのとは違うムードがあると思うんですよね。今回はそういうのが欲しかったのでお願いしました。

 

——個人的にはシンセサイザーを始め80年代のムードも感じましたが、実際に意識されたのはどういった点ですか?

 

堀込 今回はアルバムを作るにあたってエレクトロニクスを使うだろうなって思ってはいたんですよね。「機械に聞こえる、でもこれはやっぱり生だよね」っていうところに落とし込みたかった。だからキックの感じは打ち込みっぽく聞こえるけど、ハイハットやスネアはすごく生々しい感じになっていると思います。そういう感じに作るとシーケンスともすごく相性が良くて。ただ80年代の音は意識していなかったです。今回使っているのは基本的にソフトウェアのシンセサイザーなんですよ。その中でビンテージっぽいものも使っていますし、自分の好みも70年代のものとかが好きだからそれっぽくなりがちですけどね。

 

 

——改めて伺っていると、作品を聴いた時に感じた重みよりとても軽い印象です。特に「愛」について…

 

堀込 そうですね。ポップソングにおいて「愛」って全然重いものじゃない。すごくカジュアルなものでしょ?多分ね。

 

——この後は全国ツアーも控えています。前回のライブからどういった手応えがありましたか?

 

千ヶ崎 コトリちゃんが抜けで再出発だ!っていうのはないですね。彼女がいなくなった分、やることは増えましたけど、その時のバンドで一番良いと思われるサウンドを目指した感じです。

 

 

弓木 同じコーラスラインを歌っている曲が多かったので、その時に「コトリさんの声がないなあ」って思うことはありますが、でも皆さんが思うように、これからも今できるベストを尽くします。後は、この前のライブで千ヶ崎さんがコトリさんの立ち位置に来ていて、すごく新鮮でした(笑)。

 

千ヶ崎 そうだ!席替えがあったんですよ。それは最初恥ずかしかったんですけどね(笑)。

 

 

【リリース情報】

アーティスト:KIRINJI

アルバム:愛をあるだけ、すべて

リリース日:2018/06/13

価格:初回限定盤¥3,996(TAX IN) 通常盤¥3,240(tax in)

レーベル:Verve / Universal Music

 

 


KIRINJI TOUR 2018


7月14日(土) 福岡・スカラエスパシオ

7月19日(木) 大阪・梅田クラブクアトロ

7月20日(金) 愛知・名古屋クラブクアトロ

7月25日(水)、26日(木) 東京・渋谷クラブクアトロ

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